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温かいものが恋しい 2004/10/29
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「これ、どうぞ」
「あら。ありがと――甘、酒?」
湯気さえ立ちそうな(実際には立っていないが)、温かい缶を手に、冴子は訝しげな視線を向けた。
寒い冬の見張りに、温かい飲み物。そこまではいい。しかし――甘酒というのは、如何なものだろうか。
しかし熊野は、そんな冴子の困惑に気付いた様子もなく、いつものようににこりと、やたらにのどかな笑みを返した。
「はい」
「…普通、無難にコーヒーじゃない?」
「そうですか?」
十人いれば、七人はそうだと、冴子は思う。
そしてコーヒーを選ばなかった二人は、コーヒー嫌いか紅茶やポタージュスープ好きで、あとの一人は、何も考えず冷たい飲み物を買ってくるのだろう。
天真爛漫な笑顔に、はあと、冴子は溜息をついた。
「君は、何を――お、お汁粉……?」
「はい。僕、甘酒って苦手なんですよね」
それなら何故、コーヒーや紅茶にしない。
突っ込む気にもなれず、冴子は、無言でまだ温かい缶を握りしめた。この際、それの中身が甘酒という点は、敢えて無視しよう。
「あら。ありがと――甘、酒?」
湯気さえ立ちそうな(実際には立っていないが)、温かい缶を手に、冴子は訝しげな視線を向けた。
寒い冬の見張りに、温かい飲み物。そこまではいい。しかし――甘酒というのは、如何なものだろうか。
しかし熊野は、そんな冴子の困惑に気付いた様子もなく、いつものようににこりと、やたらにのどかな笑みを返した。
「はい」
「…普通、無難にコーヒーじゃない?」
「そうですか?」
十人いれば、七人はそうだと、冴子は思う。
そしてコーヒーを選ばなかった二人は、コーヒー嫌いか紅茶やポタージュスープ好きで、あとの一人は、何も考えず冷たい飲み物を買ってくるのだろう。
天真爛漫な笑顔に、はあと、冴子は溜息をついた。
「君は、何を――お、お汁粉……?」
「はい。僕、甘酒って苦手なんですよね」
それなら何故、コーヒーや紅茶にしない。
突っ込む気にもなれず、冴子は、無言でまだ温かい缶を握りしめた。この際、それの中身が甘酒という点は、敢えて無視しよう。
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