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森編
四話.瞑想
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あれから朝日が上るくらいの時間が経った。
正座していた僕は立ち上がると、大きく身体を伸ばす。
「瞑想は本当に凄いな……」
結局聴覚の修練は一旦保留にして、朝まで瞑想をする事にしていた。
瞑想は凄い。おかげで傷の治りがとても早いのだ。相変わらず右脚は青黒く変色してはいるが、今では少し痛む程度の痛みで済んでいる。
それに不思議と筋肉も付いたように感じる。
特に筋トレはしていないので、恐らくゴブリンから逃げていた時の分が筋肉に変わったんだろう。
おかげで何となく分かった。
今の僕には圧倒的に身体の造りが足りていない。視力や聴覚はもちろんだが、基礎的な体力の部分、そしてそれらを補助する集中力が僕には足りない。
その基盤を整える為にも、まずは瞑想が必要になってくる。
瞑想は精神、集中力を鍛えるものだが、どうやら身体を整える、つまり治癒効果もあるようだ。これを上手く使えば筋肉の付きも通常より圧倒的に速いはずだ。
ただもう一つ課題がある。
それは、まだまだ瞑想が身体に染み付いていない──つまり僕の身体が『私』の瞑想に追いついていない事だ。
昨日初めて瞑想をした時に夜まで掛かってしまったのも、無意識に集中力を『私』に追いつかせようとした結果だろう。
『私』にとっては一瞬の瞑想だとしても、僕にはその一瞬の瞑想ですら夜まで掛かってしまう。それほどまでに『私』の集中力は研ぎ澄まされていた。
もしこれが本当なら今覚えていたのが瞑想だけで良かったかもしれない。瞑想でこれなのだから、下手に他の技を使ったりしたら僕の身体は耐えられなかったかもしれない。
「ふぅ……」
僕は軽く息を吐いた。
とりあえず考えることは一旦やめよう。
それよりも今の問題に目を向けるべきだ。
「お腹が空いた……」
今さら気づいたかのようにお腹が寂しそうに鳴いた。
何日ご飯を食べていないか分からない。身体の状態からして意識を失っていた時間が二、三日ということはないと思うが、それでもご飯を食べなければ飢え死にしてしまうことには変わりない。
こうなることならせめてお菓子くらい持って家出するんだったと、今さらながら後悔する。見渡す限り木しかないこの環境で安全に腹を満たせるものはそうそう見つからないだろう。
いや、まぁ一応食べれそうなものはあるにはあるんだけど……。
僕の視線の先には、木の根に寄生しているキノコ達が写っていた。一つ一つは小さいが、数がある為一時しのぎには出来るだろう。
でも食べていいのかわからないキノコなんて食べられたもんじゃない。それで毒に当たって死んでしまうとかなれば笑えないし……。
「うん、うまい」
そんなことも言ってられないのでそこらに生えている小さなキノコを貪る。土や木くずでジャリジャリしていて気持ち悪いが、こればかりは仕方ない。
このままじゃどうせ腹ペコで死ぬんだ。
そんな精神で僕はキノコを食べ進める。
一応明らかに毒がありそうな見た目をしている見た目パッと派手なキノコは避けて、なるべく地味そうなキノコを選んではいる──が、たぶん気休め程度だろう。
「まだお腹は空いてるけど……仕方ないか」
小さなキノコを十個ほど摘んだところで、一旦食べるのをやめる。
「飲み水も探さないと」
この森の中にあるのかは分からない。もしかしたら川も池も無いかもしれない。
それでも探すしかない。食料は最悪何とでもなる。でも水は違う。奇跡的に雨でも降ればいいけど、そんな都合のいいことは起きるはずがないと考える方が良い。
僕は近くに落ちていた手頃な折れた木の枝を拾い上げた。余分な枝を折ると、僕は試しに何回か振ってみる。
「ちょっと軽いけど、無いよりはマシかな」
僕は心を決め、最初の一歩を踏み出した。
歩き回れば魔物──それこそ僕が死にかける原因にもなったゴブリンにも出会う可能性がある。
でもそこに、不思議と恐怖は無かった。
正座していた僕は立ち上がると、大きく身体を伸ばす。
「瞑想は本当に凄いな……」
結局聴覚の修練は一旦保留にして、朝まで瞑想をする事にしていた。
瞑想は凄い。おかげで傷の治りがとても早いのだ。相変わらず右脚は青黒く変色してはいるが、今では少し痛む程度の痛みで済んでいる。
それに不思議と筋肉も付いたように感じる。
特に筋トレはしていないので、恐らくゴブリンから逃げていた時の分が筋肉に変わったんだろう。
おかげで何となく分かった。
今の僕には圧倒的に身体の造りが足りていない。視力や聴覚はもちろんだが、基礎的な体力の部分、そしてそれらを補助する集中力が僕には足りない。
その基盤を整える為にも、まずは瞑想が必要になってくる。
瞑想は精神、集中力を鍛えるものだが、どうやら身体を整える、つまり治癒効果もあるようだ。これを上手く使えば筋肉の付きも通常より圧倒的に速いはずだ。
ただもう一つ課題がある。
それは、まだまだ瞑想が身体に染み付いていない──つまり僕の身体が『私』の瞑想に追いついていない事だ。
昨日初めて瞑想をした時に夜まで掛かってしまったのも、無意識に集中力を『私』に追いつかせようとした結果だろう。
『私』にとっては一瞬の瞑想だとしても、僕にはその一瞬の瞑想ですら夜まで掛かってしまう。それほどまでに『私』の集中力は研ぎ澄まされていた。
もしこれが本当なら今覚えていたのが瞑想だけで良かったかもしれない。瞑想でこれなのだから、下手に他の技を使ったりしたら僕の身体は耐えられなかったかもしれない。
「ふぅ……」
僕は軽く息を吐いた。
とりあえず考えることは一旦やめよう。
それよりも今の問題に目を向けるべきだ。
「お腹が空いた……」
今さら気づいたかのようにお腹が寂しそうに鳴いた。
何日ご飯を食べていないか分からない。身体の状態からして意識を失っていた時間が二、三日ということはないと思うが、それでもご飯を食べなければ飢え死にしてしまうことには変わりない。
こうなることならせめてお菓子くらい持って家出するんだったと、今さらながら後悔する。見渡す限り木しかないこの環境で安全に腹を満たせるものはそうそう見つからないだろう。
いや、まぁ一応食べれそうなものはあるにはあるんだけど……。
僕の視線の先には、木の根に寄生しているキノコ達が写っていた。一つ一つは小さいが、数がある為一時しのぎには出来るだろう。
でも食べていいのかわからないキノコなんて食べられたもんじゃない。それで毒に当たって死んでしまうとかなれば笑えないし……。
「うん、うまい」
そんなことも言ってられないのでそこらに生えている小さなキノコを貪る。土や木くずでジャリジャリしていて気持ち悪いが、こればかりは仕方ない。
このままじゃどうせ腹ペコで死ぬんだ。
そんな精神で僕はキノコを食べ進める。
一応明らかに毒がありそうな見た目をしている見た目パッと派手なキノコは避けて、なるべく地味そうなキノコを選んではいる──が、たぶん気休め程度だろう。
「まだお腹は空いてるけど……仕方ないか」
小さなキノコを十個ほど摘んだところで、一旦食べるのをやめる。
「飲み水も探さないと」
この森の中にあるのかは分からない。もしかしたら川も池も無いかもしれない。
それでも探すしかない。食料は最悪何とでもなる。でも水は違う。奇跡的に雨でも降ればいいけど、そんな都合のいいことは起きるはずがないと考える方が良い。
僕は近くに落ちていた手頃な折れた木の枝を拾い上げた。余分な枝を折ると、僕は試しに何回か振ってみる。
「ちょっと軽いけど、無いよりはマシかな」
僕は心を決め、最初の一歩を踏み出した。
歩き回れば魔物──それこそ僕が死にかける原因にもなったゴブリンにも出会う可能性がある。
でもそこに、不思議と恐怖は無かった。
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