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secret club
chapter.3 Open the door to a new life
しおりを挟む妻の浮気を疑ってたどり着いた「secret club」という不思議な場所。
既婚者専用の出会い系サークルのようなものという説明であったが、
外見や性別を変更して、誰であるかわからない形で参加するという、
そんなことが可能なのか?
という説明を受けたのが前回の話だ。
そこで自分がなってみたい姿を設定した。
どことなく妻に似ている外見を選択したのだが、
朝、起きてアプリを起動してみると
昨日もらったカードをかざすよう案内された。
言われるままにカードをかざすと画面が表示される。
そこには昨日設定した女性の画像が表示されている。
そして、訪問日時の設定をするボタンがあった。
試しに押してみると訪問日時の設定方法についてチュートリアルが表示された。
言えば訪問したい日時を設定して、
空きがあれば予約できるというものらしい。
ただし、初回訪問時については
元に戻るためのデータ取得というものがあるらしく、
余裕をもった訪問時間を選択するよう案内されている。
ちなみに1回の訪問可能時間は2時間までということらしい。
外見の変化や元に戻る時間なども含めて
3時間ぐらいを見越しておくとよいとのことだ。
それらの説明が終わったあとに注意事項が表示された。
完全な秘密クラブなので通信機器の持ち込みは禁止されており、
全ての持ち物は専用のロッカーに預けることになるそうだ。
また、連絡先に交換などもできなように多くの監視カメラが設定されており、
万が一違反をした場合は巨額の賠償金が請求されると記載があった。
正直、妻の浮気の証拠を掴もうと始めたことだったが、
今ではどんな場所なのだろう?
という好奇心のほうが上回り始めている
自分に気が付き始めている。
一通りの注意事項も読み終えるとトップ画面に戻った。
ここまで確認したところで歯を磨くことにした。
朝ごはんを妻が用意してくれている。
やはり特に変わったところはない。
いつも通りの会話をしながら今日の予定を確認すると、
今日も遅くなるとのことだった。
こっちももしかすると遅くなるかもとだけ伝えた。
最近予定が多いのねという妻に、
たまにはそういうときもあるさと返してみるのだった。
それからスーツに着替えて会社へ向かう。
通勤途中の電車の中で偶然座ることができたので、
例のアプリを起動した。
メニューを確認していると予約状況を確認することができた。
今日は遅い時間は予約で一杯だったが、
16時からの枠だけ空きがあった。
有給は余るほどあるので今日は午後休にして
16時にあの場所にいくことにした。
早速予約を実行すると、
初回のため15時に訪問してほしいとのメッセージが表示された。
まぁ、午後休を取れば余裕だなとOKボタンを押した。
一体なにが起こるのか?とちょっとドキドキする。
こんな感覚はいつ以来だろうか?
そんな不思議な感覚を覚えながらもなんでもない日常は待ってくれない。
会社に到着して午後休の申請を済ませて、
さっさと仕事を終わらせるべく、
柄にもなくサクサクと仕事をこなしていく。
久しぶりに集中した気分だったが、
あっという間に正午になった。
すぐに荷物をまとめて会社を後にする。
少しばかり時間があったので昼食をとり、
15時ちょうどぐらいにあのビルへと歩き始める。
念のためアプリで訪問先を確認したところ、
昨日のビルの隣のビルだった。
初めてのことなので慎重にあれこれ確認しながら現地に向かう。
ちょうど15時ぐらいに現地に到着した。
昨日のビルとは違うとはいえ、
こちらもかなりの高級マンションという雰囲気の場所だった。
入口のオートロックにアプリに表示されるQRコードを読み込ませると、
27階へどうぞと表示されて自動ドアが開いた。
まっすぐに進んでエレベーターにのって27階へと向かう。
一緒にエレベーターに乗る人もおらず、
なんとも不思議な気分ではあったが、
27階の到着し、エレベーターのドアが開くと
昨日のような薄暗いフロアに到着した。
ここでも受付システムが設置されていたので、
アプリのQRコードを読み込ませると
「入場ください」とだけ表示されて、
昨日のように光が行先を誘導してくれる。
光の踏みしめるように歩いていくと小さな部屋にたどり着いた。
その部屋に足を踏み入れると自動でドアが閉まった。
そして目の前のモニタが点灯し、こう表示された。
「ようこそ、secret clubへ」
すると部屋が少しだけ明るくなった。
この部屋には目の前にモニタ、右にロッカー、
左に姿見鏡が設定されており、
中央には椅子が用意されている。
モニターにすべての荷物をロッカーに入れるよう案内されたので、
スマホなども入れた鞄をロッカーに入れた。
するとモニターに指紋を登録するよう案内された。
言われるままにロッカーにある指紋認証装置に指をあてがい、
などか指を動かすと指紋の登録が完了したと表示された。
次に椅子に座るようモニターに表示されたので、
とりあえず椅子に座ってみた。
するとモニターが切り替わり、モザイクがかったような
人が写っているであろう画像が表示された。
そして、こう聞こえてきた。
「ようこそ。secret clubへ。昨日対応さていただきました高木です。」
声はなにか加工されているのだろう。
そういうところもなんとも怪しさしかないのだが、
とりあえず話を聞いてみる。
「では、本日は初回訪問ということで姿を変える新薬の適応テストから開始するのですが、その際に現在の姿に戻るためのデータも取得さていただきます。」
なるほど。これがアプリで案内されていたものかとそのまま話を聞いてみる。
「次回以降は今回よりもスムーズに入場いただけるようになりますが、初期設定を変更された場合については今回のように予約時間よりも少し早く訪問いただく必要がございますのでご注意ください。」
なるほど。
初期設定毎になにか作業が必要なのだなと妙な納得をしたところで、
目の前に小さなテーブルがせりあがってきた。
そこにはカプセルのようなものが一つと
VRゴーグルというのだろうか?
なにか大きな装置が置いてあった。
「では、只今より先日設定いただいた姿に変更するための新薬を飲んでいただくのですが、万が一非適合となった場合はすぐに対応を行わせていただき、お預かりした入会金などは全額返金となりますことをお伝えいたします。」
そうか。やはり新薬なのでそういうこともあるのだなと、ちょっと怖くもなったが、
ここまできたらそうもいっていられないというものだ。
「それではまず目の前にありますVRゴーグルを身に着けてください。」
言われるままにゴーグルを頭部に取り付ける。
こういうものを使うのは初めてだが、
真っ暗というわけではなく目の前のものが全て映し出されている。
「いま目の前の様子は映し出されておりますでしょうか?問題なければ右手をあげてください。」
問題ないので右手をあげた。
「それではこの後はモニターに指示が出ますのでそれに従ってください。音声でのご案内はここまでとなります。」
なるほど。この後はこのゴーグルが指示を出してくれるというわけか。
その音声を聞き終えるとすぐに目の前にこう文字が表示された。
「テーブルにあるカプセルを横にあるペットボトルの水でお飲みください。その後はそのまま椅子に座ってお待ちください。」
そう言われて、ちょっと躊躇する自分を押し殺して、思い切ってカプセルを手に取り、
ペットボトルの水で一気に飲み込んだ。
「では、この後選んでいただいた女性の映像を映し出します。こちらで案内するまでそのまま座った状態で映像をご覧ください。」
なるほど。とにかくこのまま座っているしかないんだなと妙な覚悟を決めた。
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