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霧囲
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ミーシャとキドニーと再開を果たし、諸々の説明を終え、それと平行して村の外へと続々と出て行く人々を見送り、さて、とシュムは息を吐いた。
「どうしたものかな」
カイに宿題を出されてしまった。
が、調べようにも…何をどう手をつければいいものやら。ミーシャに訊いてみようにも、何を訊けばいいのかがわからない。
「名前読んだら返事して…呼ばれたから返事しようとしたら遮られて…?」
名だけや姓ではなく、全てをそれぞれに呼び合ったところが特徴だとは思うが。首を傾げつつ、結局シュムは、状況ごとまるごとを話してみた。
二人が一通り、村の内外の点検を終えてからのことだ。その間シュムは、軽く食事を摂って軽く眠っていた。なにしろ、ハドリーといたときは気が休まらなかったので、ちょっとした気分転換と休養だ。
シュムが目覚めると夕方で、村はちょっとしたお祭が始まるところだった。
何があるわけではないが、早速調達してきた、このところ村に欠けていた調味料や甘味をふんだんに使った料理を分け合い、はしゃぐように語らい合う。
その一角で、ちゃっかり料理にありつきながら、話し終えて二人の反応を窺った。
「呪文…は、そもそも向こうでは使わないのよね? えー? あったかしら、そんなもの。ただ名前を呼び合うだけでしょう? そんなの、うっかりやっちゃわない?」
「だよねえ? でも、それだけだったと思うんだよねえ。別になにか描いて、とかもなかったし」
シュムは、甘味をつけたパンをかじりながら、もう片方の手では、具沢山のシチューを入れたカップを確保する。ミーシャも同じようなもので、キドニーは肉と野菜を刺して焼いた串を、くるくると回していた。
そうしてキドニーは、食べ終えた串を、無造作に地面に突き刺した。
「…俺の思い違いかもしれないが」
「ん? なになに?」
「誓約には本名を使うものじゃないか」
「…ああ。うん、だね」
魔物相手の契約書も、本名全てを書き込む。それは、人同士の契約書でも一応は同じだ。ただ、魔物たちのサインは、大体読み取れないのだが。
言われてみればその通りだが、それがどう続くのかわからず、シュムは首を傾げた。少し視線をずらして隣を見ると、ミーシャも不思議そうにキドニーを見つめている。
キドニーはといえば、何故かやたらにしかめっ面だ。
「昔の作法で、婚姻はただ互いの名を呼び交わすだけのものだった、と聞いた気がする」
間を置いて。
シュムとミーシャは爆笑した。周囲のにぎやかさにいくらかは紛れているが、村人たちの何人かの注意を引くくらいには、大笑いする。
「その顔、照れ隠し!?」
「怖い顔してると思ったら!」
いよいよ眉間のしわの深くなったキドニーを置いて、シュムとミーシャが笑いを収めるまでに少しかかった。
「どうしたものかな」
カイに宿題を出されてしまった。
が、調べようにも…何をどう手をつければいいものやら。ミーシャに訊いてみようにも、何を訊けばいいのかがわからない。
「名前読んだら返事して…呼ばれたから返事しようとしたら遮られて…?」
名だけや姓ではなく、全てをそれぞれに呼び合ったところが特徴だとは思うが。首を傾げつつ、結局シュムは、状況ごとまるごとを話してみた。
二人が一通り、村の内外の点検を終えてからのことだ。その間シュムは、軽く食事を摂って軽く眠っていた。なにしろ、ハドリーといたときは気が休まらなかったので、ちょっとした気分転換と休養だ。
シュムが目覚めると夕方で、村はちょっとしたお祭が始まるところだった。
何があるわけではないが、早速調達してきた、このところ村に欠けていた調味料や甘味をふんだんに使った料理を分け合い、はしゃぐように語らい合う。
その一角で、ちゃっかり料理にありつきながら、話し終えて二人の反応を窺った。
「呪文…は、そもそも向こうでは使わないのよね? えー? あったかしら、そんなもの。ただ名前を呼び合うだけでしょう? そんなの、うっかりやっちゃわない?」
「だよねえ? でも、それだけだったと思うんだよねえ。別になにか描いて、とかもなかったし」
シュムは、甘味をつけたパンをかじりながら、もう片方の手では、具沢山のシチューを入れたカップを確保する。ミーシャも同じようなもので、キドニーは肉と野菜を刺して焼いた串を、くるくると回していた。
そうしてキドニーは、食べ終えた串を、無造作に地面に突き刺した。
「…俺の思い違いかもしれないが」
「ん? なになに?」
「誓約には本名を使うものじゃないか」
「…ああ。うん、だね」
魔物相手の契約書も、本名全てを書き込む。それは、人同士の契約書でも一応は同じだ。ただ、魔物たちのサインは、大体読み取れないのだが。
言われてみればその通りだが、それがどう続くのかわからず、シュムは首を傾げた。少し視線をずらして隣を見ると、ミーシャも不思議そうにキドニーを見つめている。
キドニーはといえば、何故かやたらにしかめっ面だ。
「昔の作法で、婚姻はただ互いの名を呼び交わすだけのものだった、と聞いた気がする」
間を置いて。
シュムとミーシャは爆笑した。周囲のにぎやかさにいくらかは紛れているが、村人たちの何人かの注意を引くくらいには、大笑いする。
「その顔、照れ隠し!?」
「怖い顔してると思ったら!」
いよいよ眉間のしわの深くなったキドニーを置いて、シュムとミーシャが笑いを収めるまでに少しかかった。
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