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白雪姫 番外編
嫌よ嫌よも好きのうち?
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「林檎ちゃんいるー?」
聞こえたその声に、私は眉をひそめました。慣れましたとも。このクラスメイトのざわめきさえ。私は椅子から立ち上がり、声の主──若王子さんの元へ歩き出しました。
「何かご用ですか?」
「お昼、一緒に食べよ?」
そう言って若王子さんは、がさり、とコンビニの袋を持ち上げました。
「あいにくですけど……」
「今日はあのちっちゃい子と一緒じゃないんでしょ? あの子から聞いたよ?」
──茜ちゃんのバカ!
少し前に駆け足で違うクラスに向かった友人を思い浮かべて、私は何も言えなくなってしまいました。
「……化祭から?」
「……やっぱ付き合ってんの?」
「……お似合い……」
後ろから囁かれる声に、私はムッとしました。若王子さんがこうして私のクラスにくることで、みなさんから誤解されています。私たちが、つ、つ、つ、付き合っているだなんて……!
「私用事がありますから! ご一緒はできません!」
ぷいっと顔を背けて、私はカバンを持って教室を出ました。後ろから「待ってよ!」という若王子さんの声が聞こえました。聞こえません。私は何とか彼を撒こうとしますが、彼は諦めてくれません。振り返れども振り返れども、私のあとをついて来ます。
「用事って嘘でしょ? 林檎ちゃん」
「嘘じゃないです!」
早足で歩きながら私は答えます。
──来ないで。お願い。
私のお願いは、彼には届きません。
「じゃあ何の用事?」
「それはっ……いろいろです!」
声が裏返ってしまいました。
──やめて。聞かないで。
ばれてしまう、から。
「若王子さん、ああやってうちのクラスにくるのやめていただけませんか……っ!? 誤解されるんです!」
「オレが会いに行くの嫌?」
「嫌です!」
「わぁ。即答」
若王子さんは苦笑いをしました。でも、脚は止めてくれません。
「とにかくっ……! 嫌なんです! だから追ってこないでください!」
「逃げなきゃ追わないよ」
「逃げてません!」
「オレのこと、嫌?」
「へっ……」
思わぬ質問に、脚を止めてしまいました。刹那──若王子さんに手首を掴まれました。
「嫌っ……!」
ばれて、しまう。
「……林檎ちゃん、顔、真っ赤」
「……っ!」
嫌なんです。こんな顔、あなたに見られるの。彼は、「ほんとにリンゴみたいだ」と言って笑いました。
嫌だと、言ってるのに──。若王子さんは、意地悪です。
* * *
「鏡、飲み物」
「はい、祥子さん」
鏡にそう言うと、鏡はペットボトルのお茶を差し出してきた。
「……お茶? 嫌よ。今はミルクティーの気分だわ」
「え、」
「買って来て。今すぐ」
鏡は私の要求に反論もせず、二つ返事で財布を持って駆け出した。その背中を見送って、私は組んだ脚を組み替えて、背もたれにもたれかかった。
何分で帰ってくるかしら。ここから一番近い自販機は、昇降口だから、急いでも5分くらいかしらね。私は時計を確認する。
本当は、お茶でもいい。何だっていいのだ。それでも「嫌だ」と告げたのは、もっと私のことで困ればいいと思うから。
少しでも長い時間、私のことを考えればいい。私に振り回されて、ヘトヘトになってしまえばいい。
嫌よ。嫌なの。彼が私以外のことを考えるなんて。わがままと言われようが、それが私のやり方。……それでも、彼が私を追いかけてくれるなら──。
「祥子さん! 買って来ました!」
私は時計を確認する。3分。合格ね。
私はそれを受け取って、また眉をひそめた。
「……冷たいじゃない。体を冷やしたらどうするの? ホットじゃないと嫌よ」
「……はい、祥子さん!」
また駆け出す彼の背中を見ながら、私は思わず口角を上げた。
「……愚直ね……」
それでも彼が懲りずに私を追いかけてくれるなら──今日も私は「嫌」と告げましょう。嫌だなんてひとつも言わない、愚かで愛しい彼だけに。
聞こえたその声に、私は眉をひそめました。慣れましたとも。このクラスメイトのざわめきさえ。私は椅子から立ち上がり、声の主──若王子さんの元へ歩き出しました。
「何かご用ですか?」
「お昼、一緒に食べよ?」
そう言って若王子さんは、がさり、とコンビニの袋を持ち上げました。
「あいにくですけど……」
「今日はあのちっちゃい子と一緒じゃないんでしょ? あの子から聞いたよ?」
──茜ちゃんのバカ!
少し前に駆け足で違うクラスに向かった友人を思い浮かべて、私は何も言えなくなってしまいました。
「……化祭から?」
「……やっぱ付き合ってんの?」
「……お似合い……」
後ろから囁かれる声に、私はムッとしました。若王子さんがこうして私のクラスにくることで、みなさんから誤解されています。私たちが、つ、つ、つ、付き合っているだなんて……!
「私用事がありますから! ご一緒はできません!」
ぷいっと顔を背けて、私はカバンを持って教室を出ました。後ろから「待ってよ!」という若王子さんの声が聞こえました。聞こえません。私は何とか彼を撒こうとしますが、彼は諦めてくれません。振り返れども振り返れども、私のあとをついて来ます。
「用事って嘘でしょ? 林檎ちゃん」
「嘘じゃないです!」
早足で歩きながら私は答えます。
──来ないで。お願い。
私のお願いは、彼には届きません。
「じゃあ何の用事?」
「それはっ……いろいろです!」
声が裏返ってしまいました。
──やめて。聞かないで。
ばれてしまう、から。
「若王子さん、ああやってうちのクラスにくるのやめていただけませんか……っ!? 誤解されるんです!」
「オレが会いに行くの嫌?」
「嫌です!」
「わぁ。即答」
若王子さんは苦笑いをしました。でも、脚は止めてくれません。
「とにかくっ……! 嫌なんです! だから追ってこないでください!」
「逃げなきゃ追わないよ」
「逃げてません!」
「オレのこと、嫌?」
「へっ……」
思わぬ質問に、脚を止めてしまいました。刹那──若王子さんに手首を掴まれました。
「嫌っ……!」
ばれて、しまう。
「……林檎ちゃん、顔、真っ赤」
「……っ!」
嫌なんです。こんな顔、あなたに見られるの。彼は、「ほんとにリンゴみたいだ」と言って笑いました。
嫌だと、言ってるのに──。若王子さんは、意地悪です。
* * *
「鏡、飲み物」
「はい、祥子さん」
鏡にそう言うと、鏡はペットボトルのお茶を差し出してきた。
「……お茶? 嫌よ。今はミルクティーの気分だわ」
「え、」
「買って来て。今すぐ」
鏡は私の要求に反論もせず、二つ返事で財布を持って駆け出した。その背中を見送って、私は組んだ脚を組み替えて、背もたれにもたれかかった。
何分で帰ってくるかしら。ここから一番近い自販機は、昇降口だから、急いでも5分くらいかしらね。私は時計を確認する。
本当は、お茶でもいい。何だっていいのだ。それでも「嫌だ」と告げたのは、もっと私のことで困ればいいと思うから。
少しでも長い時間、私のことを考えればいい。私に振り回されて、ヘトヘトになってしまえばいい。
嫌よ。嫌なの。彼が私以外のことを考えるなんて。わがままと言われようが、それが私のやり方。……それでも、彼が私を追いかけてくれるなら──。
「祥子さん! 買って来ました!」
私は時計を確認する。3分。合格ね。
私はそれを受け取って、また眉をひそめた。
「……冷たいじゃない。体を冷やしたらどうするの? ホットじゃないと嫌よ」
「……はい、祥子さん!」
また駆け出す彼の背中を見ながら、私は思わず口角を上げた。
「……愚直ね……」
それでも彼が懲りずに私を追いかけてくれるなら──今日も私は「嫌」と告げましょう。嫌だなんてひとつも言わない、愚かで愛しい彼だけに。
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