第十一隊の日々

来条恵夢

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六章

遺産のこと 3

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 部屋の一つにアズマが潜み、階の両端にある階段を背負うように、ソウヤとアラタが立つ。そうして、三人の作る三角形の中に妖異ヨウイが入ったところで、封鎖用の結界を張ることになった。
 幸いにも封鎖結界を壊された術師たちの被害はそれほどでもなく、当直の中から一人ずつ、封鎖結界担当の三人に補助もついた。
「お前も治癒してもらったほうがいいんじゃないか?」
「大丈夫。フルヤこそ、避難しないでいいの」
「お前置いていけないだろ」
 そう言いながらも、フルヤの眼は正直に、見逃せるものか、と輝いている。子どものようなわかりやすさだ。
 ルカとフルやは、今、ソウヤの後方の階段に座り込んでいた。他には第四隊隊長のサガラがいるだけで、封鎖結界担当の六人以外には、リツが残るだけだ。他は一階へと移動している。
 本当であれば、サガラはともかくルカとフルヤも退くべきなのだが、ルカが言い張り、居残ってしまった。
 まだ、身体の中のざわめきが消えない。これがあの妖異と連動しているとしたら、滅されたときに何が起こるのかわかったものではない。大人しく治まればいいが、暴走したときのことも考えておかなければならないだろう。
 リツかソウヤに相談したかったのだが、その余裕もなかった。そして、今回の件に手を出そうとしない面々では、何かあったときに動いてくれるかどうかすら怪しい。それなら、この場に留まった方がいくらかましではないか。
 ルカとしては、せめて、ウタとフルヤには離れていてほしかったのだが、頑として肯いてはくれなかった。ルカが脂汗までにじませてしまったせいもあるだろう。
「キラ準尉。本当に辛くなったら言ってくださいね」
 先ほど手短にあいさつを交わしたサガラは、穏やかな学者然とした五十前後ほどの男性だった。その印象を裏切らないままに眼鏡ごしに覗き込まれ、申し訳なさでいっぱいになる。この人も、本当のことを言えば誰も、巻き込みたくはない。
「はい、そのときはお願いします」
 言った直後に、どくりと身の内が跳ねる。同時に、今では、腕だけなのに成人男性と変わらないほどの大きさの妖異が、壁を突き破って廊下に現れた。
 その前にはリツが立ち、アズマの潜む部屋の前まで、自分をおとりに誘導しようとする。
「危ない!」
 叫んでから、ルカはそれが自分の声だと気付き、腕の指の一本がきりのようにとがるのを見た。リツは、頭目掛けて突き出されたそれを後方に――アズマのいる部屋の方へ跳んで逃れる。
 ソウヤらが走り、いくらか妖異とリツとに近づく。リン、と、封鎖のための鈴のついた専用の武具を打ち鳴らし、三組が呼吸を合わせていく。鈴の音は音楽のように鳴り響き、やがて、ぴたりと重なった一音で終わる。
 その余韻に重ねるように、ソウヤらの声がそろって発された。
守月シュゲツ、九の式!」
 ふわりと、三人で形作った三角形の中から風が吹き、そこだけ色が劣化したようになる。リツの赤い隊服だけが鮮やかに、他はセピアの幕をかけたように色が沈む。封鎖の完了だ。
 リツは、身長よりも長い棍棒を武器に、狭い廊下にもかかわらず、舞うように腕の攻撃をけ、逆に、打ち据えたり九月の詠唱で攻撃したりする。封鎖された空間の音はこちらには聞こえないが、リツの方が優勢だろうことは見て取れた。
 だがそれよりも、ルカは、体内のうごめきと腕とか連動していることを確信した。
「サガラ中将」
「上で休みますか?」
「いえ、お聞きしたいことが、あります」
 サガラがルカが助けを求めたと考えるのも無理はなく、体の内からの勝手なうごめきのせいで、脂汗はひどくなる一方だ。フルヤが隣でおろおろとしているのも判るが、今はかまっていられない。
 サガラの、心配そうな目を見据える。
「あの妖異について、何かご存じないですか」
 迷うように揺れる目を捕らえる。
 いい人なのだろうと、こんな状況ながらルカは思った。はたから見れば異常の域に達しているだろうルカに対して、きちんと向き合ってくれている。
「何か、十隊の壊滅に、関係は、ありませんか」
「どうしてそれを」
 サガラは目を丸くし、フルヤは息を呑んだ。ルカたちの年代になれば、第十隊のことは、詳細も知らされていないただの禁忌だ。
 ややあって、サガラはふっと笑った。
「十一隊は曲者ぞろいというのは、本当だったんですね。君のような子どもまで、一人前の顔をしている。私は、卒業の年齢はもっと上げるべきだと思っているんですがね」
 ため息とともに、サガラは、ソウヤらの邪魔をしていないか確認するように様子をうかがい、ルカに視線を戻した。そこには、それまでの優しさ以上に、現場に立つときのリツのような厳しさがあった。
「今日真っ暗になったのは、複合獣実験の失敗のため。あそこにいる妖異は、十隊の遺物の培養です。私が聞いたのは、それだけですよ。どうも密かに、一部三課の一部が、十隊の後継として動いていたようです」
「ありがとうございます」
 なるほど、やはりあの腕の一部はルカの内にいる妖異と同じに違いない。覚悟していたとはいえ、それはルカに絶望に似た感覚をもたらした。
 この様子では、数年前、ルカが意識を取り戻すきっかけとなりリツが隊長となるきっかけにもなった妖異も、同じものだったのかもしれない。
「少しは学習能力ってものがないのかな」
「リツ二佐も同じことを言っていましたよ」
 ふふっとサガラが笑い、ルカは、口に出してしまっていたことに気づいて赤面した。
 ふと、袖を引っ張られてフルヤかと目を向けると、ウタだった。何事かと手を伸ばし、はっとしてウタの引く方を見る。そこには、階段よりも奥まったところに、突き当たりに接した一室がある。
 妖異は反対側の階段に近い部屋から出てきて、今も、そちらに近いところに場を作っている。だが、ルカの身体の中にいる妖異は、言われなければ気づかないほどに弱くではあるが、突き当りの部屋にも反応している。
 教えてくれたウタを撫で、肩に戻す。
 ルカは、地階の配置を思い出そうとした。はじめに妖異がいた部屋は、先日訪れた第一部一課の隣で、第一部三課の部屋だったはずだ。だがこちらの部屋は、思い出せない。
「そちらに何かありますか?」
「え。あー…そこの部屋は、何でしたか?」
 うん? と、サガラと一緒にフルヤも、突き当りの小部屋を見る。
 フルヤがここまでのことをどう思っているのかが、ルカには気になった。だが、こうやって一緒にいることが多くなれば、話していた方がいいのかもしれない。その結果離れてしまえば仕方がないし、何かあったときに、フルヤも思い切りやすいのではないか。
「物置きか何かではありませんか? プレートもかかっていないようですし…」
「開いてますよ。ビンとかフラスコとか…実験室?」
「フルヤ!」
 素早く動いて中に入りそうになっているフルヤを、慌てて追う。が、階段を降りきったところで立っていられず、膝をついてうずくまってしまう。胃のあたりで、何かが暴れまわっているかのような動きがある。
「キラ準尉!」
「ルカ!?」
 サガラとフルヤが駆け寄ってきてくれるが、内から内臓をつかみ出されるような衝撃に、ルカは声すら出せない。
 それがどのくらい続いたのか、急に引いた。あまりの呆気なさに、しばし、何が起きたのかが判らない。
「おい、ルカ!」
「あ、ああ…大丈夫、もう平気…」
「本当か? 無理してないか?」
 むしろ、揺さぶられて目が回る。そう告げるとようやく手がゆるみ、ルカにも笑う余裕が出た。
「おい、何かあったのか?!」
 離れたところから、リツの声が響く。妖異が片付いたらしい、とそれで気づき、納得もいった。元は同じだったのだろう妖異が消滅したことで、引っ張られていた代理内臓も落ち着いたようだ。
 リツも、一戦終えたばかりで他人のことを気にしているところでもないだろうに、と、ルカの口元にはつい、苦笑が浮かぶ。それが嬉しい、とも思う。
 サガラが簡潔に見たままを伝えているうちに、ルカは、フルヤの助けを断って立ち上がった。手をふって見せると、リツがほっとしたように笑い、ソウヤも笑みを浮かべた。
 よかった、と思う。
 身の内にある妖異が暴走せず、何も失わずにすんで、本当によかった。そう思ってから、まだここにいたいのだと、生きていたいのだと気づく。
 随分と、今更のことだ。
「心配をおかけしてすみません。隊長こそ、お怪我はありませんか?」
「誰に言ってんだ、大丈夫に決まってんだろ。それより、この後の会議のがゼッタイ疲れるし。ああ、お前らは早く帰れよ、明日もいつも通り仕事なんだから」
「はい。――少し、いいですか」
 リツとソウヤをそっと引っ張る。アラタが見ているのには気付いたが、そこはもうどうしようもないことだとかまわないでおく。フルヤは何かしら感じ取ってか、距離を置いてくれている。
 ルカはまだ、話すべきかどうかを決めかねていた。
 三人は階段の前で、一階に避難していた者も含め、被害の状況を調べる人たちを眺めるようにして立っていた。
「そこの部屋に、まだ妖異の一部が残っているかもしれません」
「え、どうやって?」
 ひそめたルカの声に応じて、リツも囁き声だ。消滅し損ねたものがあるとでも思ったのか、不快そうではないが、不思議そうに首をひねる。
 ルカは一度、深く息を吸った。
「さっきの妖異ですが、十隊の研究していたものを培養したと聞きました。多分それは、僕に使われているものと同じだったんです。共鳴――という言い方で正しいのかどうか判りませんが、あの妖異に反応して、僕の中の妖異も動いていました」
「お前、身体は?!」
「今はもう大丈夫です、なくなったことで落ち着いたようで。でも、そこの部屋からも、少しですが反応があるんです」
 心配のあまりか、怒るようになったリツの顔から表情が消える。へえ、と漏らされた声すら平淡だ。
 ソウヤを見れば、黙って肩をすくめる。
「ソウヤ、あそこってどこのだっけ?」
「第一部の物置き、ということになっていますね、書類上は」
「さっき中を見たフルヤは、実験室と言ってました」
「さっき? ってことは開いてるな。――ルカ、悪いけど一緒に来てくれ。どこか判るか」
「はい」
 そっと踏みった部屋は、たしかに実験室のようだった。
 壁際に並ぶ棚には、手前の方には雑多なものが詰め込んである。整理もろくにされていないだろう資料の山は、ぱらぱらとめくっただけでも脈絡がないことが見て取れる。だが、少し奥の方を見れば、紙の資料の代わりに、暗くて文字は読み取れないが、レーベルの張られたビンやフラスコが整然と並ぶ。
 奥まった中央に、手前に林立する棚に隠すようにして、大テーブルがあった。水場もある。
「ちょっとした、隠れ屋風実験室、ってトコか?」
 皮肉気な言葉は、しかし淡々と吐き出される。
 不意に、ぴぃ、と一声鳴き、ウタがガラス瓶の一つに飛んでいった。とくん、と、ルカの中の妖異が動く。
「隊長、それ――ウタの止まっているビンです」
「よし。ソウヤ、取ってくれ。俺が持つとそのまま叩きつけそうだ。もしかすると、このあたりもそうかも知れねーな。…ルカ、これは俺が絶対に処分する。判ったことは後で話すから、今日のところは帰れ」
 難しげな顔をしていたソウヤも、ルカが見ると、落ち着かせるように肯き返す。たしかに、ルカがいたところでできることがあるとも思えなかった。
「それでは――あ、ウタは、どうしましょう」
 寝床は破壊されてしまっている。
 ソウヤの手にしたビンの上に止まったままの青い小鳥は、ルカに名前を呼ばれて飛び立とうとしたが、一瞬早く、リツの手が捕らえた。
「どうせ今日は泊まりみたいなもんだろーし、俺が預かっとく。安心して、ゆっくり休め」
「はい。お先に失礼します」
 頭を下げて一足先に部屋を出ると、フルヤがアラタに捕まっていた。心なし泳いでいる目がルカを見つけると、いっそあからさまなほどに安堵の色を見せた。
「ルカ!」
「やあ、キラ君」
「――お久しぶりです、フワ少将」
「一時は同僚だったっていうのに、冷たいあいさつだなあ。リ隊長とうちの弟は? そろそろ会議再開だって呼んでるんだけど、お、出てきたね。それじゃあ、キラ君フルヤ君、また」
 アラタが、リツとソウヤとともに大会議室へと消えたのを見送って、ようやく、フルヤは大きく息をついた。
「ルカ、早く出ようぜ、とっとと帰るぞっ」
「うん。…何かあった?」
「何かってなあ、あの人、事細かに何があったのか聞いてきて、そのクセ、話聞きたいわけじゃないみたいだしっ、値踏みされてるっぽかったしっ、なあルカ、あの人の評価で兵団ヘイダンの評価も決まるってマジかな?! 総括直属とか、三隊は隠れ蓑で実は二隊の隠し玉って噂もあるんだぜ?!」
 小声で、しかし切羽詰ってまくし立てるフルヤを引っ張って、とりあえず建物の外に出る。当初出られるはずだった時刻からは、随分と経ってしまっている。
「どうする、今から食べに行く…?」
「あー…。でも食堂は…ぎりぎり無理だな。食べるものと酒と、適当に買って帰るか」
「そうだね」
「あ、スガ見なかったな。もう部屋戻ってんのかなあいつ。あいつの分も酒いると思う?」
 さっきの余韻なのか、いつもより多少饒舌なフルヤとともに、ルカは兵団本部に背を向けた。
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