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三津子編
もしもあの雑居ビルの前で。。。
バーの飲み歩きの最初の店
と決めている馴染みのバーで、
いつもお世話になっている
常連さんの娘さんに出会うという、
相当確率が低い出来事に遭遇したある夜の話。
いつもと違うシチュエーションであったこともあり、
なんだかドキドキしたというか、
いい歳をして、若い女性にどう接していいかわからず、
ある意味で情けない対応をしてしまったことを、
次の店に向かいながらちょっとだけ後悔した。
とはいえ、ああいう特別なシチュエーションが
何度も訪れるものではないことは
長いバー巡りの経験からわかっていることだ。
気を取り直して、
先ほど電話をしたバーの入っている、
雑居ビルのエレベーターに乗り込む。
最上階にあるそのバーのフロアに到着すると、
ここもなかなかに重い扉を開いて店内に入っていく。
数人のお客様がカウンターにいる程度で、
まだまだ浅い時間だけにゆったりとした雰囲気が
店内に流れているのがわかる。
バーテンダーさんが
こちらへ席を案内してくれるので、
荷物をスタッフに預けて席に座る。
ここでもおしぼりを受け取りながら、
今日は何件目ですか?と会話が始まる。
先ほど訪問したバーの名前を告げ、
ちょっとした世間話をする。
このBARでも最初の一杯は
いつも決まっているので、
バーテンダーさんにいつものとお願いする。
しばらくしてカクテルが目の前に運ばれてくる。
一口飲んでみれば、いつもどおりの素晴らしい味だ。
最初のBARでは予期せぬ出来事があったので、
ちょっと余裕がないところもあったが、
ここからはいつも通りのペースでゆったりと飲んでいく。
そうして、しばらく時間を過ごしたあと、
バーテンダーさんに次行きたい店の名前を告げて、
席が空いているか確認してもらうようお願いしてみる。
ちょっとお待ちくださいね、
とすぐに対応してくれた。
幸い、カウンターに座れるということで
すぐにチェックをお願いする。
その後会計をすませて、荷物を預かり席を立つ。
バーテンダーさんが
「いってらっしゃいませ。」
と声をかけてくれるのを聞きながら、
エレベーターに乗り込んだ。
1階に到着してビルの外に出る。
次が3軒目ともなると、
時間もそれなりに過ぎているものだ。
繁華街ということもあり、
1次会が終わったであろう会社員が、
二次会へ向かうであろう姿が
多くみられる時間帯になっている。
そんな姿を横目に目的地に向かって歩いていく。
間もなく目的のBARが入っている
ビルに到着しようとしたところで、
なにか女性が叫ぶような大きな声が耳に入った。
いつもであれば気にも留めないのだが、
なんだか聞き覚えがある声だったので、
ふと立ち止まり声がする方を見てみた。
すると、先ほど一緒に飲んでいた三津子さんが、
数人の男性に声を掛けられている様子だった。
知り合いであれば大声を出すようなこともないだろう。
最近、この界隈ではナンパのような行為をする
男性が増えているというような話を聞いた記憶があった。
もしかすると困っているのだろうかと、
意を決して声がする方向に足を進めてみる。
近づいていく途中で会話が聞こえてきたのだが、
やはり男性が三津子さんをナンパしようとしているようだ。
しかし、三津子さんは1人で男性は3人いる。
人通りが多い時間帯ではあるので、
なんとかうまく話しかければ
違う場所に連れて行くことくらいは
できるかもしれないな。
と勝手に設定を頭の中で整理してみる。
こういうときにコンサルタントのような
仕事をしていることが良くも悪くも活きるものだ。
この男たちを客だと思えばなんとかなりそうな気がしてきた。
一歩一歩歩みを進めて、
近づいたところで意を決してこう話しかけた。
「あれ?三津子?どうした?」
「あっ。。。」
「キミたち。ボクの妹になにか御用かい?」
男3人は身内がなんで出てきた!?
と、これだけでちょっとひるんでくれた。
ちょっと間違えば危ない状況だったが、
まぁ、これもラッキーだったということにしておこう。
ここで三津子さんも何を察したようで、
「お兄ちゃん!!」
と叫んでこちらに走ってきてくれた。
「キミたち、この後、予定があるので失礼するね。」
相手がキョトンとしているときがチャンスだと、
そう言い残して、三津子さんの手を引いて、
目的のBARがあるビルの
エレベーターに乗り込むことに成功した。
「ふぅ。大丈夫ですか?」
勢いで手を握って少し引っ張るような
形になってしまったのでまずはそう声をかけた。
三津子さんはギュっと
こちらの手を強く握りながら、
こう言った。
「あ。。。ありがとうございました!!!! すんごいしつこく声かけられてどうしたらいいかわからず。。。」
「あ~、やっぱりそうだったんですね。近くを偶然通ったのでお役に立ってよかったです。」
「いえいえ、本当にありがとうございます。」
「こちらこそ知らない方なのに失礼しました。あと、手をちょっと強く引っ張っちゃいましたが、大丈夫でしたか?」
そう言うと、恐らく無意識にギュっと
こちらの手を握っていたことに気が付いたのか、
スッと手を離してこう言った。
「大丈夫です!!!本当に助けていただいてありがとうございました。 ちなみにこのあとどうするんですか?」
「あ~、ちょうどこのビルに入ってるBARにいくところだったんですよ。そうだ、すぐに外に出るのもなんですから、ご一緒にいきますか?」
三津子さんにそう問いかけてみたところ、
ぜひご一緒しますとのことだった。
それであればと、
エレベーターが目的の階に到着し、
目的のBARの扉を開けて、
スタッフが出てきてくれたところで、
事情を話してもう1席用意できないか確認をしてみる。
オーナーにすぐに確認してくれたところ、
カウンターで2席用意できるとのことで、
そのまま二人で入店した。
こうして、思いもよらぬ出来事が続く夜は急展開を迎える。
はてさて、一体どうなることやら?
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