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真奈美編
研修助手のお姉さんとの思い出話 第一話
これはまだ少年だった頃の思い出話。
高校生の頃のことなので、
今となっては相当昔の話。
当時、工業高校の電子科に通い、
時代としても最先端だったコンピューターを
中心とした電子工学を学んでいた。
とはいえ、実態は学校の勉強よりも
バイト三昧という日々を送っていたのではあったが。
そんな高校生活も3年生になり、
卒業も近づいてきた夏休みのこと。
学校からいくつかの研修プログラムを案内された。
工業高校ということもあり、
自分の専攻に関わるものを
必ずどれかを受講しないと
単位がもらえないという
必修のプログラムだった。
多くの学生が電子工作のような楽しげなものを選ぶ中、
あえて学校で一人だけ、センターコンピューターを使った
プログラミング研修を選んだ。
バイトに明け暮れてはいたが、
プログラミング自体にはとても興味があり、
独学で必死に勉強していたから。
当時はパソコンの性能もまだまだ低く、
プログラミングしたものを実行するには、
大型のコンピューターを使わなければ
多くの時間を要してしまう時代だった。
県内に数台しかないという
センターコンピューターが設置された施設で
研修が開催されると聞き、
迷わず学校で申し込みを済ませた。
夏休み直前、研修の日程と訪問先の資料が手渡された。
学校では扱っていない言語を使った研修ということもあり、
素直にその日を楽しみにして毎日を過ごしていた。
そうして夏休みに突入し、あっという間に研修当日を迎える。
電車に乗り、朝早く現地に到着した。
入り口で受付を済ませて教室に向かうと、
長テーブルにいくつかの椅子、
そしてディスプレイとキーボードやマウスが
椅子の数だけ設置されている。
机の上の資料の数を見ると、
この研修の参加者は5人ほどのようだ。
やっぱりプログラミングの研修は人気がないんだなぁ……。
そう思いながらも、気楽にやろうと案内された席に座った。
その後、続々と学生が来場し、席に座っていく。
一人一人の距離が離れているため、
皆で参加しているという連帯感のようなものは
あまりなかった。
そうして全員揃ったところで、
男性の講師が今回の研修について説明を始める。
ふと見ると、その男性の近くに、
とても華奢で小柄ながら、
なんとも目を引く女性が立っていた。
眼鏡をかけ、長い髪を一つに結んでいるその姿は、
ほぼ男子校状態の学校に通っている男子の目には、
あまりに輝いて見えたことを覚えている。
その女性はどうやら研修の助手らしく、
講師の男性が自己紹介を終えると、
彼女を紹介しました。
水野 真奈美さんという名前らしい。
簡単な挨拶をする彼女を、ただ呆然と見ていた。
普段あまり女性と接点がないうえに、
おそらく年上の綺麗な女性を間近で見たことで、
妙に胸が高鳴ってしまった。
どこか浮ついた気持ちのまま研修が始まった。
内容は本格的で、普段の授業よりも遥かに濃いもの。
浮ついていた気持ちはどこへやら、すぐに真剣に聞き入り、
テストプログラミングを入力しては動作を覚えていくという、
密度の濃い時間を過ごした。
そうして、あっという間にお昼の時間がやってくる。
用意されたお弁当を自席で食べていたのだが、
かなり集中した後だったこともあり、
すごい勢いで平らげてしまった。
食事を終え、トイレに行こうと廊下に出たものの、
場所がわからず少し迷ってしまった。
その姿を、水野さんが見つけてくれ、
声をかけてくれた。
「どうしたんですか?」
「いえ、トイレに行きたいなと探していたんです。」
「ああ、それならそこを右に行ったところですよ。」
「ありがとうございます!」
「あれ? キミ、今日の研修受けてる子だよね?」
「はい。よろしくお願いします!」
「こういう研修は難しいから、なかなか人が集まらないのに……。貴重な人材だね、頑張ってね!」
そう言ってニコリと微笑む水野さんは、
まさに女神と言わんばかりの輝きを放ってた。
とはいえ、まずはトイレに行かねばと一礼し、
そそくさとその場を後にした。
席に戻り、午後の授業が始まる。
午後も内容はかなり高度なものだった。
終了時間間際、座学は本日のみで、
明日からは実習がメインになることが告げられる。
今日やったことをしっかり復習しないとな……と考えていたところ、
この後は1時間程度自由に端末を使っていいとのことだったので、
残って復習することにした。
しかし、残ったのは自分一人だけ。
まあいいかと、最初から資料を読み直し、
一つ一つ動作を確認していく。
なかなかに難しい内容だったため、
あるセクションに記載されたプログラムが
どうしてもうまく動かず、
頭を抱えてしまっていた。
これは明日聞かないとなぁ、
と考えていたら、
横から声がした。
「どうしました? わからないところあった?」
水野さんが声を掛けてくれた。
「はい。ここのこれなんですけど……」
資料を指さしながらわからない点を伝える。
「ああ、それは……こうやるんだよ」
水野さんは身を乗り出し、
キーボードを叩いて修正しながら説明してくれた。
顔が近づいただけで、
女性免疫のない男子学生は
クラクラしてしまいそうになるのだが、
それよりもしっかりと理解しなければと、
教えてもらった内容を懸命にメモする。
その後も水野さんが近くで見てくれていたおかげで、
疑問点をすぐに解消することができた。
そうしているうちに、あっという間に1時間が過ぎ去っていく。
「ふぅ。ありがとうございました。なんとか今日の分は理解できました。」
「いやいや、結構すごいことよ? これ、高校生には少し難しいくらいの内容だもん。」
「そうなんですか?」
「そうなの。それで学生さんが困っちゃうから、助手が必要になったのよ。」
なるほど、講師一人ではなく助手がいるのには、そういう事情があったのか。
「では、今日はこれで帰ります。ありがとうございました!」
「いえいえ。あっ、私も片づけしたらすぐ帰るから、駅まで一緒に行かない?」
「いいんですか? ぜひぜひ。」
「じゃ、入り口で待っててね。」
こういう時に少し残って頑張ってみるのも、
いいことがあるものだと胸が弾んだのを覚えている。
駅までの帰り道が若干不安だったこともあり、
ちょうどよかったと荷物を片付け入口へと向かった。
高校生の頃のことなので、
今となっては相当昔の話。
当時、工業高校の電子科に通い、
時代としても最先端だったコンピューターを
中心とした電子工学を学んでいた。
とはいえ、実態は学校の勉強よりも
バイト三昧という日々を送っていたのではあったが。
そんな高校生活も3年生になり、
卒業も近づいてきた夏休みのこと。
学校からいくつかの研修プログラムを案内された。
工業高校ということもあり、
自分の専攻に関わるものを
必ずどれかを受講しないと
単位がもらえないという
必修のプログラムだった。
多くの学生が電子工作のような楽しげなものを選ぶ中、
あえて学校で一人だけ、センターコンピューターを使った
プログラミング研修を選んだ。
バイトに明け暮れてはいたが、
プログラミング自体にはとても興味があり、
独学で必死に勉強していたから。
当時はパソコンの性能もまだまだ低く、
プログラミングしたものを実行するには、
大型のコンピューターを使わなければ
多くの時間を要してしまう時代だった。
県内に数台しかないという
センターコンピューターが設置された施設で
研修が開催されると聞き、
迷わず学校で申し込みを済ませた。
夏休み直前、研修の日程と訪問先の資料が手渡された。
学校では扱っていない言語を使った研修ということもあり、
素直にその日を楽しみにして毎日を過ごしていた。
そうして夏休みに突入し、あっという間に研修当日を迎える。
電車に乗り、朝早く現地に到着した。
入り口で受付を済ませて教室に向かうと、
長テーブルにいくつかの椅子、
そしてディスプレイとキーボードやマウスが
椅子の数だけ設置されている。
机の上の資料の数を見ると、
この研修の参加者は5人ほどのようだ。
やっぱりプログラミングの研修は人気がないんだなぁ……。
そう思いながらも、気楽にやろうと案内された席に座った。
その後、続々と学生が来場し、席に座っていく。
一人一人の距離が離れているため、
皆で参加しているという連帯感のようなものは
あまりなかった。
そうして全員揃ったところで、
男性の講師が今回の研修について説明を始める。
ふと見ると、その男性の近くに、
とても華奢で小柄ながら、
なんとも目を引く女性が立っていた。
眼鏡をかけ、長い髪を一つに結んでいるその姿は、
ほぼ男子校状態の学校に通っている男子の目には、
あまりに輝いて見えたことを覚えている。
その女性はどうやら研修の助手らしく、
講師の男性が自己紹介を終えると、
彼女を紹介しました。
水野 真奈美さんという名前らしい。
簡単な挨拶をする彼女を、ただ呆然と見ていた。
普段あまり女性と接点がないうえに、
おそらく年上の綺麗な女性を間近で見たことで、
妙に胸が高鳴ってしまった。
どこか浮ついた気持ちのまま研修が始まった。
内容は本格的で、普段の授業よりも遥かに濃いもの。
浮ついていた気持ちはどこへやら、すぐに真剣に聞き入り、
テストプログラミングを入力しては動作を覚えていくという、
密度の濃い時間を過ごした。
そうして、あっという間にお昼の時間がやってくる。
用意されたお弁当を自席で食べていたのだが、
かなり集中した後だったこともあり、
すごい勢いで平らげてしまった。
食事を終え、トイレに行こうと廊下に出たものの、
場所がわからず少し迷ってしまった。
その姿を、水野さんが見つけてくれ、
声をかけてくれた。
「どうしたんですか?」
「いえ、トイレに行きたいなと探していたんです。」
「ああ、それならそこを右に行ったところですよ。」
「ありがとうございます!」
「あれ? キミ、今日の研修受けてる子だよね?」
「はい。よろしくお願いします!」
「こういう研修は難しいから、なかなか人が集まらないのに……。貴重な人材だね、頑張ってね!」
そう言ってニコリと微笑む水野さんは、
まさに女神と言わんばかりの輝きを放ってた。
とはいえ、まずはトイレに行かねばと一礼し、
そそくさとその場を後にした。
席に戻り、午後の授業が始まる。
午後も内容はかなり高度なものだった。
終了時間間際、座学は本日のみで、
明日からは実習がメインになることが告げられる。
今日やったことをしっかり復習しないとな……と考えていたところ、
この後は1時間程度自由に端末を使っていいとのことだったので、
残って復習することにした。
しかし、残ったのは自分一人だけ。
まあいいかと、最初から資料を読み直し、
一つ一つ動作を確認していく。
なかなかに難しい内容だったため、
あるセクションに記載されたプログラムが
どうしてもうまく動かず、
頭を抱えてしまっていた。
これは明日聞かないとなぁ、
と考えていたら、
横から声がした。
「どうしました? わからないところあった?」
水野さんが声を掛けてくれた。
「はい。ここのこれなんですけど……」
資料を指さしながらわからない点を伝える。
「ああ、それは……こうやるんだよ」
水野さんは身を乗り出し、
キーボードを叩いて修正しながら説明してくれた。
顔が近づいただけで、
女性免疫のない男子学生は
クラクラしてしまいそうになるのだが、
それよりもしっかりと理解しなければと、
教えてもらった内容を懸命にメモする。
その後も水野さんが近くで見てくれていたおかげで、
疑問点をすぐに解消することができた。
そうしているうちに、あっという間に1時間が過ぎ去っていく。
「ふぅ。ありがとうございました。なんとか今日の分は理解できました。」
「いやいや、結構すごいことよ? これ、高校生には少し難しいくらいの内容だもん。」
「そうなんですか?」
「そうなの。それで学生さんが困っちゃうから、助手が必要になったのよ。」
なるほど、講師一人ではなく助手がいるのには、そういう事情があったのか。
「では、今日はこれで帰ります。ありがとうございました!」
「いえいえ。あっ、私も片づけしたらすぐ帰るから、駅まで一緒に行かない?」
「いいんですか? ぜひぜひ。」
「じゃ、入り口で待っててね。」
こういう時に少し残って頑張ってみるのも、
いいことがあるものだと胸が弾んだのを覚えている。
駅までの帰り道が若干不安だったこともあり、
ちょうどよかったと荷物を片付け入口へと向かった。
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