ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里

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三津子編

もしもあのカクテルの前で。。。






いつもお世話になっているBARの常連さんの娘さんと、
なぜか今、2人であるBARのカウンターに座っている。

つい数時間前に初めて顔を合わせたという程度の間柄なのだが。

なぜこういうことになっているかと
いうことを簡単に言うと、
妙な男達に絡まれていたところに
偶然通りかかってしまった。

そのまま素通りするわけにもいかないかと、
なんとかこのBARまで
逃げてくることに成功した。
ざっくり言うとそんなところだ。

なお、このBARにも
三津子さんのお父様はよくいらっしゃっている。
この後のこともあるので、
オーナーに小声で今あったことを伝え、
連絡が取れないかお願いをしてみる。

それを聞いた三津子さんがこう言う。


「なんだかすみません。ちなみに父には先ほど簡単にメッセージしておきましたので大丈夫です。」

「そうでしたか。勝手なことをしてすみません。」

「いえいえ、それより先ほどは助けてくださりありがとうございました。」

「お世話になっている方のお嬢さんが窮地というのに素通りできませんからね。」

「ほんと、父はただ毎日飲み歩いてるだけじゃないことを今日知りました。」

「あらら。結果よかったのか、悪かったのか。」

「ふふふ。まぁ、こうして無事でいられるのでよしとしましょう♪」


そう言ってニコリと微笑む三津子さん。

しかし、最初に会ったときから
どこかで見たことがあるような気がしてならないのだが、
それがどこでなのか全く思い出せずにいる。

まぁ、この界隈には色々な人がいるので、
他人の空似ということもありえるなと、
深く考えないようにしてみた。

そんなやりとりをしながらしばらく時間がたった。

ふと三津子さんが化粧室へと席を立ったときに、
オーナーがカウンターからこちらに近づいてきて、
耳元でなにをささやいていく。


「高橋様に連絡取れました。迷惑をかけて申し訳ないと。もし可能なら今日近くに宿泊するはずなので、ホテルまで送ってくれないということですが、どうでしょうか?」

「ああ、天涯孤独の独り身ですからそのぐらいお安い御用ですとお伝えください。」

「かしこまりました。では、いまからそうご連絡しておきますね。ご本人には私から伝えましょうか?」

「そうだね。そうしてもらえるとありがたいかな。」

「はい。では。」


そんな話をし終えたぐらいのタイミングで
三津子さんが席に戻ってくる。

席に座って、おしぼりを受け取った後、
カウンターにおいてあったスマートフォンを
手にとって、画面を見ている。

少しだけ難しそうな表情になっている。

そのタイミングでオーナーが三津子さんに先ほどの件を伝える。

ご配慮ありがとうございます。と一言お礼を言いつつ、
本当に育ちがよい方なんだなとわかる
丁寧な受け答えをしているのが聞こえる。

オーナーとのやりとりが終わったところで、
ふぅ~っと一息ついて三津子さんがこう話しかけてきた。


「なんだか色々と本当にすみません。」

「いえいえ、こちらこそ色々勝手にしてしまって。」

「いえいえ、逆になんかご迷惑ばかりおかけしてしまって。。。」

「大丈夫ですよ。お父様には本当にいろいろ助けていただくことばかりですから、小さな恩返しです。」

「父は本当に心配性のくせに、私には格好つけなんですよ。先ほどの件もここに到着してすぐに連絡しておいたんですが気を付けてねぐらいしか返信ないんですもん。。。まさかバーテンダーさんからの連絡には別のお願いをしちゃうとかなんか複雑な心境です。」

「まぁまぁ、それだけ三津子さんが大切な娘さんということなんですよ。」

「そうであるといいんですけどねぇ。それはそうとホテルまで送ってくださるってお時間とか大丈夫ですか?」

「あぁ、それならご心配なく。幸い明日は週末ですし、特に予定もないので今日はのんびり一人飲みの予定だったので。」

「なんか色々申し訳ないところですが、怖いというのもありますのでお願いしちゃっていいですか?」

「はい。ちゃんとホテルまでお供しますのでご安心ください。」

「はい。よろしくお願いいたします。」


そんな話をしながら数杯のカクテルを楽しんだ。

なお、この界隈はいろんな人がつながっていることもあり、
さっきのナンパ野郎についてはしかるべき方々が
しかるべき対応をしたらしいと、
オーナーからこっそり聞いた。

いつも考えるのだが、ただの会社員にしては
この界隈に入り込みすぎだなあと。
まぁ、そのへんは特に多くを語る必要はないかもだが。

店の外の安全も確認できたということと、
この店に入ってから結構な時間が経過していたこともあり、
三津子さんにこう話しかける。


「そろそろいいお時間ですが、明日は大丈夫ですか?」

「あっ。本当だ。明日はこの近くで仕事なんですよ。それで近くのホテルに泊まることになったんです。それならと父から紹介されたBARにでも行ってみようかなぁというぐらいの感じで。まぁ、結果色々あったけど。」

「まぁ、そういうこともたまにはあるということであんまり深く考えないでいきましょう。」

「そうですね。こうして楽しいお酒が飲めたのでよしとします。」


ニコリと微笑む三津子さんは改めて本当に可愛らしい。

こんな可愛らしい若い女性と
二人でBARで飲めるなんて、
こういうシチュエーションでなければ
なにか勘違いをしそうなものだが、
全くそういう感じではないのは、
やはりそういう星の元に生まれたんだろうなと、
その時は考えていた。

オーナーに二人分のチェックをお願いしたところ、
本日の分は高橋様が後日お支払いされるとのことなので、
と伝えられた。


「全く。いつまでも子供扱いなんだから。」

「まぁまぁ、お言葉には甘えちゃいましょう。」

「わかりました。今日はそういうことにしておきます。」


そんな事を話ながら二人で席を立つ。

荷物をスタッフから受け取り、エレベーターホールに向かう。

オーナーが見送りをしてくれる。

2人でエレベーターに乗り込み、挨拶をしてドアを閉める。


「そういえば、ホテルはどこですか?」

「あっ、そうですね。ここから5分ぐらいの●●ホテルです。」

「うわ、めっちゃすごいホテル…」

「あれ?そうなんですか?仕事の関係で用意してもらったのでそういうの疎くて。」

「たぶん意識しないで大丈夫ですよ。庶民の感想ですから。」

「そういえば、何を普段されてるとか全然お話してませんでしたね。」

「まぁ、BARではそういう細かいことはお互い聞かないのは暗黙のルールみたいなものですね。」

「へぇ、そうなんですね。」


そんな話をしているとエレベーターが1階に到着する。

ビルの外に出て、目的のホテルに向かって二人で歩き始める。

ここからたった5分の時間が、
この後の自分の人生すら変える時間になるとは、
当然ながら自覚などできるはずがなかった。
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