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Episode01「かみさま」
05◇君を作り替える
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◇◇◇
どれくらい時間が経ったのだろうか……。
気が付くと、窓の外が暗くなっていた。
少年の膝の上で眠っていたようだ。
私がもぞもぞ動き出したのに気が付いて、彼も私の顔を見て微笑む。
なんだかその顔を見るだけで嬉しくなって頬が緩んでしまう。
(あれ、なんで私……。この人に会ってまだ数日しか経っていないのに……?)
でも今はどうだっていいような気分だった。
そんな私の心情を察しているかのように、彼は私を抱きしめて背中をぽんぽんと叩いてくれる。
(温かい……。すごく気持ちが良い。ずっとこうしていたい…… この腕の中は、まるで天国だ…………)
ふわぁ~とあくびが出て来て、私はそれに驚いた。一体いつから私は寝てしまっていたのだろう。
「寝る…。……あっ!そうだ!」
少年にずっと尋ねたかったことをおもいだすとバッと顔を上げる。
すると、唇が触れ合いそうな距離に彼の顔が現れて私は思わず硬直してしまう。
しかし、彼は相変わらず穏やかな微笑みを浮かべて「ん?」と首をかしげる。
それが余計に私を火照らせる。
はずかしくなって、そろそろと俯くと私は言葉をつづけた。
「あ、あの…私…どうして眠れているんでしょうか? 薬…はもう飲んでいないし投与もされていないけど、それならそれで激痛で眠れないはず…なんですけど…」
すると、彼は「あぁ」となにか納得するようにうなずくとまるで猫をめでるかのように私の顎下を優しくなでる。
「言っただろう? 作り替えていると。 君は今、徐々に人ではなくなっているんだ」
「……え?」
どういうことなのか、意味がわからず呆然とする。
(私が……人で、なくなってる……?)
「……君をここに連れてきたのは他でもない… 君が人のまま、苦しまないように俺の力で君の内側を少しずつ人でなくす為。でも、これは君を人じゃなくする行為だ。人をやめさせて、人の世界で生きられないようにすること」
つまり、人としての君を殺すこと…と耳元で囁くと私はびくりと痙攣した後、動けなくなる。
(この人が、私を…救ってくれていたの? …きっと私はあのままじゃ、人らしく死ねなくて、だから、だから…だから…)
だから、死にたかった……。死にたいと思うようになったんだ。
それに、私には帰る場所がなかった。誰も待っていなかったから。
「ねえ、君は…人として死ぬのと、人として死に人ならざるものとして生きるのならどちらを望む?」
本当に君は死にたいの?と囁くとすっと人差し指で私の唇をなでる。
(……ちがう、ちがう、ちがうの。死にたかったわけじゃない。本当は生きたかった。でも…あんな日々は、とても生きているとは思えなかったから…だったら死んだ方がマシだと思ったんだ)
「君さえ良ければこのままずっと俺と一緒に暮らすという手もあるよ?」
少年はそう提案する。私は、まるで時が止まったかのような感覚を味わった。
「一緒…? 私と…?」
そう聞くと少年は少し寂しげな顔をしたけれどすぐに「ああ、君が望むのならね?」といつものように笑う。
少年のその笑顔に私は何か胸の中に熱いものがこみあげてくるのを感じると涙があふれた。
この人はどこまで優しいのか、私はそのことがうれしくてたまらなかった。
「一緒に、いたいです…… あなたの…傍に居たい……」
どれくらい時間が経ったのだろうか……。
気が付くと、窓の外が暗くなっていた。
少年の膝の上で眠っていたようだ。
私がもぞもぞ動き出したのに気が付いて、彼も私の顔を見て微笑む。
なんだかその顔を見るだけで嬉しくなって頬が緩んでしまう。
(あれ、なんで私……。この人に会ってまだ数日しか経っていないのに……?)
でも今はどうだっていいような気分だった。
そんな私の心情を察しているかのように、彼は私を抱きしめて背中をぽんぽんと叩いてくれる。
(温かい……。すごく気持ちが良い。ずっとこうしていたい…… この腕の中は、まるで天国だ…………)
ふわぁ~とあくびが出て来て、私はそれに驚いた。一体いつから私は寝てしまっていたのだろう。
「寝る…。……あっ!そうだ!」
少年にずっと尋ねたかったことをおもいだすとバッと顔を上げる。
すると、唇が触れ合いそうな距離に彼の顔が現れて私は思わず硬直してしまう。
しかし、彼は相変わらず穏やかな微笑みを浮かべて「ん?」と首をかしげる。
それが余計に私を火照らせる。
はずかしくなって、そろそろと俯くと私は言葉をつづけた。
「あ、あの…私…どうして眠れているんでしょうか? 薬…はもう飲んでいないし投与もされていないけど、それならそれで激痛で眠れないはず…なんですけど…」
すると、彼は「あぁ」となにか納得するようにうなずくとまるで猫をめでるかのように私の顎下を優しくなでる。
「言っただろう? 作り替えていると。 君は今、徐々に人ではなくなっているんだ」
「……え?」
どういうことなのか、意味がわからず呆然とする。
(私が……人で、なくなってる……?)
「……君をここに連れてきたのは他でもない… 君が人のまま、苦しまないように俺の力で君の内側を少しずつ人でなくす為。でも、これは君を人じゃなくする行為だ。人をやめさせて、人の世界で生きられないようにすること」
つまり、人としての君を殺すこと…と耳元で囁くと私はびくりと痙攣した後、動けなくなる。
(この人が、私を…救ってくれていたの? …きっと私はあのままじゃ、人らしく死ねなくて、だから、だから…だから…)
だから、死にたかった……。死にたいと思うようになったんだ。
それに、私には帰る場所がなかった。誰も待っていなかったから。
「ねえ、君は…人として死ぬのと、人として死に人ならざるものとして生きるのならどちらを望む?」
本当に君は死にたいの?と囁くとすっと人差し指で私の唇をなでる。
(……ちがう、ちがう、ちがうの。死にたかったわけじゃない。本当は生きたかった。でも…あんな日々は、とても生きているとは思えなかったから…だったら死んだ方がマシだと思ったんだ)
「君さえ良ければこのままずっと俺と一緒に暮らすという手もあるよ?」
少年はそう提案する。私は、まるで時が止まったかのような感覚を味わった。
「一緒…? 私と…?」
そう聞くと少年は少し寂しげな顔をしたけれどすぐに「ああ、君が望むのならね?」といつものように笑う。
少年のその笑顔に私は何か胸の中に熱いものがこみあげてくるのを感じると涙があふれた。
この人はどこまで優しいのか、私はそのことがうれしくてたまらなかった。
「一緒に、いたいです…… あなたの…傍に居たい……」
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