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そうして、事態は発覚する
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「皓さん」
「はい。ごめん、少し外します」
いつもながらに、他人がいるときの響の態度はむず痒い。それでもそんなことは一切表に出さず、部屋を出た。
この間に五人は、何か話すのだろうか。それとも、内輪話をするのは解散した後か。とても仲良しとは言いがたい組み合わせだ。
扉を閉めてから、いまだに人前用の猫を被っている響を見上げる。
「誰から?」
「生徒会の秋山、と名乗っていました」
「秋山先輩? 電話なんて珍しい」
学校でこそ頻繁に顔をあわせ、お互いの連絡先も知っているけど、電話をもらったことはない。急ぎだろうかと、厭な予感がした。
ちなみに、響が私の位置を察知できることもあって、私は携帯端末を持っていない。学内や通学途中は別として、響が傍にいなくとも、誰かしら携帯端末を持っている人と一緒にいることが多い。
それでなくとも仕事関係は響の判断に任せているため、急ぎの連絡を取ることもなく、あまり必要を感じないのだ。
友人たちからの連絡は、あるとすればパソコンのメールか家の電話で受け取る。
おかげでSNSやネットを通じてのこまめな連絡を取り合う級友や部活仲間とは見えない隔たりがあるようだけれど、気にはならない。
「もしもし、お電話換わりまし――」
『昨日からうちの生徒が何人か消えてるのを知ってるか』
前置き抜きの発言の、その内容に目を見張る。
「美術部の森村薫さんが、昨夜の時点で帰宅していないことは聞いています。その他にも?」
『ああ。美術部で他にもう一人、写真部と新聞部が一人と、調理部が三人、生徒会からも一人』
「そんなに?」
秋山先輩の言う通りなら、少なくとも八人が行方知れずということになる。いくらなんでも、尋常ではない。
不審さが声に出たのか、秋山先輩からはいくらか不服そうな声が返った。
『今日、バレンタインの打ち合わせで集まってわかったんだ。ネット含めて騒ぎになりかけたのは一応止めたけど、どれだけもつか。そっちにも連絡が行くだろうけど、異常だ』
「何か共通点でも? 一緒に帰ったなら、揃ってどこかに拉致された疑いがありますね」
『いや、帰りはばらばらだったみたいだ。女子ばっかで、他に思い浮かぶのは、バレンタイン企画の裏方ってくらいか』
ちらりと、響を見る。
電話の本体を置いた部屋の入り口に立っているけど、秋山先輩の発言も含めて会話は全て聞こえているだろう。しかし、何の反応も示さない。
「警察には連絡しました?」
『今、各部の顧問と田中が保護者を呼んでる。親が気付いてなかったり今までにも無断外泊があったりで、森村のところ以外は、まだ届出は出してないらしい。だからまだ、本当に消えたとも限らないわけだけど――』
場を、生徒会顧問の田中先生ではなく、顔を潰さないようにしながら秋山先輩が誘導しただろうと、想像がついた。そのくらい、お手の物だろう。
「確認は、取れているんですね?」
『スマホがつながらなくって、今日の集まりに来なくて、家や友達のところにもいないって程度にはな。今の時点で警察呼んだって何もできないだろうけど、マスコミが嗅ぎつけたらやばいぜ。ネットの方で何か変なとこに飛び火しないとも限らない』
「ですね」
直接学園が叩かれることはないかも知れないが、一度ついた不信感は、そう簡単には拭えない。
実のところ、学校経営に思い入れがあるわけではない。だけど、今現在生徒として通い、気に入ってはいる。それを乱されるのは、大いに腹立たしい。
しかしだからといって、一般的にはただの生徒の私が駆けつけるのは出すぎだ。そこは、秋山先輩も理解していた。
『一年皆川聡美、香山由美、梨木茜、橋場有子、二年佐奈川瑠香、山並静、平山優奈。友達はいるか?』
「……梨木茜。クラスメイトです。確認の電話、私にもくれたってことですね?」
『生徒会室だからな』
「ありがとうございます」
友人を気遣っての行動になるようにと図ってくれた秋山先輩に感謝し、受話器を置いた。実際、茜さんが行方不明となれば、何もできなくとも気は急く。
それに、場合によっては私にも責任があるかもしれない。
理事長としてはさて置いて、悪魔と契約をしたからなのか悪魔自身がいるからか、妙なものが寄ってくることがある。この二年弱で、それまでの十年ちょっとで全く縁のなかった奇怪な出来事に、何度遭遇したことか。
純粋に人間だけが起こした厄介事も数多い。その余波が、生徒たちに及んでしまったのかもしれない。
「はい。ごめん、少し外します」
いつもながらに、他人がいるときの響の態度はむず痒い。それでもそんなことは一切表に出さず、部屋を出た。
この間に五人は、何か話すのだろうか。それとも、内輪話をするのは解散した後か。とても仲良しとは言いがたい組み合わせだ。
扉を閉めてから、いまだに人前用の猫を被っている響を見上げる。
「誰から?」
「生徒会の秋山、と名乗っていました」
「秋山先輩? 電話なんて珍しい」
学校でこそ頻繁に顔をあわせ、お互いの連絡先も知っているけど、電話をもらったことはない。急ぎだろうかと、厭な予感がした。
ちなみに、響が私の位置を察知できることもあって、私は携帯端末を持っていない。学内や通学途中は別として、響が傍にいなくとも、誰かしら携帯端末を持っている人と一緒にいることが多い。
それでなくとも仕事関係は響の判断に任せているため、急ぎの連絡を取ることもなく、あまり必要を感じないのだ。
友人たちからの連絡は、あるとすればパソコンのメールか家の電話で受け取る。
おかげでSNSやネットを通じてのこまめな連絡を取り合う級友や部活仲間とは見えない隔たりがあるようだけれど、気にはならない。
「もしもし、お電話換わりまし――」
『昨日からうちの生徒が何人か消えてるのを知ってるか』
前置き抜きの発言の、その内容に目を見張る。
「美術部の森村薫さんが、昨夜の時点で帰宅していないことは聞いています。その他にも?」
『ああ。美術部で他にもう一人、写真部と新聞部が一人と、調理部が三人、生徒会からも一人』
「そんなに?」
秋山先輩の言う通りなら、少なくとも八人が行方知れずということになる。いくらなんでも、尋常ではない。
不審さが声に出たのか、秋山先輩からはいくらか不服そうな声が返った。
『今日、バレンタインの打ち合わせで集まってわかったんだ。ネット含めて騒ぎになりかけたのは一応止めたけど、どれだけもつか。そっちにも連絡が行くだろうけど、異常だ』
「何か共通点でも? 一緒に帰ったなら、揃ってどこかに拉致された疑いがありますね」
『いや、帰りはばらばらだったみたいだ。女子ばっかで、他に思い浮かぶのは、バレンタイン企画の裏方ってくらいか』
ちらりと、響を見る。
電話の本体を置いた部屋の入り口に立っているけど、秋山先輩の発言も含めて会話は全て聞こえているだろう。しかし、何の反応も示さない。
「警察には連絡しました?」
『今、各部の顧問と田中が保護者を呼んでる。親が気付いてなかったり今までにも無断外泊があったりで、森村のところ以外は、まだ届出は出してないらしい。だからまだ、本当に消えたとも限らないわけだけど――』
場を、生徒会顧問の田中先生ではなく、顔を潰さないようにしながら秋山先輩が誘導しただろうと、想像がついた。そのくらい、お手の物だろう。
「確認は、取れているんですね?」
『スマホがつながらなくって、今日の集まりに来なくて、家や友達のところにもいないって程度にはな。今の時点で警察呼んだって何もできないだろうけど、マスコミが嗅ぎつけたらやばいぜ。ネットの方で何か変なとこに飛び火しないとも限らない』
「ですね」
直接学園が叩かれることはないかも知れないが、一度ついた不信感は、そう簡単には拭えない。
実のところ、学校経営に思い入れがあるわけではない。だけど、今現在生徒として通い、気に入ってはいる。それを乱されるのは、大いに腹立たしい。
しかしだからといって、一般的にはただの生徒の私が駆けつけるのは出すぎだ。そこは、秋山先輩も理解していた。
『一年皆川聡美、香山由美、梨木茜、橋場有子、二年佐奈川瑠香、山並静、平山優奈。友達はいるか?』
「……梨木茜。クラスメイトです。確認の電話、私にもくれたってことですね?」
『生徒会室だからな』
「ありがとうございます」
友人を気遣っての行動になるようにと図ってくれた秋山先輩に感謝し、受話器を置いた。実際、茜さんが行方不明となれば、何もできなくとも気は急く。
それに、場合によっては私にも責任があるかもしれない。
理事長としてはさて置いて、悪魔と契約をしたからなのか悪魔自身がいるからか、妙なものが寄ってくることがある。この二年弱で、それまでの十年ちょっとで全く縁のなかった奇怪な出来事に、何度遭遇したことか。
純粋に人間だけが起こした厄介事も数多い。その余波が、生徒たちに及んでしまったのかもしれない。
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