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そうして、事態は発覚する
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「あっ、待て、何をする!」
「叫びますよ? 現職の警官が女子高生に襲い掛かるなんて、ワイドショーで報道されたら厭ですね」
「ぐっ…」
激怒するかと思ったら、意外にも、顔を真っ赤にしながらも黙り込んだ。
しかし間を置いて、感情を懸命に押し殺したような低い声で、公務執行妨害、と言うのは聞こえた。
「公務なんですか? お借りします」
くすりと笑い、暗記している番号を押す。歯軋りでも始めそうな梨木刑事を見るともなく見ながら、どうにも、笑ってしまう。
こういった人物にも、紅子のままでいれば会えなかっただろう。茜さんや秋山先輩も、それは同じだ。
あのままでは、一年ももてばいい方だった。親戚たちも、順当に遺産の配分が行われさえすれば、私を親身になって養おうとはしないはずだ。
寝たきりの私は、自分では家の外に出ることすら、それどころか時によっては立ち上がることすら、起き上がることすら儘ならなかった。
ただ寝台の上で、己の背にはりつく死を、ぼんやりと待つばかりだった。
慣れない携帯端末では、コール音が鳴ったかどうかのところで相手が出た。
『用か?』
愛想のかけらもなく単刀直入すぎる声に、笑みが浮かぶ。
相手が私でなかったらどうするつもりかと言っていた時期もあるけれど、わかっているの一点張りで、今では諦めてしまった。それどころか安心感さえ覚えるのだから、慣れとは恐ろしいものだ。
「すぐに、警察に連絡を取ってくれる? 担当は高坂署で、今回の失踪事件に、梨木巡査部長と彼と相性が良さそうで有能な人物をあてるように要請して」
『ナシキ、下の名は?』
「ケンゾウ、さん。お願いね」
わかった、との返事もなく、話は終わったとばかりに通話が切られる。
慣れているから平然と携帯端末を畳んだけれど、持ち主が、恐ろしい目で凝視しているのに気付いてしまった。紅子だったら、これだけで心臓が止まっていそうだ。
しかしそんなことはおくびにも出さず、にこりと微笑む。
「そういうことです。しばらくしたら、正式に捜査要請…で、いいのかな。下りると思いますよ」
「…権力があるのは、わかった。何がしたい」
「言ったでしょう。茜さんたちが、無事に見つかること。それも、できる限り早く。望んでいるのはそれだけです。不愉快にさせたかもしれませんが、この際、個人の感情なんてどうでもいいです。よろしくお願いしますね」
一礼して、背を向けた。
声がかけられるかと思ったがそんなこともなく、そのまま何事もなく生徒会室に到着すると、さて次は先生かと溜息をつく。
「失礼します」
無難な言葉とともに引き戸を開けると、室内の人々の視線が集中した。
生徒会顧問と美術部顧問、写真部顧問に新聞部顧問、調理部顧問。教師陣はこの五人と、出張中の校長代理で教頭の合計六人。
生徒の方は、それぞれの部活や生徒会に関わる者が全員いるわけではないようで、意外に少ない。それでも、教師陣の三倍ほど。
教師の中には、迷惑や困惑、心配といった感情がそれぞれの比率で混在し、生徒も同じようなものだけれど、こちらは泣き顔も見られる。秋山先輩だけが、一瞬、うっすらと共犯めいた眼差しを寄越した。
そうやって冷静に室内の顔ぶれを観察しながら、切羽詰った表情をつくって見せた。
「叫びますよ? 現職の警官が女子高生に襲い掛かるなんて、ワイドショーで報道されたら厭ですね」
「ぐっ…」
激怒するかと思ったら、意外にも、顔を真っ赤にしながらも黙り込んだ。
しかし間を置いて、感情を懸命に押し殺したような低い声で、公務執行妨害、と言うのは聞こえた。
「公務なんですか? お借りします」
くすりと笑い、暗記している番号を押す。歯軋りでも始めそうな梨木刑事を見るともなく見ながら、どうにも、笑ってしまう。
こういった人物にも、紅子のままでいれば会えなかっただろう。茜さんや秋山先輩も、それは同じだ。
あのままでは、一年ももてばいい方だった。親戚たちも、順当に遺産の配分が行われさえすれば、私を親身になって養おうとはしないはずだ。
寝たきりの私は、自分では家の外に出ることすら、それどころか時によっては立ち上がることすら、起き上がることすら儘ならなかった。
ただ寝台の上で、己の背にはりつく死を、ぼんやりと待つばかりだった。
慣れない携帯端末では、コール音が鳴ったかどうかのところで相手が出た。
『用か?』
愛想のかけらもなく単刀直入すぎる声に、笑みが浮かぶ。
相手が私でなかったらどうするつもりかと言っていた時期もあるけれど、わかっているの一点張りで、今では諦めてしまった。それどころか安心感さえ覚えるのだから、慣れとは恐ろしいものだ。
「すぐに、警察に連絡を取ってくれる? 担当は高坂署で、今回の失踪事件に、梨木巡査部長と彼と相性が良さそうで有能な人物をあてるように要請して」
『ナシキ、下の名は?』
「ケンゾウ、さん。お願いね」
わかった、との返事もなく、話は終わったとばかりに通話が切られる。
慣れているから平然と携帯端末を畳んだけれど、持ち主が、恐ろしい目で凝視しているのに気付いてしまった。紅子だったら、これだけで心臓が止まっていそうだ。
しかしそんなことはおくびにも出さず、にこりと微笑む。
「そういうことです。しばらくしたら、正式に捜査要請…で、いいのかな。下りると思いますよ」
「…権力があるのは、わかった。何がしたい」
「言ったでしょう。茜さんたちが、無事に見つかること。それも、できる限り早く。望んでいるのはそれだけです。不愉快にさせたかもしれませんが、この際、個人の感情なんてどうでもいいです。よろしくお願いしますね」
一礼して、背を向けた。
声がかけられるかと思ったがそんなこともなく、そのまま何事もなく生徒会室に到着すると、さて次は先生かと溜息をつく。
「失礼します」
無難な言葉とともに引き戸を開けると、室内の人々の視線が集中した。
生徒会顧問と美術部顧問、写真部顧問に新聞部顧問、調理部顧問。教師陣はこの五人と、出張中の校長代理で教頭の合計六人。
生徒の方は、それぞれの部活や生徒会に関わる者が全員いるわけではないようで、意外に少ない。それでも、教師陣の三倍ほど。
教師の中には、迷惑や困惑、心配といった感情がそれぞれの比率で混在し、生徒も同じようなものだけれど、こちらは泣き顔も見られる。秋山先輩だけが、一瞬、うっすらと共犯めいた眼差しを寄越した。
そうやって冷静に室内の顔ぶれを観察しながら、切羽詰った表情をつくって見せた。
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