○○な副会長。

天乃 彗

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04 いけ!校内見回り大作戦!

05

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 部活動終了のチャイムが鳴り、私たちは生徒会室に戻った。他の面々はもうすでに戻ってきていて、私たちの姿を一斉に見た。

「遅いわよ、あんたら──って、岡本くん、それ、どしたの?」

 葵くんの姿を見るなり、杏奈は目を丸くしながら尋ねた。杏奈の指先は、綺麗に紅葉型をした葵くんの頬に向けられている。葵くんはしれっとした顔をしながら、席についた。

「飼い猫にやられました」

 飄々と言う葵くんに、私はとっさに食って掛かる。

「私は猫じゃ──!」

 そこで気がついた。その発言は墓穴以外の何物でもない。私は自分の口を両手で塞ぐと、

「あっ! いや! な、何でもない!」

とフォローになってないフォローをしたのだった。
 「ふ~ん?」 とニヤニヤする杏奈の視線を振り払い、私も席につく。他の面々も何だかニヤニヤと私を見ているし、居心地が悪いったら。私はわざとらしい咳払いをして、話を進める。

「コホン! えーと、じゃあ各自報告お願いします!」
「校庭、異常なしでした。聞き込みも、たいした情報は得られませんでした」
「部室棟も異常なし。怪しいやつなんていなかったぜ」
「……そっか。校内も異常なしだった。けど、明日も見回りを続けます。明日は、書記組が部室棟、会計組が校内、私たちが校庭を見回りします」
「先輩、ちょっといいですか」

 葵くんが、小さく手を挙げた。私が「どうぞ」と言うと、葵くんは立ち上がった。

「そもそも、あの二人は“見られている気がする”と言っていただけで、必ずしも毎日犯人が覗きをしているとは限りません。今日もいなかったわけですし、明日からは聞き込みを重点的にやりましょう。些細なことでも聞き逃さずに。特に部室棟周辺を担当する人は、“怪しい人を見なかったか”ではなく、“最近変わったことはないか”を詳しく聞き込みしてください」

 ごもっともな意見だ。私はただただ感心して、小さく頷いた。小さな変化だって重要な手がかりだもんね。

「えーと、じゃあ、葵くんの言葉通り、明日もよろしくお願いします! じゃあ、今日は解散で!」

 私の言葉で各々動き出し、杏奈はニヤニヤしながら私の肩に肘をおいた。詳しく聞かれるとは思ったけど、絶対言うもんか。私は杏奈から逃れるかのように、急いで下駄箱へと向かったのだった。


 * * *


「変わったことぉ?」

 私と葵くんは、校庭の見回りをしながら、部活中の生徒に聞き込みをして回っていた。休憩中だったサッカー部の男子二人に尋ねると、その男子の一人が「あ」と声をあげた。

「たまに、部室棟が臭い」
「はぁ!?」

 もう一人の男子はけたけたと笑い出した。

「それ、俺らの汗じゃね?」
「いや、ちげーよ。そうじゃなくて……」
「それ、どういうこと?」

 私が尋ねると、臭いと言った男子は困ったような顔で頭を掻く。

「俺わりと鼻いいんすけど、たまぁに部室棟来ると、なんかこう……うんこみたいな臭いするんすよ」
「しねーって。バカじゃねーの」
「いや、するんだって! でも、部活終わる頃には臭いしないから……やっぱり気のせいかもしれねぇっす」
「ぜってぇ気のせいだって」

 私が何を言おうか考えあぐねていると、葵くんが小さく声を漏らしてから、その二人に礼を言った。慌てて私もお礼を言うと、いつの間にか葵くんは歩き出している。私は急いでその後を追う。葵くんは、顎に手を乗せながら、何かを考えている様子だった。

「……葵くん? 何か分かったの?」
「あんな情報で分かるわけがないでしょう。その短絡的な思考をどうにかしてください」

──なっ……。

 葵くんこそ、その減らず口をどうにかしなさいよ! 腹が立って、声も出ない。無言のまま葵くんを追いかけていると、体育館の方から女子生徒の声が聞こえてきた。葵くんも思わず足を止めたため、私は勢い余って葵くんにぶつかってしまう。

「ぶっ! ちょ、あおいく、」
「しっ……黙って」
「ふっ……!?」

 振り返った葵くんに、口を塞がれる。ちょっと! そんなことされなくても黙ることくらいっ……! 

「……でもさー、いおりんも可哀想だよね。あんなキモい奴にさー」
「ほんとほんと。いおりん可愛いから仕方ないのかもしんないけど」

 いおりん? 聞いたような名前に、首をかしげる。

「……渡辺伊織さんのことですかね」
「え……あの、私たちに依頼してきた?」

 葵くんは答えなかった。女子生徒の会話にじっと耳をすませている。私も、葵くんの体の陰から声のする方を見てみる。テニスラケットを持っている。どうやら女子テニス部員らしい。

「相手あのネクラだよ? もしかして、部室覗いてるのもあいつなんじゃないの?」
「ありうるー、キモーい……」

 ネクラ? 話の流れがよく読めない。ただ、今回の一件に深く関わっているのは確かだ。葵くんを見てみると、無表情だった顔がぴくりと動いた。

「……話を聞いてみる価値はありそうですね」
「うん! 行こう!」

 私と葵くんは、お喋りに夢中になっているその二人の元へと歩き出した。

「失礼します。先程の話、少し聞こえてしまったのですが」
「ちょっと詳しく聞いていいかな!?」

 テニス部員の二人は、しまった、という顔をして押し黙った。葵くんは、小さくため息を漏らしてから、その二人に迫り寄る。

「少しでいいんです。協力してくださいませんか?」
「は……はい……」

 さすが葵くんだ。少し彼女たちに近寄って顔を寄せただけで、首を縦に振らせてしまった。葵くんのイケメンパワーに感謝しながら、私たちは二人の話を聞いた。


 * * *


 彼女たちの話によると、渡辺伊織さん──今回の依頼者である彼女は、最近告白をされた。その相手は、違うクラスのネクラくん。ネクラというのは、あだ名だそうだ。そのネクラくん、その……何て言うか、暗めの性格で、あまり周りの人から好かれていないらしい。
 告白の答えは、「No」。でもその答えは、渡辺さん自身から伝えられたものじゃなかった。おとなしくて引っ込み思案な渡辺さんは、友達の松沼さんに、返事を伝えてもらうよう頼んだのだ。
 松沼さんには、ネクラくんが小さく震えて──こちらを睨んでいるように見えた、そうだった。


 * * *

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