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03 目安箱パニック!?
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その日の放課後の集まり。私は生徒会室に一番に来るつもりで急いだけれど、扉の前にはすでに人影があった。目安箱を開けて、一通の手紙を手に取る、葵くん。私は考えるよりも早く、その名前を叫んでいた。
「葵くん!」
葵くんはこちらを振り返った。
「何ですか、騒々しい」
「またっ……また、読まずに捨てるの!?」
「当たり前でしょう」
言いながら中へ入る葵くんを追うように生徒会室に入る。破かせるもんか。私は後ろからぐっと葵くんの腕をつかんだ。
「ダメだよっ……破っちゃ……!」
「俺の勝手です。手を離してください」
「いーやーだー……!」
力で持っていこうとする葵くんの腕に、全体重をかける。葵くんは小さくため息をつくと、私に向き直った。
「いい加減にしてくださいよ」
「しないよ! だって、その手紙は──」
「顔目当てで近づいてきて、勝手に性格が悪いだの愛が足りないだの冷たいだのってガッカリされて。そういうのもううんざりなんですよ」
葵くんは、眉をしかめながら言った。冷たい目──。
これが葵くんが、告白してくる女の子に冷たい理由。私は唇を噛み締めながら、その言葉を聞いていた。
「俺のこと好きだなんて言って、結局女なんて人のこと表面しか見てないくせに──」
──……っ!
私は、思わず葵くんの頬目掛けて平手打ちをした。でも身長のせいで届かず、顎を掠めただけだった。でも行動の意味は把握したようで、葵くんは驚いた顔で私を見下ろした。
「表面しか見てないのは、葵くんも一緒じゃない! ……ううん、葵くんは、見ようともしてない!」
私はぐっと拳を握り、思ったことを言っていく。
「そうやって、葵くんが背を向けているから、女の子たちだって本当の葵くんを見てくれないのよ! ちゃんと向き合いなよ! そうやって、逃げてばっかりいないで!」
葵くんは何も言わない。私の言葉も止まらない。
「私は、葵くんのこと好きだよ。毒舌だし生意気だしムカつくことの方がたくさんあるけど、本当は優しくて、困ったときはいつも助けてくれるもん!」
葵くんが、少しだけ目を見開いたのがわかった。そして、ぐっと唇を噛み締めた。
「だからね? いつか絶対現れるよ! ちゃんと葵くんのことを好きって言ってくれる人。だから……だから、ちゃんと向き合ってあげて。断るにしても、何にしても」
私は、葵くんが持つ手紙を指差す。
「その子は、ずっと待ってるから。葵くんのこと。だから、葵くんも応えてあげて」
言いながら、葵くんを生徒会室の外へと押していく。されるがまま、葵くんは教室を出た。
「今日だけ、活動の欠席を認めます! さ、行ってきなさい!」
そう言って、私は乱暴に扉を閉めた。……これで、よかったんだよね? 扉に寄りかかる。
「……お節介」
葵くんが小さく呟いたように聞こえた。それは気のせいだったのかも知れないけど、そこから歩き出す足音は、確かにこの耳に聞こえていた。
* * *
“岡本葵くんへ
あなたに伝えたいことがあります。
放課後、1-Dの教室で待ってます。
1-D高橋奈緒”
手紙には、それしか書いていなかった。葵は手紙を封筒に戻しながら、1-Dに向かう。
今までの手紙にも、同じことが書かれていたのだろうか。ふと、日向の言葉が頭をよぎる。
“その子は、ずっと待ってるから”
本当に、三週間、ずっと待っていたのだろうか。来ないとわかっていながら、自分のことを。葵は眉をしかめた。
日向に言われた通りだった。いつからか、女はそういうものだと決め込んで、関わるのもやめて。無視していれば、顔目当ての女は遠退いていく。それでいいと思っていた。
“葵くんが背を向けているから、女の子たちだって本当の葵くんを見てくれないのよ!”
まさか、あの先輩に言われるとは思っていなかった。
バカみたいに真っ直ぐで、正直で。チビだし考えも浅いし、余計な仕事は増やすし、お節介だし。でも、誰よりも周りを見ていた。小さな体で、精一杯背伸びをして、ちゃんと見てくれていた。
“私は、葵くんのこと好きだよ! 毒舌だし生意気だしムカつくことの方がたくさんあるけど、本当は優しくて、困ったときはいつも助けてくれるもん!”
初めて、“ちゃんと”自分を見た上で、好きだと言ってくれた。初めてだったのだ。“岡本葵”ときちんと向き合ってくれたのは、日向が──。
1-Dの教室を勢いよくあける。中にいた一人の少女が、小さく肩を震わせる。振り返って葵を見た少女は、驚きを隠しきれず口元を両の手で覆った。
「葵くん!」
葵くんはこちらを振り返った。
「何ですか、騒々しい」
「またっ……また、読まずに捨てるの!?」
「当たり前でしょう」
言いながら中へ入る葵くんを追うように生徒会室に入る。破かせるもんか。私は後ろからぐっと葵くんの腕をつかんだ。
「ダメだよっ……破っちゃ……!」
「俺の勝手です。手を離してください」
「いーやーだー……!」
力で持っていこうとする葵くんの腕に、全体重をかける。葵くんは小さくため息をつくと、私に向き直った。
「いい加減にしてくださいよ」
「しないよ! だって、その手紙は──」
「顔目当てで近づいてきて、勝手に性格が悪いだの愛が足りないだの冷たいだのってガッカリされて。そういうのもううんざりなんですよ」
葵くんは、眉をしかめながら言った。冷たい目──。
これが葵くんが、告白してくる女の子に冷たい理由。私は唇を噛み締めながら、その言葉を聞いていた。
「俺のこと好きだなんて言って、結局女なんて人のこと表面しか見てないくせに──」
──……っ!
私は、思わず葵くんの頬目掛けて平手打ちをした。でも身長のせいで届かず、顎を掠めただけだった。でも行動の意味は把握したようで、葵くんは驚いた顔で私を見下ろした。
「表面しか見てないのは、葵くんも一緒じゃない! ……ううん、葵くんは、見ようともしてない!」
私はぐっと拳を握り、思ったことを言っていく。
「そうやって、葵くんが背を向けているから、女の子たちだって本当の葵くんを見てくれないのよ! ちゃんと向き合いなよ! そうやって、逃げてばっかりいないで!」
葵くんは何も言わない。私の言葉も止まらない。
「私は、葵くんのこと好きだよ。毒舌だし生意気だしムカつくことの方がたくさんあるけど、本当は優しくて、困ったときはいつも助けてくれるもん!」
葵くんが、少しだけ目を見開いたのがわかった。そして、ぐっと唇を噛み締めた。
「だからね? いつか絶対現れるよ! ちゃんと葵くんのことを好きって言ってくれる人。だから……だから、ちゃんと向き合ってあげて。断るにしても、何にしても」
私は、葵くんが持つ手紙を指差す。
「その子は、ずっと待ってるから。葵くんのこと。だから、葵くんも応えてあげて」
言いながら、葵くんを生徒会室の外へと押していく。されるがまま、葵くんは教室を出た。
「今日だけ、活動の欠席を認めます! さ、行ってきなさい!」
そう言って、私は乱暴に扉を閉めた。……これで、よかったんだよね? 扉に寄りかかる。
「……お節介」
葵くんが小さく呟いたように聞こえた。それは気のせいだったのかも知れないけど、そこから歩き出す足音は、確かにこの耳に聞こえていた。
* * *
“岡本葵くんへ
あなたに伝えたいことがあります。
放課後、1-Dの教室で待ってます。
1-D高橋奈緒”
手紙には、それしか書いていなかった。葵は手紙を封筒に戻しながら、1-Dに向かう。
今までの手紙にも、同じことが書かれていたのだろうか。ふと、日向の言葉が頭をよぎる。
“その子は、ずっと待ってるから”
本当に、三週間、ずっと待っていたのだろうか。来ないとわかっていながら、自分のことを。葵は眉をしかめた。
日向に言われた通りだった。いつからか、女はそういうものだと決め込んで、関わるのもやめて。無視していれば、顔目当ての女は遠退いていく。それでいいと思っていた。
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