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兎系男女警報
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──っ!
「ぶえっくしょん!」
いち早くその気配に気づいたあたしの体が、でかいくしゃみをして、マトさんの頭に頭突きを食らわしたのは。
鳥肌がすごい。目も鼻も痒くてむずむずして、やばい。くしゃみが止まらない。間違いない! いる! 近くに!
マトさんは急に頭突きをされたのに驚いて、固まってしまっているようだった。でも正直、今はそんなのにかまってる余裕なんかない。あたしが視線を向けたその先。換気用の小さな窓から、そのブサ猫──ボスはひょっこりと顔を出した。
ど っ か ら 入 っ て ん の よ こ の ブ サ 猫!!
「いやぁぁぁぁ猫がぁぁぁぁ! くんな! 来ないでええええ!」
あたしはボスから距離を置こうとマトさんをつきとばし、部屋から飛び出そうとした。無我夢中で鍵を開けると、ちょうど扉が開いてタマが勢いよく入ってきたのだった。
「菜月っ!」
「タ、──」
あたしがその名前を言い終わる前に、タマはあたしを抱きしめた。強く。強く。それはもう痛いくらいに。その乱暴さに、温かさに、なんだかすごく安心してしまって、あたしは少し泣いてしまった。
「無事か!?」
タマは勢いよくあたしの肩を掴んで引き剥がした。そこであたしは自分が酷い格好をしていることを思い出し、慌てて手で隠す。
「こ、れは」
「……っんの発情兎!」
タマは大きな舌打ちをすると、ずんずんと部屋に入って行く。
「タマっ……!」
ヤバイ。あいつブチ切れだ。あたしは急いでその背中を追いかけて、体当たりをした。不意をつかれたらしいタマはよろけた。
「何すんだあいつ百発くらい殴らせろ」
「だ……だめ!」
「んでだよ! てめぇに手ェ出そうとしたんだろ!?」
あたしは興奮するタマを必死でおさえる。
「あたしは、大丈夫だから! まだ何も……されてないし」
正確には、いろいろ舐められたりしたけど、一応貞操は守られた。
「だから、とりあえずこれほどいて」
あたしはタマに両手を差し出した。あたしの手は、未だ拘束されたままだったのだ。タマは思い出したようにあたしの手のタオルをほどいた。やっと自由になった。
あたしは、少し赤くなった手首を見たあと、すぐさま──
「この外道がぁぁ!」
マトさんにビンタを食らわせた。
マトさんも、タマまでも、びっくりして目をパチクリさせている。あたしは肩で息しながら、とりあえずボタンを閉め直した。
「あ、のー……」
ひょっこりと、扉から顔を出したのはシバケンだった。シバケンはどうしていいのかわからない様子で、ぽりぽりと頬を掻いた。
「さっきのタマと同じ匂いの女の子がその辺ウロウロしてたから、とりあえず連れてきたんだけど……」
「いやぁ! 離してよもうっ!」
そう言って、シバケンが中へ引き入れたのは、真っ白なうさ耳のカチューシャをした女の子。
「……遊兎!?」
「にーに!」
ユウと呼ばれたその女の子は、脱兎のごとくマトさんに駆け寄り、ぎゅっと抱きついた。
「にーに、ごめんなさい! この男インポで、ユウの誘惑効かなかったの!」
「だからちげぇってんだろクソアマ!」
「ちょ、ちょっと待って。何の話……!?」
にーにってことは、その子はマトさんの妹さん? って、何でタマと面識があるの? インポ? 誘惑? 何の話……!
「だから、すべてこいつらの陰謀だったんだよ!」
「陰謀……?」
「クソアマがオレを、そいつがてめぇをどうにかして、楽しむつもりだったんだよ! この発情兄妹は!」
「は……?」
タマが吐き捨てるように語ったすべてを聞いて、あたしは唖然とした。つまり、最初から仕組まれてたことで。あたしとタマは、この二人の遊びのせいで振り回されたってこと?
──……。
「……あんたたち」
自分でも驚くくらい低い声が出た。その声に驚いたのか、宇佐美兄妹は肩を震わせてあたしを見た。
「……そこに正座」
二人が素直に正座をしたので、あたしはその目の前に仁王立ちをしたのだった。
* * *
この二人は、なるほどとても厄介なひとたちだったらしい。
「じゃあ……前からカップル狙ってそういう風に遊んでたわけだ」
あたしがため息をつくと、ユウちゃんがむっとした。
「だって! 楽しいんだもん!」
「あのねぇ、楽しいですんだら警察はいらないの!」
「だって! 男なんて所詮ヤリ目だし! そんな男に限って下手くそだし!」
「ちょ、ちょっと……」
「そんなんじゃユウ満足できないもん──!」
あたしは慌ててユウちゃんの口を塞ぐ。何て子なの……ついていけない。
「僕も、女の子もセックスも好きだし、ユウと意見があったから付き合ってて」
「もうお前ら黙ってろよ」
タマが舌打ちをする。シバケンもやれやれと言った風に苦笑いをしていた。
「他にやることないの?」
「「ない!」」
「お前ら……」
肩を落として言うシバケン。本当に、もう。あたしもため息をつく。
こうすることでしか、楽しめない兄妹。肌の温もりで、気持ちを紛らわせて。人間は欲求に忠実だとマトさんは言ったけど。彼らの本当の欲求は──。
「……さみし、かったんじゃない?」
「え?」
あたしは二人の前にしゃがみ込んで、目線を合わせる。キョトンとした顔の二人が、あたしを見ている。
「あんたたち、友達いなさそうだし」
思い当たる節があったのだろうか。顔の筋肉がピクリと動いた。
「さみしいからって、体で埋め合わせようとしてるんじゃないの?」
「……」
それは、悲しすぎると思うよ。彼らのその行為には、意味なんてない。得られるものも、きっとない。
「ぶえっくしょん!」
いち早くその気配に気づいたあたしの体が、でかいくしゃみをして、マトさんの頭に頭突きを食らわしたのは。
鳥肌がすごい。目も鼻も痒くてむずむずして、やばい。くしゃみが止まらない。間違いない! いる! 近くに!
マトさんは急に頭突きをされたのに驚いて、固まってしまっているようだった。でも正直、今はそんなのにかまってる余裕なんかない。あたしが視線を向けたその先。換気用の小さな窓から、そのブサ猫──ボスはひょっこりと顔を出した。
ど っ か ら 入 っ て ん の よ こ の ブ サ 猫!!
「いやぁぁぁぁ猫がぁぁぁぁ! くんな! 来ないでええええ!」
あたしはボスから距離を置こうとマトさんをつきとばし、部屋から飛び出そうとした。無我夢中で鍵を開けると、ちょうど扉が開いてタマが勢いよく入ってきたのだった。
「菜月っ!」
「タ、──」
あたしがその名前を言い終わる前に、タマはあたしを抱きしめた。強く。強く。それはもう痛いくらいに。その乱暴さに、温かさに、なんだかすごく安心してしまって、あたしは少し泣いてしまった。
「無事か!?」
タマは勢いよくあたしの肩を掴んで引き剥がした。そこであたしは自分が酷い格好をしていることを思い出し、慌てて手で隠す。
「こ、れは」
「……っんの発情兎!」
タマは大きな舌打ちをすると、ずんずんと部屋に入って行く。
「タマっ……!」
ヤバイ。あいつブチ切れだ。あたしは急いでその背中を追いかけて、体当たりをした。不意をつかれたらしいタマはよろけた。
「何すんだあいつ百発くらい殴らせろ」
「だ……だめ!」
「んでだよ! てめぇに手ェ出そうとしたんだろ!?」
あたしは興奮するタマを必死でおさえる。
「あたしは、大丈夫だから! まだ何も……されてないし」
正確には、いろいろ舐められたりしたけど、一応貞操は守られた。
「だから、とりあえずこれほどいて」
あたしはタマに両手を差し出した。あたしの手は、未だ拘束されたままだったのだ。タマは思い出したようにあたしの手のタオルをほどいた。やっと自由になった。
あたしは、少し赤くなった手首を見たあと、すぐさま──
「この外道がぁぁ!」
マトさんにビンタを食らわせた。
マトさんも、タマまでも、びっくりして目をパチクリさせている。あたしは肩で息しながら、とりあえずボタンを閉め直した。
「あ、のー……」
ひょっこりと、扉から顔を出したのはシバケンだった。シバケンはどうしていいのかわからない様子で、ぽりぽりと頬を掻いた。
「さっきのタマと同じ匂いの女の子がその辺ウロウロしてたから、とりあえず連れてきたんだけど……」
「いやぁ! 離してよもうっ!」
そう言って、シバケンが中へ引き入れたのは、真っ白なうさ耳のカチューシャをした女の子。
「……遊兎!?」
「にーに!」
ユウと呼ばれたその女の子は、脱兎のごとくマトさんに駆け寄り、ぎゅっと抱きついた。
「にーに、ごめんなさい! この男インポで、ユウの誘惑効かなかったの!」
「だからちげぇってんだろクソアマ!」
「ちょ、ちょっと待って。何の話……!?」
にーにってことは、その子はマトさんの妹さん? って、何でタマと面識があるの? インポ? 誘惑? 何の話……!
「だから、すべてこいつらの陰謀だったんだよ!」
「陰謀……?」
「クソアマがオレを、そいつがてめぇをどうにかして、楽しむつもりだったんだよ! この発情兄妹は!」
「は……?」
タマが吐き捨てるように語ったすべてを聞いて、あたしは唖然とした。つまり、最初から仕組まれてたことで。あたしとタマは、この二人の遊びのせいで振り回されたってこと?
──……。
「……あんたたち」
自分でも驚くくらい低い声が出た。その声に驚いたのか、宇佐美兄妹は肩を震わせてあたしを見た。
「……そこに正座」
二人が素直に正座をしたので、あたしはその目の前に仁王立ちをしたのだった。
* * *
この二人は、なるほどとても厄介なひとたちだったらしい。
「じゃあ……前からカップル狙ってそういう風に遊んでたわけだ」
あたしがため息をつくと、ユウちゃんがむっとした。
「だって! 楽しいんだもん!」
「あのねぇ、楽しいですんだら警察はいらないの!」
「だって! 男なんて所詮ヤリ目だし! そんな男に限って下手くそだし!」
「ちょ、ちょっと……」
「そんなんじゃユウ満足できないもん──!」
あたしは慌ててユウちゃんの口を塞ぐ。何て子なの……ついていけない。
「僕も、女の子もセックスも好きだし、ユウと意見があったから付き合ってて」
「もうお前ら黙ってろよ」
タマが舌打ちをする。シバケンもやれやれと言った風に苦笑いをしていた。
「他にやることないの?」
「「ない!」」
「お前ら……」
肩を落として言うシバケン。本当に、もう。あたしもため息をつく。
こうすることでしか、楽しめない兄妹。肌の温もりで、気持ちを紛らわせて。人間は欲求に忠実だとマトさんは言ったけど。彼らの本当の欲求は──。
「……さみし、かったんじゃない?」
「え?」
あたしは二人の前にしゃがみ込んで、目線を合わせる。キョトンとした顔の二人が、あたしを見ている。
「あんたたち、友達いなさそうだし」
思い当たる節があったのだろうか。顔の筋肉がピクリと動いた。
「さみしいからって、体で埋め合わせようとしてるんじゃないの?」
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