夜明けの晩

来条恵夢

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そうして、事態は発覚する

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ヒビキ。すぐに出るよ」

 頷いて車の用意に向かう響とは別れ、食堂に戻った。客の相手はもう終わりだ。
 制服に着替えた方がいいかと考えて、急いで駆けつけるならかまわないだろうと判断する。それに、部活中の格好は結構バラバラなので、私服でもあまり目立たないだろう。
 そうしてこの状態だというのに、食事が終わり、紅林クレバヤシさんが作ったのではないデザートになってからで良かった、と思った自分に気付き、苦笑いした。
 どれだけ、人でなしだろう。
 アカネさんは、親しい友人だ。あまり友人関係に深入りはしていないけれど、それでも、親しさの程度というものはある。それなのにこれかと、思う。

「ごめんなさい、急用が入ってしまって。出かけないと。戻るのがいつになるかわからないから、悪いけれど、今日はこれで。せっかくだから、ゆっくりして行ってね」

 ええっ、と声が上がったのをにこやかに無視して、響の代わりに部屋の片隅に控えてくれている初老の男性に声をかける。

ハヤシさん、お願いします」
「はい。行ってらっしゃいませ」

 生真面目な返事に頷きを返し、椅子の背にかけていたカーディガンを手に取り部屋を後にした。
 学園までは、車で行けば五分ほど。既に響が行っているだろう車庫まで、最短距離を走った。

「出して」

 あらかじめ開けられていたドアから滑り込むと同時にげたものの、言うまでもなかっただろう。なめらかに走り出した車内で、灰色の毛織のカーディガンを羽織った。
 生成りのズボンのお尻のあたりまでかかる長さだけど、コットンシャツを着ているだけだから、少し寒いかもしれない。
 そう思っていると、座っている後部座席にコートが置いてあった。通学の時に着ているものだ。

「ありがとう。あ、響はどうする? コーチがいるのも妙だし、私だけ行って来る方がいい?」
「好きにしろ」
「うーん。…とりあえず、一人で行ってくる。何かあれば、電話を借りて連絡するね」
「ああ」

 話している間に、カーディガンの上からコートを着込む。少しもこもこするけど、動きにくいほどでもない。

「校門の前で止めて。そうだ。今回の件の犯人とかみんながどこにいるかとかって、わかる?」
「…いや」
「そう。わかった、ありがとう」
「何故礼を言う」
「言いたいんだから、言ってもいいでしょ?」

 笑いかけたところで響の表情も態度も変わらないとは知っているけれど、それに付き合って、私まで無表情でいる必要もない。
 もっとも、何を言ったところで受け取っているものには報えないだろう。最終的な代償が魂だといっても、どうにも不釣合いだと思えてしまう。
 やはり滑らかに止まった車から半ば飛び降りようとすると、運転席から財布が投げ渡された。響のものだ。

「とりあえず、持っていろ」
「ありがとう」

 コートを取ってきてくれたなら一緒に私の財布も持ってこればよかったのにと、苦笑がこぼれる。勝手に触ってはいけないと思ったわけではないだろうから、忘れていたのだろう。
 兎も角、車を降りて真っ直ぐに生徒会室を目指した。目指そうとした。

「あれ?」
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