剣の腕が強すぎて可愛げがないと婚約破棄された私は冒険者稼業を始めます。~えっ?国が滅びそうだから助けに戻れ?今さら言われてももう遅いですよ~

十六夜りん

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一章 婚約破棄~王国の滅亡

12 新たな道、海の旅へ

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死霊の王との激戦から三日後。リーフェルの街は、復興に向けた活気に包まれていた。

私は怪我こそなかったものの、魔力の消耗が激しく、リディの回復魔法を浴びながら、静かに療養していた。トマスとメイドの二人も、街の救済に心から感謝し、献身的に私の世話をしてくれた。

ギルドマスターは、私の働きを称え、最高ランクであるSランクへの昇格を直ちに申請した。

「シン、お前は我がリーフェルだけでなく、周辺地域を救った英雄だ! Sランクは当然だ!」

彼はそう言って笑ったが、私はただ静かにプレートを受け取った。

英雄。かつて、王妃になるはずだった私が期待された称号だ。だが、今の私は、王国の英雄ではない。冒険者の英雄だ。

療養中、ギルドには近隣の領地や、辛うじて滅亡を免れた小さな王国から、特使がひっきりなしに訪れた。彼らの目的は一つ。私の力を求めることだ。

「シン殿。どうか、我々の国の軍師、あるいは総大将になっていただきたい。我が国はアンデッドの脅威に怯えている!」

「高待遇をお約束します。公爵家と同等の地位と、莫大な報酬を!」

彼らの言葉は、かつてのアルフレッド殿下の勅命と変わらなかった。都合のいい時だけ、私の強さを欲する声。

私は、全てを拒絶した。

「私は、特定の国に仕えるつもりはありません。私の仕事は、冒険者です。依頼があれば、報酬に応じて動きます」

私を公爵令嬢として扱おうとする者には、容赦なく冷たい視線を向けた。私はもう、誰の所有物でもない。

ある晴れた昼下がり、私はリディと共に、城壁の修復作業を眺めていた。

「シンさん、本当に全ての国の誘いを断るのですね。王妃どころか、別の国の公爵夫人になれる機会だったのに」

リディは少し不思議そうに尋ねた。

「あの戦いで、私が守りたかったものが明確になりました。それは、この剣の自由です。誰の命令も受けず、私が価値があると判断したものにだけ、力を振るう自由」

私はそう言って、太陽に照らされた自分の大剣を見つめた。

「王妃の座は、私には檻でしかない。可愛げがないと切り捨てられた剣が、今さらその檻に戻る理由はない」

リディはふわりと微笑んだ。

「そうですね。シンさんの剣は、檻の中では輝きません。それに……この街は、シンさんの故郷になりました。シンさんが、剣を自由に振るうことを選んだ場所です」

彼女の言葉は温かく、私の心に深く染み入った。リディは、私が公爵令嬢だと知っても、私を非難することはなく、常に「冒険者シン」として私を尊重してくれた。

「リディ。感謝しています。あなたの光がなければ、私の剣は闇に飲まれていたでしょう」

「光と剣は、互いに支え合うものです。シンさん」

リディは私の隣で、未来を照らすように明るく笑った。彼女は、これからも私と共に行動することを望んでくれている。光と剣。このコンビこそ、私が選び取った、最強の布陣だ。

その時、一人の使いが私に新しい依頼書を持ってきた。

「Sランク冒険者『シン』殿に、緊急依頼です! 南方の海賊の脅威が強まり、交易路が断たれかけています! 報酬は金貨五万枚と、伝説の鉱石ミスリルの採掘権!」

私は依頼書の内容を読み、口元にわずかな笑みを浮かべた。

海賊。アンデッドとは違う、生きた敵。そして、莫大な報酬と、強靭な鉱石。私の剣をさらに強化できる。

「海賊ですか。面白そうですね」

私は依頼書を握りしめ、リディに声をかけた。

「リディ、次の依頼です。船は揺れそうですが、海の旅は好きですか?」

リディは力強く頷いた。

「もちろんです、シンさん! 闇を払った剣が、今度は海賊を討伐する。素晴らしい物語になりそうです!」

私は大剣を背負い直した。

アルフレッド殿下? 王都? 滅びた国に、もう何の未練もない。

私が歩む道は、私が決める。私の強すぎる剣は、私の望むままに、報酬と自由を求めて振るわれる。

「さあ、行きましょう、リディ。冒険者稼業は、始まったばかりです」

私は、過去の呪縛を完全に断ち切り、自分自身の誇りと、最強の剣を携えて、新たな冒険へと踏み出したのだった。
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