悪役冒険者は傷つかない~【不死】が作る最強クランは容赦を知らない~

幸せ果実

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第14話 雷獣事件④-生き延びるということ

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「武器、できたよ?」

 少女は出会った時と同じ服装だった。

「誰だ……貴様?」

 副ギルド長はイロハの魔法を解除し警戒を強める。
 剣を構え直し、少女に対し名を問うが、少女の視線は倒れたイロハに向かっていた。

「……死なないらしいけどすっごく死にそう?大丈夫?」

「サ……ラ……逃げ……ろ」

 サラは横たわるイロハの頬を撫でた。
 僅かな熱が手先から伝わる。


「無視してるんじゃねえ!」

 イロハの苦しげな顔を見つめながら、サラは得物を構える。鍛冶師である少女は剣が発する殺意というものをよく知っていた。

「サラ……!」

「大丈夫だよ。イロハ」

 火花が散り、剣が止まった。
 サラの手に握られている剣の形をした包みが、副ギルド長の攻撃を受け切る。


 鍔迫り合いは副ギルド長が僅かに押し込む。ニヤリとする副ギルド長に対し、サラはイロハを安心させるため微笑みを投げかけてから至極冷静に応戦する。

「大丈夫」

 サラの剣から発せられる確かな熱が辺りに蔓延する。副ギルド長は少しずつサラを押し込んでいく。
 頬から汗が垂れてくる。

 熱い。まるで剣が太陽のようだった。


「誰かと思えば、イロハの女か?命のやり取りにしゃしゃるなよお嬢ちゃん」

「うん。でも、しゃしゃってるかどうかはどうだろ?ね」

 包の紐をしゅるりと解くと真っ赤な剣が姿をあらわにする。
 真紅、業火、灼熱、どれともとれる美しい一降りの剣だ。

 サラが構え直すと、神々しい銀びかりした剣は熱波を一層強める。
 明らかに通常じゃない剣。

「オーパーツ……いや、人造か!」

「私がイロハの為に作った子だよ。貴方を反撃する期待も背負ってるかも」

 まずいとは思いながら行動を再開する。人造でもは脅威だ。
 上段、フェイク、姿勢崩し、突き、簡易無詠唱魔法。全てが真っ赤な剣に拒まれる。

 持ち手の実力と、剣本来の能力。見た目に反して地に足をつけた実力が少女にはある。

 魔法はどうだろうか。イロハには魔法を十分に活用できたが、サラと呼ばれる少女はイロハ以上に強く感じる。剣を合わせてみても実力は明確に感じる。

「……ファイア」

 短縮し超速で紡いだ魔法。手のひらを少女に向け、発射に対する言葉だけ紡ぐ。
 ゴウっと音をたてて炎がサラへ放出される。

「火の化身たる、私の子にそれは通じない、よ」


 人造のに私の炎が食われる。

 手のひら上の魔法陣から生み出され続けるが、一向に効く兆しが見えず魔法を打ちやめる。魔力の無駄遣いだ。

 ならば、と再度剣を袈裟斬りに襲う。

 副ギルド長は支部のNo2。上り詰めるのに貴族位などの資格はないが、相応の賢さと強さを求められる。強さに重みをおいていない副ギルド長でさえ一流と呼ばれるB級冒険者であるし、もちろんそれ相応の実力が求められた。

 一流の冒険者は東西南北4ヶ所にある支部に30人もいるかいないか。決して少なくない実力者がB級だ。


 視線を混じらせ、重心のズレを誘ってサラの後頭部に蹴りを入れるが避けられる。

 二度、剣を振るうが避けられ、連撃の空きもなく反撃される。なんとか剣で受けるが一撃はなかなかに重い。

「おかしいんだよ。俺についてくるお嬢ちゃんは」

 返事はない、サラは返事の代わりに足にめがけて突きを放つ。細剣が太ももに刺さる。果たしてB級冒険者の太ももに剣を突き刺すこの少女は何者だろうか。

 副ギルド長は、痛みに顔をしかめながら少女の腕をなんとか掴む。

「……放せ」


 太ももの剣を抜きつつ回転で回避を取ろうとするサラに、ギルド長は剣の柄で横腹を殴る。うめきつつ反撃にかかるサラの腕を背負投げる。


「痛ってえな、おい……まったく。お嬢ちゃんなら今すぐB級冒険者になれるよ」

 悪態をつくが、B級冒険者になれるのも間違いないだろう。副ギルド長として己の実力に自信はある。私は武闘派ではない、策略で成り上がりをしてきた。
 その分、他者を見抜く目には自信がある。

 サラと呼ばれる少女は強い。

「なあ。ここは見逃してくれないか。お互い手を引こう」

「イロハを置いていったら見逃して上げてもいいよ」

 腹部に手をやり苦しげに呼吸をする少女の目は、どこぞの死にかけのようにギラギラしている。

 死にかけ……イロハはいまだに再起出来ていない。膝立ちでこちらを睨む目はやはりどことなく似ていた。

 思考を一巡させる。少女の実力とイロハの異常性。己の保身はいかにしてなるのか。メリット・デメリットを考慮し答えは出た。

「……取引成立だ」

 リスクは充分にある。しかし、経験が警鐘を鳴らす、ここは引くべきだと。
 自分の実力に自信はある。されど彼女が持つと、剣の腕は確かなものであった。


「……待ちやがれ!」

「イロハ、だめ。あの人ねすごく強い、から。私の命をかけても貴方を守りきれる保証ができない、の」 

 拳を強く握り締める。
 同い年程度の女の子に助けられて、命を守らせ、あまつさえ反撃さえ叶わない。

「畜生」と副ギルド長に投げる。冒険者ギルドに頼ってしまい、信じたのは俺だ。俺の判断だ。冒険者ギルドに雇用され、働くという仕組みでどこか信じてしまっていた。

「飼いならせされてた畜生は、俺か」

 裏切りは信じるから生まれる。
 クラスメイトを今更信じることは不可能だ。
 シュガーズは信じているが、信用はしない。
 そして、「冒険者ギルド」は信じていいものだと思ってしまっていた節がある。それは「異世界モノ」を読んでいた弊害だろうか。冒険者ギルドのような、人々を魔物から助ける半公共的機関なら信用するべきだと勘違いしていたのか。

 はっきり言ってショックだった。

 俺は異世界転移から一年間経って年も重ねた。それでもまだ18歳。何を信じるか、信じないか。ここまで信用の判断を強烈に求められるのは異世界にきてからだった。

「信用……信用か。ああ、……何もかも足りない。力も、知恵も、頭も、何もかもだ。甘やかされてたんだ、いまだに」

 副ギルド長は、まだ幼さの残るイロハに怪訝な顔を浮かべる。
 幼さと危うさと壮絶さがまじり、自身に向けられる視線は強烈だ。
(……引いてよかったか……?いやいい。俺は正しいはずだ)


「お嬢ちゃん、イロハ。私はギルドにいる。雷獣《ライコプ》の件もあるが、俺はこの成果を君から奪う。君の苦労も、君の強さも知ったいまは、正直戦々恐々とした思いがある」

 それでも、「俺の勝ちだ」。
 そう言い残して副ギルド長は立ち去った。

 倉庫内にはサラとイロハが二人残る。
 周りに転がる死体に1度目を向けて、サラはイロハに歩み寄る。

「生きてて良かった」

 壮絶な自己嫌悪と安堵感を感じる。聞きたいことが、分からないことがいっぱいあった。
 この世界がまだ分からなかった。
 また、食い物にされてしまった。

「ちくしょう……」
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