剣闘大会

tabuchimidori

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1戦目

エレアとヒリューとセキヤ:前編

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「レディ……ファイト!」
 カァンと甲高いベルの音が鳴り、すぐに剣士たちの雄叫びでかき消される。
 正方形の石畳のフィールド上で数十名の剣士たちがそれぞれの技を披露して競いあう。四年に一度の剣闘大会、その幕開けの戦いということで年齢も性別も体格も何もかもが違う剣士たちが揃っていた。
 その中にいる、長い黒髪を後ろで一つにまとめている女性剣士、エレア・ラスティアは軽快な動きで多数の剣士たちを翻弄していた。
 ――うん、これならいけそうね。
 フィールド上を縦横無尽に動き回る彼女は、他の参加者たちの実力を推し量っていた。彼女のアクロバティックな動きに参加者たちが戸惑っているのを見て、彼女は攻めに転ずる。
 フィールドの端に近い大柄な剣士が攻撃を仕掛けてきたので、彼女はその振り下ろされた大剣を躱しつつその大木の様な太い腕から駆け上がりそのままの勢いで相手の顔に膝蹴りを食らわせてからフィールドから蹴り落とす。
 フィールドに戻ってきた彼女を狙ってきた剣士には先に剣で牽制し、着地後にすぐ剣士の足を払って胴を薙ぎ払う。クリティカル判定が出て剣士の身体はすぐにフィールド外へと飛ばされる。
 彼女が立体的な立ち回りでフィールド内を駆け巡ると、数分後には彼女以外に誰もいなくなった。
「勝負あり、それまでです!」
 その戦いを見ていた観客たちから歓声が湧き上がり、エレアは少し照れながらも剣を掲げて歓声に応える。

「相変わらず良い動きだな」
 エレアに賞品である剣を渡した男が声をかける。エレアはその剣の様子をじっくり確かめつつその声掛けに応える。
「クガさんに鍛えてもらいましたからね。まあ厄介な人がいなかったからという運もありますけどね」
「それでも上出来すぎるくらいだ。ほとんどの剣士に魔法を使わせることすらしなかったじゃないか」
「それが私の理想的な戦いですから」
 エレアは剣の出来と試合の自分の動きの出来に改めて満足して笑顔を見せる。その二人のすぐ横にいた女性がマイクを使って再び大きな声で戦いの始まりを告げる。
「それでは二本目の戦いに移りますよー。参加者はフィールド上へお願いします」
 さっきとは違う剣士たちがまたぞろぞろとフィールド上に集まってくる。エレアはそれを見ながらクガに話しかける。
「ヒリューが出ますよ。それにセキヤも来てますよ」
「君がいるんだから二人がいるのもわかっていたさ」
 フィールドに集まった剣士たちの中で少し小柄な、少年と形容するのがしっくりくる彼に二人は注目していた。ツンツンと尖った赤い髪が特徴的な少年だった。

「それでは二本目、レディ……、ファイト!」
 カァンという甲高い音がある剣士の雄叫びでかき消される。ヒリュー・トウゴウは雄叫びを上げながら、剣を自身の五倍以上に大きくする。そしてそれをそのまま振り回す。フィールド上にいた剣士たちは成す術もなく激流に流されるかのようにフィールドから追い出されてしまった。試合時間わずか三秒だった。
「そ……、それまでです!」
 そのあまりにも早すぎる決着に、実況の女性の試合終了を告げるまでに若干の間が生まれた。先ほどのエレアの時のような観客たちの歓声は疎らだった。それほどまでに呆気ない戦いだった。

「『大』と『力』の魔力だな。シンプルでお前らしいな」
 クガはヒリューにも同じように声をかける。ヒリューは剣を受け取りながら元気いっぱいに応える。
「あざっす!」
 実況のマイクにもその声が拾われて辺り一帯にその声が鳴り響く。会場の喧騒はその声で少しの間かき消された。
「エレア、俺も勝ったぞ!」
 ヒリューはクガと同じ場所で待っていたエレアに勝利の報告をする。エレアはおめでとうと笑顔で返す。ただしそのすぐ後に両手でもっと声のボリュームを下げてと懇願していた。
「あとはセキヤだけか」
 実況の女性が三本目の試合を促している時に三人で話し始める。
「うーん、私もヒリューも対戦相手に恵まれてたからなー」
「セキヤって、こういう時に運がない奴だよな」
「……」「……」
 三人ともセキヤの不運な、洗濯物を干していたらピンポイントで自分の物にだけ鳥の糞がついていたり、欲しい物を買いに行ったら売り切れていたり、本来なら脅威ではない魔物の強力な変移種に出くわしたりといった、出来事を思い返していた。
「あ、あいつって……」
「クガさん、あの人って……」
「あー! セキヤの奴良いなぁー。俺もあの人と戦いたかった……」
 そして三人の予想は的中する。セキヤが戦うフィールド上には、前々大会優勝者のゴウ・クニノミヤがいのだ。
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