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「…元気そうで何より」
「うん、それはそっちも。久しぶりだね。滅多に合えないから、前に会ったのは…ユタ村の奇祭のとき? ほんと、久しぶりだ」
こちらの世界での友人の一人との思いがけない再会に、シュムは、十二、三という外見にふさわしいような笑顔になった。カイが一層憮然とするのだが、そんなことには気付いていない。
全身黒ずくめで、どこか神職者を思わせる服装と身のこなし。本当に久しぶりに会うというのに、変わっているのは、後ろであっさりと束ねただけの濃紺の髪が少し伸びたくらいではないかと思えた。
「ええとそれで、どうして?」
「むしろそれは、私の方が聞かせてもらいたいものだ。何故お前が、こちらにいる?」
「あー、いやそれは長くなるんだけど…まあ簡単にいえば、あれのせいかな」
「これもか?」
ちらりと、うつ伏せに壁に繋がれた男を見てから、ディーはかがんで、シュムの左腕の枷を掴んだ。硬い音を立てて、ディーの手の中で枷が割れる。シュムの腕にぴたりとはまっていたはずの枷だが、カケラ一片たりとも、シュムを傷つけることはなかった。
それをカイが、悔しそうに睨んでいる。自分には出来ないことだと、知っているからこそ余計に悔しい。カイでは、シュムの腕まで潰しかねない。だから、シュムは鎖だけでいいと言ったのだ。
情けないが、たとえ微量としても、シュムに害を成していただろう枷が外れたことには安堵した。この少女が傷つくのには、耐えられない。だからこそ、様々な感情を押しやってこの男への伝言を飛ばしたのだ。
「ありがとう」
「そこの奴が、お前をここへ連れてきたというのだな」
「まあ、そんなところ。少なくとも一月以上は、あたしのこと調べてたみたいでさ」
「お前を?」
「うん。多分、食べるつもりだったんじゃないかと思うんだけど」
カイとディーは、思わず顔を見合わせた。
そもそもカイは、そうかもしれないと疑ってはいた。しかし確証があるわけでもなく、ましてや本人がこんなにもあっさりと言ったとなると、話は違う。
「そう言ったのか?」
「ううん、言ってない。会ったことのある同族喰らいに、感じが似てるから。そうじゃなくても、どうせろくでもないことだろうね、目的は」
友好的なら、一月以上も調べていた相手に、わざわざ神経を逆撫でするような接触の仕方をするとは思えない。セレンを、遠巻きに見張っていたらしいこともだ。
言い切って、シュムはカイとディーから、わずかに顔を逸らした。
「正直、このまま餓死でもさせてやりたいくらいには腹立ってるんだよね」
飽くまで淡々と言って、シュムは男の繋がれている壁に近付いた。
「っ!」
その瞬間に、男が体を跳ね上げた。
「うん、それはそっちも。久しぶりだね。滅多に合えないから、前に会ったのは…ユタ村の奇祭のとき? ほんと、久しぶりだ」
こちらの世界での友人の一人との思いがけない再会に、シュムは、十二、三という外見にふさわしいような笑顔になった。カイが一層憮然とするのだが、そんなことには気付いていない。
全身黒ずくめで、どこか神職者を思わせる服装と身のこなし。本当に久しぶりに会うというのに、変わっているのは、後ろであっさりと束ねただけの濃紺の髪が少し伸びたくらいではないかと思えた。
「ええとそれで、どうして?」
「むしろそれは、私の方が聞かせてもらいたいものだ。何故お前が、こちらにいる?」
「あー、いやそれは長くなるんだけど…まあ簡単にいえば、あれのせいかな」
「これもか?」
ちらりと、うつ伏せに壁に繋がれた男を見てから、ディーはかがんで、シュムの左腕の枷を掴んだ。硬い音を立てて、ディーの手の中で枷が割れる。シュムの腕にぴたりとはまっていたはずの枷だが、カケラ一片たりとも、シュムを傷つけることはなかった。
それをカイが、悔しそうに睨んでいる。自分には出来ないことだと、知っているからこそ余計に悔しい。カイでは、シュムの腕まで潰しかねない。だから、シュムは鎖だけでいいと言ったのだ。
情けないが、たとえ微量としても、シュムに害を成していただろう枷が外れたことには安堵した。この少女が傷つくのには、耐えられない。だからこそ、様々な感情を押しやってこの男への伝言を飛ばしたのだ。
「ありがとう」
「そこの奴が、お前をここへ連れてきたというのだな」
「まあ、そんなところ。少なくとも一月以上は、あたしのこと調べてたみたいでさ」
「お前を?」
「うん。多分、食べるつもりだったんじゃないかと思うんだけど」
カイとディーは、思わず顔を見合わせた。
そもそもカイは、そうかもしれないと疑ってはいた。しかし確証があるわけでもなく、ましてや本人がこんなにもあっさりと言ったとなると、話は違う。
「そう言ったのか?」
「ううん、言ってない。会ったことのある同族喰らいに、感じが似てるから。そうじゃなくても、どうせろくでもないことだろうね、目的は」
友好的なら、一月以上も調べていた相手に、わざわざ神経を逆撫でするような接触の仕方をするとは思えない。セレンを、遠巻きに見張っていたらしいこともだ。
言い切って、シュムはカイとディーから、わずかに顔を逸らした。
「正直、このまま餓死でもさせてやりたいくらいには腹立ってるんだよね」
飽くまで淡々と言って、シュムは男の繋がれている壁に近付いた。
「っ!」
その瞬間に、男が体を跳ね上げた。
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