退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ

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分岐点は眼前に

 眉尻を下げて悲しげな微笑みを向けるエレノアに、クレアはたじろいで数歩下がって大声で弁明した。


「わっっ私何もしていないわっ!」
「え……ええ、そう……。もし宜しければ手を貸してくださるかしら?」


 エレノアは、弱々しく白く細い手をクレアに差し出した。



─── これは大きな分岐点だ。



 手をとれば、周りにはエレノアを転ばせた事による謝罪と和解のように映る。
 そしてエレノアは、それをきっかけに皆に誤解を与えた謝罪と感謝をクレアの教室や、侍らせている殿方の前で再三述べるつもりだ。

 虐められたとされる集団のトップに位置するエレノアに、感謝されている姿に殿方はどう思うか...


 手を取らなければ、エレノアを転ばせて怪我をさせたにも関わらず、謝罪もなく立ち去ったとして噂が勝手に流れ、虐められているという話の信憑性が薄まる。



 そんな選択肢を孕んだ手を、クレアはどう思っているのか。強張った顔で見つめると、キュッと口を引き結び、踵を返して走り去ってしまった。

「なんて方なの!」と憤り騒めく周りの反応に、エレノアは内心でうっそりとほくそ笑むと、また弱々しく微笑んで見せ、宥めるように声をかけた。


「皆さま、そう怒らないでくださいまし。
 こうして友人が手を貸して下さり、心配して下さって……私はそれだけで十分ですわ。
 きっと私がぼぅっとしていたのがいけないのです。
 あ……いえ、お騒がせしましたわ。
 私は保健室に参りますので、皆さま昼食をどうぞゆっくり楽しんでくださいませ。失礼いたしますわ」


 そうしてエレノアは、友人の手を借りて立ち上がるといつもと違い、どことなく歪な歩調で友人の手を借りながら立ち去った。


 その光景を目撃した者達の目を感じながら。
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