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本当に大切なものです!
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「あの時、私のせいで貴方を傷つけて、本当に取り返しのつかない事をしてしまって、貴方が私の前から居なくなったのも仕方ないのだけれども、、、、、」
「どうしても貴方の事を忘れる事が出来なくて、諦めたくなくて、、、、」
「暫くの間、独りでずっと落ち込んでいたのだけれど、、、、、」
「両親や友達に相談も出来ず、もう死にたくなるくらい自分の事が大嫌いになったの。」
真由は、言葉を途切れつつも、自分の気持ちを正直に伝えたのでした。
「でも、そんな時だった。 友達が教えてくれた一言が、私に光を与えてくれたの。」
「友達が教えてくれたのは、スマホのゲームで知り合ったフレンドの一人が多分、洋じゃないかって言うの。」
僕はただ静かに聞いていたのだが、どうしても聞きたい疑問に抗えずに、質問してしまうのだった。
「ちょっと待って、そのゲームってロスディードの事だよね?」
「ゲーム内で自分の事を話した記憶は無いんだけど?」
「そもそもゲーム内で僕の事に気づいたのって誰?」
分からない事だらけで、少しパニックになりかけて幾つも質問してしまった僕に対し、真由は静かに答えてきたのだった。
「貴方の事に気づいたのは、友達がチャットでの雑談の内容が地元の人しか知らない事だったり、決定的なことは、洋が落ち込んだ時に個チャで相談してた話の内容が、私との別れ話の時の事だったから、それを知っていた友達が、多分そうなのかなって。」
「あと友達の名前は伝えないで欲しいって言われてるけど、ゲーム内での彼女のユーザーネームは、、、、」
「白姫だったの。」
そこまで聞いて僕は、ますます分からない事が増えて、混乱してきたのでした。
「えっ、白姫は真由だったんじゃなかったの?」
「確かあのゲームって同じユーザーネームは使えないはずじゃ?」
この後に及んで真由が嘘をつくとも思えず、意味が分からないで、あれこれ考えてしまっていると、
「洋、正直に話すわね。」
「本当はいけない事だって分かってたのだけど、もうどうしようもない程不安で悲しくて、それを見かねた友達の提案に甘えてしまったの。」
「キャラの譲渡、つまり、、、、」
「友達がゲームを止めて、私が新たに白姫のキャラとして、貴方に会いに行く方法を提案してくれたの。」
「白姫が、何日かログインしてこない事があったでしょう?」
「あの時に、新しいアカウントでログインした時から、私が白姫として貴方と接していたの。」
一呼吸の後、
「ごめんなさい、、、、私は貴方に対して嘘をついて近づいて、結果として、また傷つけてしまって、、、、」
「謝って済むことじゃないのかもしれないけど、、、、」
「また洋に会えて、本当に幸せで、もう二度と戻れないと思っていた関係に、ゲーム内とはいえ夢にまで見た貴方との結婚に、、、、」
「気持ちがどんどん昂って、もう自分が抑えられなくなっていって、我慢出来ずに会いに来てしまったの。」
「会いに来る前に今までの、もちろん私のせいで別れた事、貴方を裏切ってしまった事も、全て洋のお母さんに話をしたわ。」
「今までの事を本当に反省して、私が貴方との事を本気でやり直したいと言ったら、お母さんは、これからの事は二人で真摯に向き合って話をしなさいって、今後いつかこの件で後悔する事が無いように納得のいくまで話をしなさいって言ってくれたの。」
真由と自分の母親とのやり取りなど知る由もない僕だったが、これ迄の事を理解することが出来、多少落ち着きを取り戻したのでした。
「真由、今までの事は何となく分かった。」
「だけど、どうしても君のやった事を許す事が出来ない。あの日の出来事は、今でもトラウマになってるんだよ。」
「僕は本気で君の事を愛していたのに、君がどうしてあんな事が出来てしまったのか。納得なんて出来ないよ。」
「それでも今は、ゲーム内で好きな人か出来て、ようやく立ち直れそうになっていたのに、」
「まさかそれが、真由だったなんて、、、、」
僕の心の奥から、ふつふつと怒りの感情が湧き上がり、止まらなくなっていくのを感じた。
「ごめん真由、今日はこれでもう帰ってくれないかな?」
「独りになりたいから。」
僕のやや怒りのこもったセリフに真由は、申し訳なさそうにうつむきながら、
「貴方の隣にいる資格なんてないのかもしれないけど、図々しいだろうけどもう一度だけでも私に償いの機会をもらえないかな?」
「また貴方に認めて貰えるよう、私の全てをかけて貴方に尽くしたいの。」
ここまで言うと、玄関に行き靴を履く、そして振り向くと、目に涙を浮かべながら、
「ごめんなさい洋、私の我儘のせいでいつも迷惑かけてしまって。でも今日は貴方にいろいろ話を聞いて貰えただけでも本当によかった。」
「さよなら。」
扉を開け、振り向くことなく帰って行ったのだった。
そして、シーンとした静寂に包まれた部屋のなかで僕は、独り何も無い虚空を見つめながら、ぐちゃぐちゃになった頭で思考を巡らせていたのだった。
(いったい僕はどうしたらいいんだろう?)
いくら考えてみても答えが見つからずに、遠くで聴こえるサイレンの音に我に返ってふと辺りを見渡すと、いつの間にか部屋の中が薄暗くなっているのに気づいた僕は、灯りをつけおもむろに冷蔵庫の中からビールを取り出し、缶のまま飲み始めた。
(いっその事、嫌いになれたらどんなに楽だろうか)
白姫は真由だった。その事実はハッキリと確定した。 僕はリアルに続きゲーム内でも別れる事になってしまい、気持ちがどん底まで落ちていく感じで、目の前が真っ暗になり何もする気がおきなくなってしまった。
ただビールをひたすら飲み続け、テーブルの上に空いた缶が数本になった頃、独りきりの部屋の中で孤独に耐えられずに、少し酔っておかしなテンションの僕は、無意識にスマホを取り出すと迷いなくゲームを開始していたのだった。
(僕は何をしようとしてるんだろう)
まるで他人事のように考え、しかしゲームが始まると途端に不安な気持ちが出てくるのだった。
(アレ?)
(サーバー間違えたかな?)
事実、いつものサーバーではなく、初めてゲームを開始した頃に使っていたサーバーにログインしてしまっていたのでした。
(酔ってるなぁ、、、)
僕はすぐにログアウトしようとしていたのだったが、チャットにあった懐かしいネームに、ふと目が止まった。
(マスター、、、)
相変わらずな内容の少しネジのズレたコメントで場を楽しませていたのは、以前お世話になっていたマスターこと、エミルだった。
「です。」
不意にチャットに割って入った意味不明なコメント、ただ一言それだけだったが、わかる人にはすぐに分かっていた。
「ヒーロ?」
「問おう、私が貴方のマスターか?」
何処かで聞いたようなセリフを使って間髪入れずにボケてくる辺り、さすがのエミルだった。
(懐かしいな)
「貴方が私のマスターです!」
こんな時にでも何とか返す事が出来たのだが、このノリに今はついていけないと思い、
「ゴメンです。サヨナラです。」
急にチャットから退散しようとしていたら、エミルから個チャにメッセージがきたのだった。
「何かあったの?」
たった一言、その一行を見て僕は、我慢出来なくなってしまい、感情の糸がぷっつりと切れて泣いてしまっていた。
「今日のヒーロ、何かおかしいと感じたのだけど、どうしたの?」
僕からの返事がなく、少し心配になっていたエミルであった。
僕はというと、以前、エミルのギルドに居た頃は、気持ちが落ち込んだ時に、話を聞いてもらって何度も救われていたのを思い出していた。
「マスター、少し話を聞いてもらってもいいです?」
ようやくチャットを返すと、
「ヒーロ、私で良ければ何でも聞くよ。」
落ち着いた感じの常識ある大人で、そこに居るのはいつものふざけた態度のエミルではありませんでした。 そこで僕は意を決して本題に入るのでした。
「マスター、僕がゲーム内で結婚してたの知っていたです?」
それに対してエミルは、
「もちろん知ってるよ。」
当然と言わんばかりに答える。
「その相手が白姫で、もう別れたのは知ってるです?」
「えっ?」
さすがのエミルも、少し動揺したのか、暫くチャットが停止した状態になっていたのだが、
「詳しく話してくれない?」
僕は酔っていた事もあって、またチャットの相手が信頼出来るエミルだったのもあり、素直に今迄の事を語るのでした。
黙って静かに、僕からのチャットを見ていたエミルだったのだが、僕からの話がひと段落したところで、返信してきたのだった。
「ヒーロ、辛かったね。」
またもやエミルの一言に泣かされてしまった僕だった。
「今、とても辛くて何もかも逃げ出したくなるだろうけど、それでも君を心配してくれる仲間はきっといるから。 もちろん私もそうだけど、他にも君の事を助けたいと思ってる人は必ずいるよ!」
「どうしても辛くて泣きたい時は、また話を聞くから、だから、、、」
「もうちょっとだけ、頑張って!」
今、自分がどんな顔をしているのか、チャット越しの会話で本当によかったと感じていた。
「マスター、本当にありがとうです。」
「ほどほどに頑張るです!」
僕はそう言うと、そのサーバーをログアウトし、自分の所属していたギルドのある別のサーバーに改めてログインするのでした。
ログインした僕に真っ先に気づいてくれたのは、所属していたギルドのサブマスターのミーナだった。
「ヒーロさん?」
いきなり個チャの方にメッセージが届き、どうしたのかなと考えていると、
「白姫もギルドを抜けてしまったの!」
僕はそうなると考えていたからか、あまり驚かずに、
「そうなんですね。」
素っ気なく返答すると、
「ヒーロさん、私から少し言いたい事があります!」
ただならぬ雰囲気のミーナの反応に、戸惑いの色を隠せない僕は、
「ミーナさん、どうぞ何でも言ってください。」
覚悟を決め、軽く深呼吸して心を落ち着けるのでした。
「ヒーロさん、今迄の事はいろいろ大変だとは思います。私が貴方の辛さを全て理解出来るなんて思わないです。」
「だけど、だからこそ、ヒーロさんには今から後悔して欲しくないと思います。」
「貴方にとって、何が一番大切なのかを、よく考えて下さい。」
「貴方は本当は、どうしたいのですか?」
「白姫とどうなりたいのですか?」
「どうしても許すことなんて出来ないかもしれません。納得なんて出来ないのかもしれません。」
「それでも、もし好きな気持ちがあるのならば、その気持ちを受け止めて上げられないかな?」
「ゆっくりとやり直す事は出来ないのかな?」
矢継ぎ早に、感情的に、それでも僕達の事を本気で心配してくれてるのが分かる内容の言葉に対して、僕は、
「ミーナさん、いろいろ迷惑かけて本当にごめんなさいです。」
「正直に言うと、白姫の事は今でも本当に大好きです。でもそれと同じくらい憎しみもあるんです。」
「彼女の過去の事は、絶対に許す事はないと思うです。もちろん過去は変えられないです。それでも、まだ彼女に対して気持ちが残ってるなら、僕は、、、、」
(俺、もう答えは出てるだろ!)
心の中で静かに叫ぶと、
「ミーナさん、ありがとうございます。」
「今からリアルで白姫に会って話をしてきます!」
「もう決心しました!」
僕はそう言うと、ゲームからログアウトするのでした。
一方のミーナはというと、
(ヒーロさん、立ち直れたのなら良かった)
ホッとした気持ちがあるのと同時に、
(結局、白姫との事はどうする気なのかな?)
一抹の不安に少々悩むのだった。
僕はゲームからリアルに戻って直ぐに、真由にラインで連絡をしたのでした。
「真由、大事な話があるから会って話がしたい。今から僕の部屋に来てくれるかな?」
ラインは直ぐに既読になり、
「今からそっちに行くね。」
返信があり、真由が来るのを待つだけだったので、コーヒーを淹れると部屋中いい香りに包まれた。
(僕はこれから、プロポーズをする。指輪も無い、迷いながらたった今決めた、最低最悪のみっともないプロポーズをする。)
(自分に自信なんてない、これから先もどうなるかなんて分からないけど、、、)
たったひとつだけど確かなものがあるのに気づいたのだった。
「僕は真由が好きだ!」
思わず声に出して気合いを入れる。真由は僕の事を好きだと言う。もちろん本心なのだろうけど、不安がないといえばそれも嘘になる。
これ迄の事を振り返り、思った。
(きっと大丈夫だよね。)
その時、インターホンが鳴り、真由がドアを開け入ってきた。
「真由、上がって。」
僕は真由をソファに座るように促すと、その隣に座った。
そして、大きく深呼吸をすると、在り来りなセリフを言うのだった。
「真由、僕と結婚してくれませんか?」
そう、僕にとって二度目のプロポーズの言葉を伝えるのだった。
「どうしても貴方の事を忘れる事が出来なくて、諦めたくなくて、、、、」
「暫くの間、独りでずっと落ち込んでいたのだけれど、、、、、」
「両親や友達に相談も出来ず、もう死にたくなるくらい自分の事が大嫌いになったの。」
真由は、言葉を途切れつつも、自分の気持ちを正直に伝えたのでした。
「でも、そんな時だった。 友達が教えてくれた一言が、私に光を与えてくれたの。」
「友達が教えてくれたのは、スマホのゲームで知り合ったフレンドの一人が多分、洋じゃないかって言うの。」
僕はただ静かに聞いていたのだが、どうしても聞きたい疑問に抗えずに、質問してしまうのだった。
「ちょっと待って、そのゲームってロスディードの事だよね?」
「ゲーム内で自分の事を話した記憶は無いんだけど?」
「そもそもゲーム内で僕の事に気づいたのって誰?」
分からない事だらけで、少しパニックになりかけて幾つも質問してしまった僕に対し、真由は静かに答えてきたのだった。
「貴方の事に気づいたのは、友達がチャットでの雑談の内容が地元の人しか知らない事だったり、決定的なことは、洋が落ち込んだ時に個チャで相談してた話の内容が、私との別れ話の時の事だったから、それを知っていた友達が、多分そうなのかなって。」
「あと友達の名前は伝えないで欲しいって言われてるけど、ゲーム内での彼女のユーザーネームは、、、、」
「白姫だったの。」
そこまで聞いて僕は、ますます分からない事が増えて、混乱してきたのでした。
「えっ、白姫は真由だったんじゃなかったの?」
「確かあのゲームって同じユーザーネームは使えないはずじゃ?」
この後に及んで真由が嘘をつくとも思えず、意味が分からないで、あれこれ考えてしまっていると、
「洋、正直に話すわね。」
「本当はいけない事だって分かってたのだけど、もうどうしようもない程不安で悲しくて、それを見かねた友達の提案に甘えてしまったの。」
「キャラの譲渡、つまり、、、、」
「友達がゲームを止めて、私が新たに白姫のキャラとして、貴方に会いに行く方法を提案してくれたの。」
「白姫が、何日かログインしてこない事があったでしょう?」
「あの時に、新しいアカウントでログインした時から、私が白姫として貴方と接していたの。」
一呼吸の後、
「ごめんなさい、、、、私は貴方に対して嘘をついて近づいて、結果として、また傷つけてしまって、、、、」
「謝って済むことじゃないのかもしれないけど、、、、」
「また洋に会えて、本当に幸せで、もう二度と戻れないと思っていた関係に、ゲーム内とはいえ夢にまで見た貴方との結婚に、、、、」
「気持ちがどんどん昂って、もう自分が抑えられなくなっていって、我慢出来ずに会いに来てしまったの。」
「会いに来る前に今までの、もちろん私のせいで別れた事、貴方を裏切ってしまった事も、全て洋のお母さんに話をしたわ。」
「今までの事を本当に反省して、私が貴方との事を本気でやり直したいと言ったら、お母さんは、これからの事は二人で真摯に向き合って話をしなさいって、今後いつかこの件で後悔する事が無いように納得のいくまで話をしなさいって言ってくれたの。」
真由と自分の母親とのやり取りなど知る由もない僕だったが、これ迄の事を理解することが出来、多少落ち着きを取り戻したのでした。
「真由、今までの事は何となく分かった。」
「だけど、どうしても君のやった事を許す事が出来ない。あの日の出来事は、今でもトラウマになってるんだよ。」
「僕は本気で君の事を愛していたのに、君がどうしてあんな事が出来てしまったのか。納得なんて出来ないよ。」
「それでも今は、ゲーム内で好きな人か出来て、ようやく立ち直れそうになっていたのに、」
「まさかそれが、真由だったなんて、、、、」
僕の心の奥から、ふつふつと怒りの感情が湧き上がり、止まらなくなっていくのを感じた。
「ごめん真由、今日はこれでもう帰ってくれないかな?」
「独りになりたいから。」
僕のやや怒りのこもったセリフに真由は、申し訳なさそうにうつむきながら、
「貴方の隣にいる資格なんてないのかもしれないけど、図々しいだろうけどもう一度だけでも私に償いの機会をもらえないかな?」
「また貴方に認めて貰えるよう、私の全てをかけて貴方に尽くしたいの。」
ここまで言うと、玄関に行き靴を履く、そして振り向くと、目に涙を浮かべながら、
「ごめんなさい洋、私の我儘のせいでいつも迷惑かけてしまって。でも今日は貴方にいろいろ話を聞いて貰えただけでも本当によかった。」
「さよなら。」
扉を開け、振り向くことなく帰って行ったのだった。
そして、シーンとした静寂に包まれた部屋のなかで僕は、独り何も無い虚空を見つめながら、ぐちゃぐちゃになった頭で思考を巡らせていたのだった。
(いったい僕はどうしたらいいんだろう?)
いくら考えてみても答えが見つからずに、遠くで聴こえるサイレンの音に我に返ってふと辺りを見渡すと、いつの間にか部屋の中が薄暗くなっているのに気づいた僕は、灯りをつけおもむろに冷蔵庫の中からビールを取り出し、缶のまま飲み始めた。
(いっその事、嫌いになれたらどんなに楽だろうか)
白姫は真由だった。その事実はハッキリと確定した。 僕はリアルに続きゲーム内でも別れる事になってしまい、気持ちがどん底まで落ちていく感じで、目の前が真っ暗になり何もする気がおきなくなってしまった。
ただビールをひたすら飲み続け、テーブルの上に空いた缶が数本になった頃、独りきりの部屋の中で孤独に耐えられずに、少し酔っておかしなテンションの僕は、無意識にスマホを取り出すと迷いなくゲームを開始していたのだった。
(僕は何をしようとしてるんだろう)
まるで他人事のように考え、しかしゲームが始まると途端に不安な気持ちが出てくるのだった。
(アレ?)
(サーバー間違えたかな?)
事実、いつものサーバーではなく、初めてゲームを開始した頃に使っていたサーバーにログインしてしまっていたのでした。
(酔ってるなぁ、、、)
僕はすぐにログアウトしようとしていたのだったが、チャットにあった懐かしいネームに、ふと目が止まった。
(マスター、、、)
相変わらずな内容の少しネジのズレたコメントで場を楽しませていたのは、以前お世話になっていたマスターこと、エミルだった。
「です。」
不意にチャットに割って入った意味不明なコメント、ただ一言それだけだったが、わかる人にはすぐに分かっていた。
「ヒーロ?」
「問おう、私が貴方のマスターか?」
何処かで聞いたようなセリフを使って間髪入れずにボケてくる辺り、さすがのエミルだった。
(懐かしいな)
「貴方が私のマスターです!」
こんな時にでも何とか返す事が出来たのだが、このノリに今はついていけないと思い、
「ゴメンです。サヨナラです。」
急にチャットから退散しようとしていたら、エミルから個チャにメッセージがきたのだった。
「何かあったの?」
たった一言、その一行を見て僕は、我慢出来なくなってしまい、感情の糸がぷっつりと切れて泣いてしまっていた。
「今日のヒーロ、何かおかしいと感じたのだけど、どうしたの?」
僕からの返事がなく、少し心配になっていたエミルであった。
僕はというと、以前、エミルのギルドに居た頃は、気持ちが落ち込んだ時に、話を聞いてもらって何度も救われていたのを思い出していた。
「マスター、少し話を聞いてもらってもいいです?」
ようやくチャットを返すと、
「ヒーロ、私で良ければ何でも聞くよ。」
落ち着いた感じの常識ある大人で、そこに居るのはいつものふざけた態度のエミルではありませんでした。 そこで僕は意を決して本題に入るのでした。
「マスター、僕がゲーム内で結婚してたの知っていたです?」
それに対してエミルは、
「もちろん知ってるよ。」
当然と言わんばかりに答える。
「その相手が白姫で、もう別れたのは知ってるです?」
「えっ?」
さすがのエミルも、少し動揺したのか、暫くチャットが停止した状態になっていたのだが、
「詳しく話してくれない?」
僕は酔っていた事もあって、またチャットの相手が信頼出来るエミルだったのもあり、素直に今迄の事を語るのでした。
黙って静かに、僕からのチャットを見ていたエミルだったのだが、僕からの話がひと段落したところで、返信してきたのだった。
「ヒーロ、辛かったね。」
またもやエミルの一言に泣かされてしまった僕だった。
「今、とても辛くて何もかも逃げ出したくなるだろうけど、それでも君を心配してくれる仲間はきっといるから。 もちろん私もそうだけど、他にも君の事を助けたいと思ってる人は必ずいるよ!」
「どうしても辛くて泣きたい時は、また話を聞くから、だから、、、」
「もうちょっとだけ、頑張って!」
今、自分がどんな顔をしているのか、チャット越しの会話で本当によかったと感じていた。
「マスター、本当にありがとうです。」
「ほどほどに頑張るです!」
僕はそう言うと、そのサーバーをログアウトし、自分の所属していたギルドのある別のサーバーに改めてログインするのでした。
ログインした僕に真っ先に気づいてくれたのは、所属していたギルドのサブマスターのミーナだった。
「ヒーロさん?」
いきなり個チャの方にメッセージが届き、どうしたのかなと考えていると、
「白姫もギルドを抜けてしまったの!」
僕はそうなると考えていたからか、あまり驚かずに、
「そうなんですね。」
素っ気なく返答すると、
「ヒーロさん、私から少し言いたい事があります!」
ただならぬ雰囲気のミーナの反応に、戸惑いの色を隠せない僕は、
「ミーナさん、どうぞ何でも言ってください。」
覚悟を決め、軽く深呼吸して心を落ち着けるのでした。
「ヒーロさん、今迄の事はいろいろ大変だとは思います。私が貴方の辛さを全て理解出来るなんて思わないです。」
「だけど、だからこそ、ヒーロさんには今から後悔して欲しくないと思います。」
「貴方にとって、何が一番大切なのかを、よく考えて下さい。」
「貴方は本当は、どうしたいのですか?」
「白姫とどうなりたいのですか?」
「どうしても許すことなんて出来ないかもしれません。納得なんて出来ないのかもしれません。」
「それでも、もし好きな気持ちがあるのならば、その気持ちを受け止めて上げられないかな?」
「ゆっくりとやり直す事は出来ないのかな?」
矢継ぎ早に、感情的に、それでも僕達の事を本気で心配してくれてるのが分かる内容の言葉に対して、僕は、
「ミーナさん、いろいろ迷惑かけて本当にごめんなさいです。」
「正直に言うと、白姫の事は今でも本当に大好きです。でもそれと同じくらい憎しみもあるんです。」
「彼女の過去の事は、絶対に許す事はないと思うです。もちろん過去は変えられないです。それでも、まだ彼女に対して気持ちが残ってるなら、僕は、、、、」
(俺、もう答えは出てるだろ!)
心の中で静かに叫ぶと、
「ミーナさん、ありがとうございます。」
「今からリアルで白姫に会って話をしてきます!」
「もう決心しました!」
僕はそう言うと、ゲームからログアウトするのでした。
一方のミーナはというと、
(ヒーロさん、立ち直れたのなら良かった)
ホッとした気持ちがあるのと同時に、
(結局、白姫との事はどうする気なのかな?)
一抹の不安に少々悩むのだった。
僕はゲームからリアルに戻って直ぐに、真由にラインで連絡をしたのでした。
「真由、大事な話があるから会って話がしたい。今から僕の部屋に来てくれるかな?」
ラインは直ぐに既読になり、
「今からそっちに行くね。」
返信があり、真由が来るのを待つだけだったので、コーヒーを淹れると部屋中いい香りに包まれた。
(僕はこれから、プロポーズをする。指輪も無い、迷いながらたった今決めた、最低最悪のみっともないプロポーズをする。)
(自分に自信なんてない、これから先もどうなるかなんて分からないけど、、、)
たったひとつだけど確かなものがあるのに気づいたのだった。
「僕は真由が好きだ!」
思わず声に出して気合いを入れる。真由は僕の事を好きだと言う。もちろん本心なのだろうけど、不安がないといえばそれも嘘になる。
これ迄の事を振り返り、思った。
(きっと大丈夫だよね。)
その時、インターホンが鳴り、真由がドアを開け入ってきた。
「真由、上がって。」
僕は真由をソファに座るように促すと、その隣に座った。
そして、大きく深呼吸をすると、在り来りなセリフを言うのだった。
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