ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里

文字の大きさ
31 / 96
真奈美編

研修助手のお姉さんとの思い出話 第四話






普段、自分の生い立ちは絶対に話さないようにしている。
実は今日、水野さんに話した内容ですら、
学校では誰にも話したことがないくらいだ。

「う~ん、そうですねぇ……。でも、半分当たってますが半分ハズレですよ。」

「どういうこと?」

そこから自分の生い立ちを話をちょっとしてみた。

両親ともに事業で成功している経営者で、
いつの間にか会社は大きくなっていた。

そんな両親なので、自分が生まれてから
そばにいてくれた記憶が全くなかった。

食事は何かの会社からお弁当のような形で届いたものを、
お手伝いさんが出してくれるだけ。

保育園から小中学校まで、すべて
お手伝いの人が代わる代わる
面倒を見てくれるという状況だった。

それでも、小学校受験に始まり、中学校も受験。
とにかく両親が望むような結果を出すべく、
勉強だけを頑張る日々で、
友達と遊ぶ時間など全くなかった。

そうしていざ高校を選ぶとなった時、
水野さんと同じように

「一体自分は何をしているんだ?」

と疑問を持ってしまった。

両親のためではなく、
自分がしたいことを考えた結果、
モノづくりのようなことがしたいと
工業高校への進学を自分で決めた。

もちろん両親は大反対……といっても、
電話で話しただけではあるが。

結果、「そんな子供はいらない」と大喧嘩になり、
見かねた親戚が間に入ってくれた。

お金は全部出すから好きにさせてやってくれということになり、
両親とは絶縁状態になりながら今日に至った。

そんな話を、他人に初めてしてみた。

「……すごいね。というか、大変だったね。」

「いえいえ、水野さんとは種類が違うだけですよ。選択した結果はたぶん似てますね。」

「そうだね……でもさ……なんていうか……」

そう言って、水野さんの目が潤んでいくのがわかった。
そして、しばらく沈黙が続く。

部屋の空気が、少しずつ
熱を帯びていくような感覚を
ほんのりと感じる。

そうしていると水野さんが
ソファーの上で身を寄せ、
こちらの手にそっと触れる。
その手は少し震えていた。

「ねえ、私たち……似た者同士だね。」

「……いえば、そうですね。」

「ずっと一人で頑張ってきて、誰にも甘えられなくて……寂しかったよね?」

その言葉は、自分に向けられたものでありながら、
おそらく彼女自身に向けているようにも聞こえた。

ふわりと、彼女から甘い香りが漂ってくる。
さっきまでの「頼れるお姉さん」の顔ではなく、
何かを必死に求めているような、
女性の顔がそこにあった。

「うん。じゃあさ、今日から私たち友達になろう!」

水野さんは涙を拭い、
努めて明るくではあるが、
いきなりそう言い放つ。

「えっ?! いや……それはどうして?」

「変わった境遇同士、仲良くしようよ!」

なんだこの人は?!
この勢いはどこから来るんだ?!

頭の中が大混乱してしまったが、
彼女の瞳があまりに真剣すぎて、
すぐにそれを断る言葉がでてこない。

困惑していると、水野さんがさらに体を寄せてくる。
お互いの肩が触れ合い、
彼女の体温が直接伝わってくる。

「……やっぱり、友達じゃ足りない。」

「えっ?」

「わかった。じゃあ、友達はいいや。恋人になろう!」

「ちょっと!!! もっとぶっ飛んでますよ!!」

「恋人ならその先、結婚すればずっと一緒にいられる……うん。これだ。」

「待って!!! なにか勝手に話が進んでますけど!?」

「もう決めた。だから……」

水野さんはそう言って、
こちらを逃がさないような
強い瞳で見つめてくる。

そして、ふっと表情が
柔らかくなったかと思うと、
いきなり唇を重ねてきた。

もちろん、自分にとっての人生初のキス。

こうして、思いもよらない
展開がどんどん加速していくのだった。
感想 4

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

熟女教師に何度も迫られて…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
二度と味わえない体験をした実話中心のショート・ショート集です

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

自習室の机の下で。

カゲ
恋愛
とある自習室の机の下での話。

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。