○○な副会長。

天乃 彗

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03 目安箱パニック!?

05

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「岡本くんっ……!? うそ、どうして」
「君が、高橋奈緒さん?」

 質問には答えず、葵は尋ねた。少女──奈緒は必死に首を縦に振った。

「伝えたいことって、何?」
「あ……あのっ、えと、私っ……」

 奈緒は泣きそうなのか、瞳を潤ませていた。その潤んだ瞳が、あちらこちらと動く。言葉をつまらせながらも、必死に、何かを伝えようとしているのが葵にもわかった。しかし、葵は何も言わない。最後まで聞くのが、彼女に対する誠意だと思った。

「……っ、好き、です……! すごく、すごくっ……!」

 胸の辺りでぎゅっと拳を握りながら、奈緒は言葉を絞り出した。きっと、待っている間に何度もシュミレーションをしただろうに、彼女はただそれだけを言ったのだった。

「……聞いて、いいかな」
「は、はいっ!?」
「俺の、どこが好きなの?」
「えっ……!?」

 奈緒は驚いたようだった。それはそうだ。尋ねた葵自身、なぜこんなことを聞いてるのかわからない。
 でも、聞いてみたかった。本当に、いるのか。日向以外に、“自分”を見てくれる人は。

「岡本くんは……覚えてないみたいだけど」
「え?」
「私達、一度話したことがあるんです。会話、なんてものじゃなかったけど」

 奈緒は、頬をかきながら笑う。しかし、会話はもちろん顔を見た記憶もない葵は、戸惑いを隠せない。

「受験の、時だったんですけど。私、会場の教室が見つからなくて、一人でおろおろしていたら、岡本くんが声をかけてくれたんです」

 少しずつ、記憶が甦ってくる。そうだ。たしかあの日、目の前に明らかに道に迷ってる人がいて──。

「“受験番号は?”とだけ聞かれて、私が答えると、場所を調べてくれて。そのあと、ぶっきらぼうにそこまで案内してくれたんですよ」

 確かに、女子を案内した。でもそれは確か。

「……眼鏡でみつあみで、太っていなかったか」

 自分の中の、その少女は、彼女とは似ても似つかない人物だ。尋ねてみると、彼女は恥ずかしそうに顔を手で覆った。

「少しでも、あなたに釣り合うようになりたくて……その……努力しました」

 女は恋をすると生まれ変わるという。葵はその変化にただただ呆然とした。奈緒は微笑むと、また小さく言った。

「……どこが好きかと問われれば、その……優しさ、だと思います。この学校に入って、幾度となくあなたを目で追いかけたけど、一見冷たい岡本くんは、本当は優しいって、わかったから」

──あぁ、先輩の言った通りだった。この子は、本気で、俺を……“俺”を。

 葵はすうっと息を吸った。この子がちゃんと自分に向き合ってくれたのだから、自分も真っ直ぐに彼女と向き合わなければいけない。

「……ずっと、君の気持ちを無視し続けていてごめん」
「……はい」
「でも、君の気持ちには応えられない。──気になっている人が、いるんだ」

 チビで、考えなしで、からかうとすぐムキになる。でも初めて、自分をちゃんと見据えてくれた人。


 * * *

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