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1戦目
エレアとヒリューとセキヤ:中編
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「さあさあ皆さん、これは見逃せませんよ! 前々大会優勝者のゴウさんが登場しました!」
実況のテンションの上がった声に反応するかのように観客から歓声が沸き起こる。第一回剣闘大会において驚異的なスピードとパワーを見せつけた、世界的に見ても最強の部類に入る剣士、ゴウ・クニノミヤの姿がフィールド上にあったからだ。剣闘大会のルールで前回大会の優勝者は次回の大会に参加できないようになっている。だからゴウの戦いを見るのは観客も久しぶりなのである。彼の強さとその認知度を示すかのようにフィールドに集まった剣士の数名はすぐにそこから降りていく。ゴウがいるんじゃ勝てるわけがないと諦めたのだ。
エレアの一本目、ヒリューの二本目と比べてもフィールドにいる剣士の数は少なくなっていた。それほどまでにゴウの強さは誰もが知っているのである。
だからこそ、今フィールドに立っている者はこれをチャンスと考えている。
剣闘大会には三つの大会が存在する。鍛冶屋杯、予選、最終大会の三つである。最終大会は予選で勝ち上がってきた十六名による一発勝負のトーナメントである。予選はその最終大会が開かれるまでに十六回行われて、その予選の優勝者が最終大会に参加できるのである。どちらも一対一の対戦形式で行われる。
しかし今エレアたちが参加している大会は鍛冶屋杯といって、より強力な剣を手に入れるための大会なのである。この大会では一度に十本単位で剣が賞品として手に入るが、一人一つまでの制限がある。ルールはすでに見た様に、フィールド内で最後の一人になるまで戦い続けるサドンデス形式である。
つまりこの鍛冶屋杯だけは、ゴウと多人数で強力して立ち向かえるのである。そしてセキヤを除く十数名は、すでにゴウを協力して倒すという体制でこの戦いに臨んでいる。だからフィールドを降りて行った連中を呼び止めて一緒に戦おうと呼びかけている。その呼びかけはセキヤにも当然向けられた。
「おい兄ちゃん、わかってるよな?」
ヤンキー然とした強面の男がセキヤに話しかける。身長差もあってヤンキー風の男がセキヤに覆いかぶさっているような態勢になる。
セキヤはそんな男を見上げて言い放つ。
「お前こそ、僕の邪魔はするなよ」
「あぁ?」
セキヤの発言の意図がわからず男は詰め寄ろうとしたが、実況の声に踏みとどまる。
「もうそこまでです! いい加減試合を始めますので全員構えてください!」
フィールドから降りたり、呼び止められて戻ったりする参加者の動きに我慢しきれなくなった実況が声を張り上げてその動きを止める。
男はセキヤに構ってられないと判断してゴウのいる方へと態勢を変えて剣を抜く。
三十名近い剣士たちに囲まれている状態のゴウも剣を抜いて構えを作る。右手に剣を持ち膝を曲げて、上半身が地面にくっつくのではないかというくらいに低い姿勢を作る。その独特な構えはほとんどの人の記憶に刻まれていて、本当にあのゴウが帰ってきたんだなと観客は沸き立つ。
――以前と構え方は変わらないんだな。
前回大会優勝者のクガはライバルの姿に懐かしさを覚え、そしてフィールドにいるセキヤは戦い方も同じであることを祈っていた。
「レディ……、ファイト!」
それは普通の人からすれば同時だった。
実況の試合開始の合図と、フィールド上にいる剣士のほとんどが吹き飛ばされているのが。
何も知らない人からすれば実況の声にびっくりして剣士たちが飛びあがったのではないかと思うほどのタイミングだった。
二戦連続で試合が速攻で終わったのではと誰もが思っていた。しかしフィールド上にはゴウとセキヤの二人が立っていた。それに気付いたのは吹き飛ばされた剣士たちが地面に叩き付けられてからだった。
「一瞬です! 果たしてどちらがやったのかと言いたいところですが、この早業はやはりゴウ選手でしょう!」
多分こうなるだろうと思ってましたけど全然見えませんでしたと実況がようやく自分の仕事がやってきたと声早に状況を説明する。
「しかし驚きです! まさかあのゴウ選手の初手を躱すとは、あのロープを着た青年は一体誰なんでしょうか?」
実況と同じく観客も最初はゴウが相変わらずの強さを見せつけたと思っていた。しかしそれを冷静に考えると、そのゴウの攻撃に耐えた、フィールドに残っているもう一人の剣士に注目が集まり始める。一体どうやってあの攻撃を躱したのか。理屈は分からなくてもゴウの攻撃を耐えたというだけで、観客たちは期待の新星が現れたのではと徐々に思い始める。
勝負ごとにおいて、人間というのはえてして弱いとされる方を応援しがちである。番狂わせを見てみたいというちょっとした願望が芽生えるのである。この戦いがどう決着しても、あの剣士は今後の剣闘大会でも優秀な成績を残すかもと誰もが思い始めていた。
実況のテンションの上がった声に反応するかのように観客から歓声が沸き起こる。第一回剣闘大会において驚異的なスピードとパワーを見せつけた、世界的に見ても最強の部類に入る剣士、ゴウ・クニノミヤの姿がフィールド上にあったからだ。剣闘大会のルールで前回大会の優勝者は次回の大会に参加できないようになっている。だからゴウの戦いを見るのは観客も久しぶりなのである。彼の強さとその認知度を示すかのようにフィールドに集まった剣士の数名はすぐにそこから降りていく。ゴウがいるんじゃ勝てるわけがないと諦めたのだ。
エレアの一本目、ヒリューの二本目と比べてもフィールドにいる剣士の数は少なくなっていた。それほどまでにゴウの強さは誰もが知っているのである。
だからこそ、今フィールドに立っている者はこれをチャンスと考えている。
剣闘大会には三つの大会が存在する。鍛冶屋杯、予選、最終大会の三つである。最終大会は予選で勝ち上がってきた十六名による一発勝負のトーナメントである。予選はその最終大会が開かれるまでに十六回行われて、その予選の優勝者が最終大会に参加できるのである。どちらも一対一の対戦形式で行われる。
しかし今エレアたちが参加している大会は鍛冶屋杯といって、より強力な剣を手に入れるための大会なのである。この大会では一度に十本単位で剣が賞品として手に入るが、一人一つまでの制限がある。ルールはすでに見た様に、フィールド内で最後の一人になるまで戦い続けるサドンデス形式である。
つまりこの鍛冶屋杯だけは、ゴウと多人数で強力して立ち向かえるのである。そしてセキヤを除く十数名は、すでにゴウを協力して倒すという体制でこの戦いに臨んでいる。だからフィールドを降りて行った連中を呼び止めて一緒に戦おうと呼びかけている。その呼びかけはセキヤにも当然向けられた。
「おい兄ちゃん、わかってるよな?」
ヤンキー然とした強面の男がセキヤに話しかける。身長差もあってヤンキー風の男がセキヤに覆いかぶさっているような態勢になる。
セキヤはそんな男を見上げて言い放つ。
「お前こそ、僕の邪魔はするなよ」
「あぁ?」
セキヤの発言の意図がわからず男は詰め寄ろうとしたが、実況の声に踏みとどまる。
「もうそこまでです! いい加減試合を始めますので全員構えてください!」
フィールドから降りたり、呼び止められて戻ったりする参加者の動きに我慢しきれなくなった実況が声を張り上げてその動きを止める。
男はセキヤに構ってられないと判断してゴウのいる方へと態勢を変えて剣を抜く。
三十名近い剣士たちに囲まれている状態のゴウも剣を抜いて構えを作る。右手に剣を持ち膝を曲げて、上半身が地面にくっつくのではないかというくらいに低い姿勢を作る。その独特な構えはほとんどの人の記憶に刻まれていて、本当にあのゴウが帰ってきたんだなと観客は沸き立つ。
――以前と構え方は変わらないんだな。
前回大会優勝者のクガはライバルの姿に懐かしさを覚え、そしてフィールドにいるセキヤは戦い方も同じであることを祈っていた。
「レディ……、ファイト!」
それは普通の人からすれば同時だった。
実況の試合開始の合図と、フィールド上にいる剣士のほとんどが吹き飛ばされているのが。
何も知らない人からすれば実況の声にびっくりして剣士たちが飛びあがったのではないかと思うほどのタイミングだった。
二戦連続で試合が速攻で終わったのではと誰もが思っていた。しかしフィールド上にはゴウとセキヤの二人が立っていた。それに気付いたのは吹き飛ばされた剣士たちが地面に叩き付けられてからだった。
「一瞬です! 果たしてどちらがやったのかと言いたいところですが、この早業はやはりゴウ選手でしょう!」
多分こうなるだろうと思ってましたけど全然見えませんでしたと実況がようやく自分の仕事がやってきたと声早に状況を説明する。
「しかし驚きです! まさかあのゴウ選手の初手を躱すとは、あのロープを着た青年は一体誰なんでしょうか?」
実況と同じく観客も最初はゴウが相変わらずの強さを見せつけたと思っていた。しかしそれを冷静に考えると、そのゴウの攻撃に耐えた、フィールドに残っているもう一人の剣士に注目が集まり始める。一体どうやってあの攻撃を躱したのか。理屈は分からなくてもゴウの攻撃を耐えたというだけで、観客たちは期待の新星が現れたのではと徐々に思い始める。
勝負ごとにおいて、人間というのはえてして弱いとされる方を応援しがちである。番狂わせを見てみたいというちょっとした願望が芽生えるのである。この戦いがどう決着しても、あの剣士は今後の剣闘大会でも優秀な成績を残すかもと誰もが思い始めていた。
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