○○な副会長。

天乃 彗

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01 ひまわりコンビ、誕生?

01

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 秋も半ばに差し掛かり、ここ、青碧学園では生徒会役員選挙が行われた。立ち合い演説会や選挙を経て、生徒会長に任命された私──塚原日向は、昼休みにそわそわと時計を気にしていた。

「さっきから、何気にしてんのさ?」

 パックの野菜ジュースを啜りながら尋ねたのは、私の親友の杉田杏奈。私は杏奈の顔を伺うと、小さく言った。

「だって……今日の放課後じゃん、新生徒会初顔合わせ」
「あぁ……そんなこと」

 杏奈は呆れたような顔で椅子の背もたれに寄り掛かった。(推定)Dカップの胸が強調されて、私は恨めしげに杏奈を見る。杏奈も新しく生徒会副会長に任命された。親友が一緒で心強くもあるんだけど、「そんなこと」呼ばわりなんて心外だ。

「緊張しないの?」
「だって、顔なんてポスターやら立ち合い演説会やらで見たし。動いてしゃべってるのも見たし」

 杏奈の言うことはもっともだ。しかし、私は自分のことで精一杯だったから、他の人のことなんて見てる余裕はなかった。だから新生徒会役員の顔は全員うろ覚え。今日の放課後の集まりが気になってしょうがない。

「……人のことなんて見てる余裕なんかなかったよぅ……」
「あんた、バカだねー。目の前のことに必死すぎんのよ。だから身長伸びないんじゃん?」

 “身長”──その単語に私は素早く反応した。聞き捨てならない言葉が聞こえた気がした。

「ちょっと! 身長は関係ないじゃない!」
「今何センチだっけ? 145だっけ?」
「違う! 148!」

 私は勢いよく立ち上がる。椅子がガタリと音を立て、クラスの注目を浴びてしまった。私は慌てて椅子に座り直す。……低身長はコンプレックスだ。こんなふうに軽い乗りでバカにされちゃたまったもんじゃない。
 杏奈を見ると肩を揺らして笑っていた。短いけど緩くウェーブした髪が揺れて、いい匂いがした。……ちくしょう、いい女め。
 私は会話の流れを戻すために咳払いをする。杏奈はそれに気付いて私に向き直った。

「……うまくやれるかなぁ、新しい役員の人たちと」
「あんたなら平気でしょ。去年だって先輩たちと早々に打ち解けてたし」
「そうだっけ」

 私は思い当たる節がなく、頬を掻いた。でも、今年は「会長」だし、みんなをまとめないといけないし。そう言い掛けたところで、杏奈が「そう言えばさ」と言った。どうやら私の不安の話は強制終了らしい。まぁいいけどさ! 
 私は杏奈の話に耳を傾ける。

「新副会長になった、一年の岡本葵くん、見た!?」
「見てない……ていうか、見れなかったって言ったじゃん。その人がどうしたの?」
「超超超イケメン!」
「……あ、そう……」

 私は目を輝かせる杏奈に苦笑した。まったく、面食いなんだから。私はあいにく、「イケメン」とか「美形」とかに興味がない。だからいつもは杏奈のこの手の話は適当に流している。……けど、よく考えたら、一年間生徒会として一緒に働く人じゃないか。聞いといて損はないかもしれない。私は杏奈の話をよく聞く。

「演説もしっかりしてたしさ。聞けば、頭もよくて運動もできるらしいじゃん? 相当よね」
「へぇ……」

 そんなにできる人なら、一緒にいい仕事ができるだろうか。いい生徒会にしたいし、期待に胸が膨らむ。

「イケメン見れるなら、ちょっと楽しみになってきたかも、放課後」
「……現金な奴……」

 私は苦笑して、また時計を眺めた。……岡本葵くん、か。どんな人だろう。


 * * *


 放課後、杏奈と共に生徒会室に向かっていた。

──やっぱり第一印象って大事だよね。

 ふと足を止めた私を杏奈は不思議そうに見下ろす。

「先に行ってて! ちょっと髪、縛り直してくる!」
「あー、はいはい」

 杏奈は苦笑してヒラヒラと手を振った。私は急いで近くのトイレに駆けていく。
 鏡に自分の顔が映った。ちょっと緊張してる、強ばった顔。こんな顔じゃダメ! にこやかにいこう。私は小さく息をついた後、ポニーテールの髪を一度解いた。ゴムを口に加えて、櫛で丁寧に髪をとかす。いつのまにか背中まで伸びた髪を高い位置で縛った。……これでよし。
 ポニーテールは気合いが入るから好き。いつもポニーテールだから、杏奈には「髪型変えないの?」なんて言われるけど。
 さぁ、行こう。生徒会長として、しっかりしたとこみんなに見せなくちゃ! 

 小走りで生徒会室に向かう。扉の前で、少し立ち止まった。……どんな顔して入ればいいんだろう。にこやかに? それとも、きりっとしておいたほうがいいのかな? 扉に手を掛けたまま悩んでいたところで、後ろから声がかけられた。──低く、澄んだ声。

「あの……すみません」
「は、はい!」

 勢い良く振り返る。

──……でかっ! 

 私は思わず息を飲んだ。振り返るとそこには、巨人が立っていた。私が人より小さいことを差し引いても大きい。身長190センチはあるんじゃなかろうか。
 三年生……? そう思って上履きの色を確認して、また驚愕する。その男子生徒が履いていたのは、一年生カラーのものだった。

──いいいい一年生!? 

 私が目を白黒させていると、無表情で私を見下ろしていた彼がポツリと呟いた。

「──ちっさ」

──はい!? 

 私はたった今聞こえた言葉に耳を疑う。今、初対面の人(しかも年下)に「ちっさ」って言われた!? 

「ちょっと今何て──」
「何でもないですよ。ていうか……」

 その一年生は無表情のまま、私の後ろを指差した。私も釣られて後ろを見る。

「邪魔、なんですけど」
「あっすいませ……ごめんね!」

 身長から来る威圧感に、思わず敬語を使いそうになったけど、あえて言い換えた。年上の威厳を守りたかった。……でも「邪魔」とかかなり失礼じゃない!? 私は彼を睨むけど、彼はこっちを見てもいなかった。私がさっと退くと、彼は生徒会室の扉に手を掛けた。
 ん? ちょっと待った。生徒会室に用があるということは。

「あ……なた、生徒会役員!?」

 驚きのあまり指を差してしまった。彼はそんな私を見下ろしながら、淡々と言う。

「え、気付かなかったんですか?」
「そ、それは……」

 私は口籠もる。みんなの顔覚えてない、なんて言えない。会長として。

「まぁいいです。どうせ中で自己紹介すると思いますけど、先に言っておきますね」

 今まで無表情だった彼が、口元だけを歪ませて笑った。意地悪そうな笑みだった。

「新しく副会長になった、岡本葵です。よろしくお願いしますね、会長?」
「あ──」

 この人が──杏奈曰くイケメン完璧人間の、副会長? 私は口をパクパクさせて彼を見ていた。

「……間抜け面してないで、先輩も入ったらどうです?」
「まっ……間抜け面!?」

 彼が扉を開けながら言う。な……何か……人のことちっさいとか言ったり間抜け面とか言ったり……完璧人間のわりに、かなり印象悪いんだけど!? 

「言われなくても入ります!」

 私はムキになって、彼より先にヅカヅカと生徒会室に入る。

「──面白く、なりそう」

 何かを呟いた彼の声は、私の耳には届かなかった。聞き返すのもなんだか癪だから、気にしないでおこう。教室から、もう席に着いていた杏奈が不思議そうに見た。

「……どしたの?」
「何にも!」
「あ、岡本くんも来たじゃん」
「知らない!」

 集まりがある前までは彼を気にしていた分、杏奈は私の態度に首を傾げていた。私のあとから入ってきた彼──岡本くんは、のうのうと席に着いた。彼は副会長だから私の隣だ。……もう! 

「あんたらで最後だよ。さっさと終わらせようよ」

 杏奈は肘をつきながら室内を眺めた。確かに、席はすべて埋まっている。私は心を落ち着かせるために深呼吸をした。さっきのことは忘れよう。
 今日の目的は顔合わせだ。自己紹介の後、名簿に名前を書いてもらう。
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