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secret club
chapter.7 escape from everyday life
しおりを挟む私は30代も終わろうとする年齢になってしまった。
20代で結婚して夫とはそれなりにうまくやっていたはず。
子供も欲しかったから色々頑張った。
でもダメだった。
ある時から夫とは微妙な距離感が生まれていくのを感じた。
それでもいいやと諦めたときもあったけど、
やっぱり女であることはどこかで捨てきれなかった。
そんなある日、何気なくスマホでニュースサイトをみていたときに
ふとこんな広告が目に留まった。
「あなたの日常から少し抜けだしてみませんか?」
日常から抜けだす。
今の私にとって心の奥底に閉じ込めていた一言だった。
普段ならそんな広告をクリックすることはないんだけど、
なぜだかその時はその広告をクリックしてしまった。
表示されたページには「secret clubへようこそ」と書かれている。
Enterの文字があったので指でタップすると、
なにやら説明が書かれていた。
ざっと読んでみるとどうやら既婚者専用の秘密の社交クラブとのこと。
入会金は50万円。相当な金額だったけど書いてる内容が
いまの私には突き刺さる内容だった。
このクラブを運営しているのは製薬会社のようで、
どうやらこの製薬会社が開発した新薬を使って、
自分ではない誰かになりきって
自由に過ごすことができると書いてあった。
そんなことがあるはずもない。
最初はそう考えてはみたものの、
もしかして。。。という想いがどうしても抑えらえず、
一度このクラブの説明を聞いてみようと入会相談を申し込んだ。
夫には仕事で遅くなると言って翌日の夜に指定されたビルへ向かう。
なんともすごい高いビルにたどり着いて、
ちょっとびっくりもしてけどここまできたらと思い切って中に入る。
自動受付になっているようで事前にメールで届いていた
QRコードをそれにかざすと奥のドアが自動で開く。
暗闇にまるで進む道を指し示すかのように光が照らされる。
その光についていくよう進むと小さな部屋にたどり着いた。
そこで椅子に座るよう案内される。
なにやらはっきりしない映像の中で女性が説明をしてくれる。
それをざっと聞いたところでいうと、
最初の説明どおりというべきなのか、
ここを運営する製薬会社が開発した新薬を使用すると、
自分がなりたい性別や姿形に変わることができるというもの。
そして、ここで過ごした時間の記憶は日常には持ち込まれないので、
普段の生活にも影響がないということだった。
いまの自分ではない誰かになって
思う存分自由な時間を過ごせる。
そのことが頭から離れない。
一通りの説明が終わり、入会の意図を確認される。
もう心は決まっていた。
すぐに入会すると答えた。
夫は知らない秘密で作ったカードを使って支払いを済ませる。
身分証明書としてマイナンバーカードも読み込みさせる。
まぁ、この会社としてもいろいろあるのだろうとあまり深く考えないようにした。
そうして契約を済ませるとぼんやりとした画面の向こうから、
早速最初のデータ作りをするか?と聞かれた。
ここも説明を聞いてみると、
違う姿になるためにはどういう姿になりたいか?
というデータを作る必要があるそうだ。
目の前に浮かび上がってきたタブレットには
最初に性別の選択が表示された。
男か女か。
思えば夫がどんな気持ちで私を抱いていたんだろうか?
ふとそんなことが頭をよぎる。
後々男女含めた変更はできるか?と確認すると、
追加料金5万円を支払うことで変更できるとのこと。
なお、毎月5万円かかるそうだがその基本料金には含まれていないと説明された。
それであればと男性を選ぶ。
その後どういう見た目にするか?細かな特徴はどうするか?
とタブレット上でキャラクターを作るように変化させていく。
最終的にどことなく夫に似た男性ができあがった。
これでOKだと伝えると、今日この後1時間ほど待つと
すぐに最初の体験ができるということだったが、
明日以降にしたいと伝えたところ、
明日がちょうど空いているということで夕方に予約をした。
こうして私はつまらない人生から一歩踏み出す扉を開いた。
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