雨舞い

来条恵夢

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昨日の未来

二日目

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 はじめは、そのまま入り口ででも手当をするつもりでいたが、話をする必要がある。玄関では、秋衣アキイカオルに聞こえるかも知れなかった。
 一番奥まった部屋、寝室で、タオルを敷いて羽澄ハスミを座らせると、薬箱を開けた。「薬箱」とは呼ぶものの、実際には、ある程度の手当ができるだけの器具類も入っている。

「なあ。なんで、あの嬢ちゃんが弓月ユヅルって名を知ってるんだ?」
「昔、三谷ミタニから仕事を受けただろう。そのときに、姿を見られたんじゃないか」
「じゃあ、やっぱり三谷薫って、…!」

 ぶつけた拍子に傷口に入り込んだらしいガーゼを引き剥がし、消毒液をかける。羽澄は、悶絶した。

「おまっ、わざとッ!?」
「このくらいで泣くな」

 勿論もちろんわざとなのだが、霧夜キリヤはさらりと指摘した。その上で、動くな包帯が巻けないと重ねる。

「しばらくは、大人しくしていろ。なるべく動かずにいるんだな。傷が広がりかねない」 
「そんな、折角面白そうなことになってるのに!」
「自業自得だ」
「足が滑ったのは俺のせいじゃない! いて言えば雨のせいだ!」
「日頃の行ないが悪い」

 きっぱりと断言されて、羽澄は泣き真似までして見せたが、霧夜は一向に取り合わない。ちくしょうぐれてやる、と呟くと、それ以上どうやってと、鼻で笑った。
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