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そうして、事態は進む
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「その小さいのは?」
紅林さんが、四人分を一度に入れたポットの横に並ぶ、一人用の小さなティーポットを指し示す。普段、私が一人で飲むときに使っているものだ。
「紅林さんに。あ、飲むかどうか聞いてなかったけど。いる?」
「…ああ。ありがとう。優しいご主人で、感涙もんやわ」
「大げさだなあ」
すべて出来上がったところで、どう運んだものかと遅れて悩む。片手にお盆を一枚ずつで夜食と紅茶を一緒に運べないこともないけれど、そのためには少なくとも扉が全て開いている必要がある。
少し大げさになるけどワゴンを出そうかと振り向いたところで、響が姿を見せた。
「随分と掛かっているな」
「響。ごめん、今持って行こうと」
さっと、紅茶ポットとカップが載った方を取り、戻っていく。なんとなく紅林さんと目を合わせると、相手は肩をすくめて返した。
「じゃあ俺、これ飲んだら帰るわ。おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
私も残った方のお盆を手に、厨房を後にする。
「こんばんは。お待たせしてすみません、よかったらつまんでください」
二日ぶりで顔を合わせた二人は、どこか窮屈そうにソファーに収まっていた。居心地が悪そうで、銀盆を置きながら笑いかける。紅茶は響が、それぞれの前にカップを置いて注ぎ入れていた。
兄貴分の方は、緊張を隠そうとしてか裏を疑っているのか、睨みつけるような視線を向けてきた。弟分は戸惑いながらも、サンドウィッチとディップに気を取られているようだ。
対面のソファーに座り、響はその後ろに控えるようにして立つ。座るように促してようやく、隣に腰を落とした。
「社長さん、手術を受けられるそうですね」
「…お前が手を回したのか」
「早くに見つかって良かったですね」
怪我の功名とはこのことだろう。二人が勤めていた立原ねじの社長は、過労で倒れて入院し、おかげで胃癌が対処できるうちに発見された。
入院費用の立て替えは私が頼んだものだしお詫びも兼ねて人間ドックの手配はしたけれど、運が良かったとしか言いようがない。
「品質に関しては、変化していなかったことが確認されました。あなた方の言われた通りに、言いがかりをつけて取引を断とうとした可能性が高いと思います。申し訳ありません」
「で、でもっ、あんたが直接やらせたわけじゃないんだろっ?」
弟分が、食べていたサンドウィッチを急いで飲み込んで言い立てる。意外な援護射撃に、少し和んだ。兄貴分は、諦めたように溜息をつく。
「ありがとうございます」
目を見て言う。本心だ。
「あなた方を追い込んで私を誘拐させるために指示したとまでは考えにくいですが、状況を知って便乗しようとした可能性はあります。そうであれば、私とあなた方の敵は同じかもしれません。羽山成内での調査も続けますが、そちらからの情報を合わせればより早くたどり着けます」
「もういい、わかった。協力しろって言うんだろ。そのために来たんだ、無駄な前置きはいい」
「よろしくお願いします」
長い夜になりそうだと、思った。
紅林さんが、四人分を一度に入れたポットの横に並ぶ、一人用の小さなティーポットを指し示す。普段、私が一人で飲むときに使っているものだ。
「紅林さんに。あ、飲むかどうか聞いてなかったけど。いる?」
「…ああ。ありがとう。優しいご主人で、感涙もんやわ」
「大げさだなあ」
すべて出来上がったところで、どう運んだものかと遅れて悩む。片手にお盆を一枚ずつで夜食と紅茶を一緒に運べないこともないけれど、そのためには少なくとも扉が全て開いている必要がある。
少し大げさになるけどワゴンを出そうかと振り向いたところで、響が姿を見せた。
「随分と掛かっているな」
「響。ごめん、今持って行こうと」
さっと、紅茶ポットとカップが載った方を取り、戻っていく。なんとなく紅林さんと目を合わせると、相手は肩をすくめて返した。
「じゃあ俺、これ飲んだら帰るわ。おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
私も残った方のお盆を手に、厨房を後にする。
「こんばんは。お待たせしてすみません、よかったらつまんでください」
二日ぶりで顔を合わせた二人は、どこか窮屈そうにソファーに収まっていた。居心地が悪そうで、銀盆を置きながら笑いかける。紅茶は響が、それぞれの前にカップを置いて注ぎ入れていた。
兄貴分の方は、緊張を隠そうとしてか裏を疑っているのか、睨みつけるような視線を向けてきた。弟分は戸惑いながらも、サンドウィッチとディップに気を取られているようだ。
対面のソファーに座り、響はその後ろに控えるようにして立つ。座るように促してようやく、隣に腰を落とした。
「社長さん、手術を受けられるそうですね」
「…お前が手を回したのか」
「早くに見つかって良かったですね」
怪我の功名とはこのことだろう。二人が勤めていた立原ねじの社長は、過労で倒れて入院し、おかげで胃癌が対処できるうちに発見された。
入院費用の立て替えは私が頼んだものだしお詫びも兼ねて人間ドックの手配はしたけれど、運が良かったとしか言いようがない。
「品質に関しては、変化していなかったことが確認されました。あなた方の言われた通りに、言いがかりをつけて取引を断とうとした可能性が高いと思います。申し訳ありません」
「で、でもっ、あんたが直接やらせたわけじゃないんだろっ?」
弟分が、食べていたサンドウィッチを急いで飲み込んで言い立てる。意外な援護射撃に、少し和んだ。兄貴分は、諦めたように溜息をつく。
「ありがとうございます」
目を見て言う。本心だ。
「あなた方を追い込んで私を誘拐させるために指示したとまでは考えにくいですが、状況を知って便乗しようとした可能性はあります。そうであれば、私とあなた方の敵は同じかもしれません。羽山成内での調査も続けますが、そちらからの情報を合わせればより早くたどり着けます」
「もういい、わかった。協力しろって言うんだろ。そのために来たんだ、無駄な前置きはいい」
「よろしくお願いします」
長い夜になりそうだと、思った。
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