退屈令嬢のフィクサーな日々

ユウキ

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悪戯な微笑み

 自邸に到着したエレノアは、自室のソファに腰掛けながら、優雅にお茶を楽しんでいた。


「私、女優になれるのではないかしら…」


 楽しげに微笑む彼女の対面には、いつかのように同じクラスの父の子飼いである女子生徒が座り、同じように出されたお茶に口をつけていた。


「しかし態々お嬢様が落ちるなどと……冷や汗をかきました」
「仕方ないじゃ無い。それに、こんな事出来るのも今のうちなのよ?念のために厚めにパニエを重ねていたし、大丈夫だったでしょ?」


 もうすぐ王太子妃となるエレノアには今以上に警護がつく。階段から落ちるなど、以ての外だろう。
 しかし、エレノアを大事にしている公爵閣下も、先に報告をあげたと言えども、今頃事件の一報を聞いて王宮で怒り狂っているに違いない。

 ふぅっと胃の痛みを吐き出す様にため息を溢した。

「それで、証言はあれで良かったのですか?」
「ええ、十分よ。何一つ、誰も嘘はついてないもの」
「まぁ…そうですね」


 エレノアは躊躇いがちに言う事で、語尾を濁したり、伏せてはっきりと言わなかっただけで、事実しか述べていなかった。



『あの方、急に叫び声を上げて(こちらから)
 手を(取って遠心力で立ち位置を変えて)…
 そうしたら
 (立ち位置が変わったことに、相手が驚いて)
 手を(私が離しまして)。
 そして体が投げ出され
 (たように見えますが実際はパニエをクッションに太ももから落ちるようにして着地。横倒しになり、転がりました)…』



 ほぼほぼ伏せてるよね?と内心でツッコミを入れつつ主人の大事な愛娘には何も言うまいと、キュッと口を噤む。


「ちゃんと温情ある処罰を求めたのだもの、死は回避できますでしょう?
 本来なら高位貴族で、王族の婚約者である私に冤罪をかけるなんて事、死罪以外あり得なくてよ?」
「ええ、そうですね。お優しい采配かと」


 上機嫌で微笑むエレノアは、ゆっくりとカップを持ち上げて立ち昇る湯気を見つめた。


「もうお終いかしら」
「ええ。そのようですね」
「長続きしないものね」
「力不足ですよ」

「そうね。お楽しみはこれから幾らでも湧いてくるわよね。殿下もいる事だし暇つぶしにはなるかしら」
「程々でおやめください。次期国王でございますし」

「わかっているわよ。うふふ」


 頼みますよいう視線を向けるも、楽しげにカップを傾けるエレノアには、僅かも届かないのではと、手駒である生徒は肝をちょっぴり冷やした。
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