第十一隊の日々

来条恵夢

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六章

遺産のこと 2

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 大会議室に集まったのは、二十人余りといったところだった。
 三部の部長と課長は勢揃いしているのだが、十隊の揃いが悪い。隊長と副隊長が揃っているのはリツらの第十一隊の他には第四隊くらいのものだが、隊長でさえ前線に出ることの少なくない実働部隊が半分以上を占めるとあっては、無理もない。どちらもいない隊もあったくらいだ。
 本来、隊を束ねるべき司令塔の第一隊が誰もいないのも、夕刻の緊急招集では珍しくもなく、誰も指摘すらしない。
 だが、第一部の課長らがみな顔色を失っているせいか、はじめからいつもとは違った空気も漂っていた。
「十隊の失敗で何も学ばなかったのかよ」
 永久欠番となった第十隊の隊員の受け皿として作られた第十一隊の、現隊長のリツが、いっそ恐ろしいほどに平淡に言葉を発したときには、広い会議場は静まり返っていた。
 第三部三課の課長が、酸欠の魚のようにパクパクと口を開け閉めするほか、誰もが深刻な面持ちのまま何も言えずにいる。重い役職に就く者ほどに、年長の――十数年前、第十隊の惨劇を目の当たりにした者ほど、沈黙は重い。
 リツは、そんな一同に諦めたように息を吐き、立ち上がった。半歩おいて、ソウヤが続く。
「二佐、どこへ」
「どうなるか判んねー妖異がいるんだろ、殺しに行く以外何があるってんだよ。テメエらも座ってねーで、せめて封鎖の準備くらいしたらどうだ。街にでも出たらどうするつもりだ」
「封鎖ならしてあります、ただ、あれを――」
 どん、と鈍い音がして建物が揺れた。立ったまま踏みとどまったリツは、倒れたり座り込んだりしたままの面々を見るともなく、小さく笑った。
「破られたみてーだな。フワ兄弟、アズマ隊長、封鎖頼む。部の奴らはまだ残ってるやつらの退避、終わったら外出てろ。今日の当直どこだっけ?」
「うちです。封鎖が破られたなら、術者が危ないでしょう。手当てが済み次第、封鎖に協力します」
 名乗りを上げた第四隊の隊長に笑いかけ、リツは残りの面子をざっと見渡した。第四隊の副隊長は既に通信機で指示を出し、姿がないと思った第五隊の副隊長は、すぐ隣の武器庫から色々と持ち出してきている。
 残った、不安げだったり怯えているように見える人たちは置いておくことにする。
「サガラ隊長!」
 その声は、指示を出し終えて大会議室を出た第四隊副隊長のものだった。
 出ようとしていたリツは、その副隊長の後ろに見えたものに駆け出し、続きを背で聞く。
「怪我人が――」
「ルカ?!」
「隊長」
 図体の大きな男を抱えた部下は、血の気の引いた顔をしたながも、リツを見てかすかに笑った。
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