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第17話 僕は友達が少ない

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二章スタートです!

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「おめでとうございます……!これでB級冒険者に挑戦する資格を得ました。本日以降いつでも『B級冒険者昇格クエスト』を受注することができます。それにしても圧巻ですね。さすがですイロハくん。サラちゃん」

 解体室に運び込まれたのは無数の魔物の討伐部位。魔物の身体は武具にも薬にもなり、とにかく使いみちが多い。需要の高い部位は冒険者ギルドに持ち込むことで高く買取をしてもらえた。

 雷獣《ライコプ》ほどではないが、いずれも強力な魔物。
 B級冒険者昇格クエストに必要な最後の関門がこのクエストだった。

「あらためて、おめでとうございます。C級冒険者イロハ、同じくサラ。あなた達は共に、一流たるB級冒険者になるためのB。私達冒険者ギルドは一流に足を踏み入れたあなた方を歓迎します」

 そう、これはあくまで「B級に挑戦する」ことが許された段階だ。
 最後の関門は最もつまずくものが多いが、今から挑戦が解禁される「B級冒険者昇格クエスト」が肝心の認定試験。

「ミエハさん。ありがとうございます。3ヶ月間かかってしまいましたがこれでB級に昇格できます」

「気が早いですよイロハくん。それに3ヶ月は異例のスピード昇格です」

 雷獣《ライコプ》事件があった日、雷獣《ライコプ》の死体と共に病室に運んでくれたギルド受付嬢のミエハは「準備してきます」と扉の奥に消えていった。
 結局あの日のミエハは、倒れた新米冒険者のイロハと伝説の魔物の死体を比べ、真っ先にイロハを背負って病院に駆け込んでくれたただの心優しい女性だった。

「雷獣《ライコプ》事件……ね」

 雷獣《ライコプ》事件は、副ギルド長とC級冒険者数名、そしてF級冒険者イロハのサポートによって成し遂げられたエージェン国冒険者ギルド東支部の奇跡として語られている。

 生き残りが副ギルド長とイロハのみだったこともあり、それをからかって「おこぼれのイロハ」なんて揶揄された時期もあったが、次第に頭角を顕にしたイロハと、強く出ない副ギルド長によって実力者のルーキーとひと目置かれるようになっていた。

「イロハ見て」

 袖をつままれて意識を戻されると、サラが子供向けに売られたアメを舐めながら首で視線を促す。促された方向には筋肉隆々のインテリ面した高齢の男とミエハが共にこちらに向かっていた。

「なるほどB級にもなるとトップが出てくるのか」

 ミエハが口を開く。

「ええ、そのとおり。もう知っていると思いますけど、彼がここエージェン国冒険者ギルド東支部のインスパイアギルド長よ」

 ミエハの後ろから優に2mを超す巨体がぬっと姿を表す。圧迫感が凄まじいが、その顔は医者のように穏やかに笑みを浮かべている。

「ほおー、こう相まみえると……なんとやら。対極のペアじゃ。よろしくな期待の大物ルーキー、イロハとサラ」

 出された手を握る。

「よろしく」

「よろしくおねがいします。……頑張ってトップ目指します」

「ふむ。意外とイロハは男の子じゃな。しかし、男だ」

 ギルド長に握られたイロハの手は軋む。
 相手の力量を測るかのように強く握られ、思いっきり握り返し、力量が緊迫している状態。
 もし、サラにも同じことをしていたらぶん殴っていたがサラの様子を見るに、その挑発はイロハにのみだったらしい。

「……む」

 一層手に力を込めると、わずかにギルド長の口角が下がる。

 無限の再生能力という『不死』は、筋繊維すら高速で再生する。疲労はすれど効率は常人の何倍も良く筋肉を鍛えることができる便利な使いみちもある。

「そろそろ。話進めましょう。インスパイアギルド長」

「ほう」

「また悪い癖が出てますよギルド長。その表情やめてください。怖いですよ。まったく興味のあるものにはすぐ噛み付くんですから。ごめんねイロハくん」

 ミエハが注意したのはギルド長の表情。
 口角が下がりきってから再度上がった口角は不気味なシワをその顔に刻み、獰猛と言っても差し支えない鋭利な八重歯が姿を顕にした。

 そう、インスパイアギルド長という男は根っからの武人であり、温厚な表情は努力で手にしたもの。本来強者に挑戦し続け、おのが武を磨くことを至上の喜びとしている男。それが国に4人しかいないギルド長の一角、インスパイアギルド長という人物だった。

 ああ楽しみだ。そんな表情を浮かべてギルド長はイロハから手を話し、B級冒険者昇格試験の内容を告げる。

「今回君に挑戦してもらうB級冒険者昇格クエストは……」

 収集した事前情報によると、試験内容は都度変わるものらしく。

 著名商人の危険な仕入れルートを護衛。
 準伝説級の魔物を討伐。
 ある冒険者と手合わせする。
 高難易度の採取クエスト。

 などが聞いた話にはあった。


「・・・だ」

 今回イロハとサラに告げられた昇格クエストは「とある岩山に生息するバーニングバードという魔物の討伐」だった。火を纏う巨大な鳥のような魔物で、強さはそれなりに強いが、サラとコンビを組めば不測はないと言えるようなものでやや拍子抜けしたのが本音であった。

 続く言葉を聞くまでは。


「ああ、このクエストは4で行うように。メンバー条件は、C級以下の登録冒険者だ」


 昇格クエストには、通常クエスト見届人という実力のある冒険者が監視に着くので不正等は厳しい。当然、4人パーティというこのクエスト条件は履行されなければならない。

 ここまで完全にサラとペアで冒険者をやってきたため、この条件は意外だった。

 アテがないわけではないが、正直冒険者友達は少ない。能力の特製柄、極力サラ以外との組むのを避けていたからだ。

 サラが袖を引っ張る。

「イロハ。どうしよう。私達友達がいない、よ」

「サラ……」

「本当だもん」

「うん……。とりあえず家帰って作戦会議しようか」
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