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「あ―あ、痕になってるや」
シュムは、枷の外れた手首をさすりながらぼやいた。 そうして、外してくれた相手に向き直る。
「ありがとう、助かったよ。今度何か、美味しいものおごるね」
キーキーと甲高い鳴き声で応えたのは、ハリネズミに似た生物だった。とげの具合といい色といい大きさといい、ありふれたハリネズミそのもの。
これが枷を外したと言っても、信じる人は少ないだろう。だが事実は曲げられないし、実のところ、この生物はハリネズミではない。
「じゃあ、また今度。本当に、ありがとう」
もう一度礼を言ってから、シュムは右手の人差し指でくるりと中空に円を描いた。そこに、青い燐光を放つ小型の複雑な模様の魔法陣が表れる。
ハリネズミもどきは、最後にもう一声鳴いて右手を振ると、その魔法陣の中に飛び込んで行った。そのまま、姿が消える。同時に、魔法陣も跡形もなく消えた。
シュムの描く魔法陣は、言ってしまえば滅茶苦茶だ。実のところ、描く必要すらない。
無駄に溢れていた魔力を制御する為に師事した先では、何故これで魔獣を呼び出せるんだ、と頭を抱えられた。しかし、生まれて以来勝手に生じていたものなのだから、シュムにもわかるわけがない。
とりあえず師に正式な魔法陣を多数教わり、それを描けもするのだが、やはり、慣れ親しんだ「無茶苦茶な」魔法陣の方が簡単に描ける。緊急事態や、手があまり動かせないなどの不具合があるときには、かなり重宝している。
そもそも、シュムが正式な魔法陣を使うのは、魔物と契約を結ぶときで、それはほとんどなかった。
「いや、見事なものだ」
アルが出て行ったのとは逆の方向、指差していた方向から、男の声がした。見ると、壮年の紳士を絵にしたような人物。いささか声が高くて細いのが、玉に傷と言えば言えるだろう。
男は、寛大を装うかのようにゆっくりと歩み寄ってくる。一方、シュムの男を見る目は少々疲れ気味だ。
「全く、見事だ。下等な低級魔獣とはいえ、ああも易々と使役するとはね」
「あんたが、一応の黒幕?」
シュムは、枷の外れた手首をさすりながらぼやいた。 そうして、外してくれた相手に向き直る。
「ありがとう、助かったよ。今度何か、美味しいものおごるね」
キーキーと甲高い鳴き声で応えたのは、ハリネズミに似た生物だった。とげの具合といい色といい大きさといい、ありふれたハリネズミそのもの。
これが枷を外したと言っても、信じる人は少ないだろう。だが事実は曲げられないし、実のところ、この生物はハリネズミではない。
「じゃあ、また今度。本当に、ありがとう」
もう一度礼を言ってから、シュムは右手の人差し指でくるりと中空に円を描いた。そこに、青い燐光を放つ小型の複雑な模様の魔法陣が表れる。
ハリネズミもどきは、最後にもう一声鳴いて右手を振ると、その魔法陣の中に飛び込んで行った。そのまま、姿が消える。同時に、魔法陣も跡形もなく消えた。
シュムの描く魔法陣は、言ってしまえば滅茶苦茶だ。実のところ、描く必要すらない。
無駄に溢れていた魔力を制御する為に師事した先では、何故これで魔獣を呼び出せるんだ、と頭を抱えられた。しかし、生まれて以来勝手に生じていたものなのだから、シュムにもわかるわけがない。
とりあえず師に正式な魔法陣を多数教わり、それを描けもするのだが、やはり、慣れ親しんだ「無茶苦茶な」魔法陣の方が簡単に描ける。緊急事態や、手があまり動かせないなどの不具合があるときには、かなり重宝している。
そもそも、シュムが正式な魔法陣を使うのは、魔物と契約を結ぶときで、それはほとんどなかった。
「いや、見事なものだ」
アルが出て行ったのとは逆の方向、指差していた方向から、男の声がした。見ると、壮年の紳士を絵にしたような人物。いささか声が高くて細いのが、玉に傷と言えば言えるだろう。
男は、寛大を装うかのようにゆっくりと歩み寄ってくる。一方、シュムの男を見る目は少々疲れ気味だ。
「全く、見事だ。下等な低級魔獣とはいえ、ああも易々と使役するとはね」
「あんたが、一応の黒幕?」
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