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スクリーム
旅行の参加者は、引率のオーナーを含めて六人になった。
女子のバイトは三人いるが、二人は日程が合わず不参加で、もう一人も女子一人だけではちょっと……ということで、男だけでオーナーのミニバンに乗り込んだ。
過去に殺人事件と水難事故があった、水晶のように美しい湖。長きにわたって閉鎖されていた場所に集まる若者集団。正しく、俺が等身大フィギュアを飾るくらい大好きな映画と同じ展開だった。
映画のようなことが起こるわけはないとわかってはいても、スラッシャーの代名詞ともいえる映画と同じような場所に、若者たちのキャンプという同じようなシチュエーションで行けるチャンスに、気持ちが昂って落ち着かない。
高速を下りると、徐々に景色が単調になっていく。湖に近づくほど緑が濃くなり、キャンプ場の入り口を抜ける頃には、鬱蒼と茂る樹々で暗く感じるほどだった。
駐車場はあるが、プレオープンで他の客はいないからと、湖のすぐそばまで乗り入れて車を停める。
外に出た瞬間、日の光を含んだ青葉の匂いと、静かに寄せては返す波の音に包まれた。
運転係だった暁生は、車を降りると大きく伸びをした。
「お疲れ」
「こんなでかい車運転することないから、まじで疲れた」
美しい自然を背景にして屈託なく笑う表情は、作り物みたいなかっこよさだった。
宿泊予定のバンガローに荷物を運び込んだり、周囲を見物したりしていると、オーナーが『おーい』と声を上げた。
「夕飯までスマホ没収な!」
全員がエーッと抗議の声を上げるが、オーナーは構わずに全員のスマホを回収していく。
「お前らはすぐにスマホばっか見るから。ちゃんと旅行を楽しめよ。この後はどうせ湖で泳ぐんだから、スマホ触るタイミングなんてないだろ」
皆は文句を言いつつも、記念撮影だけすると素直にスマホを差し出した。水晶のように煌めく湖を前に、気分が高揚しているせいかもしれない。
男しかいないので、その場で着替えが始まった。水着に着替えた者から湖に飛び込んでいく。
「あれ、瑞希は? 着替えないの?」
「うん、その辺散歩してくる」
廉に訊かれて答えると、一つ年下の宏哉が肩を抱いて顔を覗き込んでくる。
「お前、さてはカナヅチだな?」
「風邪気味なんだよ」
俺は宏哉を押し退けて、一人で森の方へ歩いていった。元々、皆と一緒に水遊びをするつもりはない。
湖畔を囲うように建てられたバンガローの裏手に、遊歩道が作られている。
密生した葉が日の光を遮る薄暗い森に入ると、湖ではしゃぐ声が途端に遠ざかった。風が木を揺らす音と、鳥の鳴き声がうるさいくらいに響く。
しばらく進むとバンガローや湖の反射も、木々に隠れて見えなくなった。整備された遊歩道を歩いているとはいえ周りには誰もおらず、人の気配すらない。
暗い陰鬱な森の中にたった一人でいるのだということを実感した途端、蒸し暑かったはずの空気がベッタリと肌に張り付くような冷気に変わった。
綺麗で新しい設備のせいで忘れそうになるが、ここではかつて人が殺されているのだ。しかも、その犯人はまだ捕まっていない……
やっぱり引き返そうとした瞬間、大きな手で口を塞がれた。
指先が頬に食い込み、息が苦しい。
パニックになった俺はジタバタともがくが、背後から羽交締めに抱きかかえる腕はびくともしない。
「あ、暁生──……!」
無意識のうちに、助けを求める声が漏れた。
「なに?」
聞き覚えのある声に、ハッと後ろを振り返った。
「は?! お、お前……! ふざけん──」
俺の抗議は、暁生の唇で塞がれた。
暁生は俺を引きずるようにして雑木林を抜けると、一番近くにあったバンガローの裏口を開けた。
中に入った途端、ドアに押し付けられて好き勝手に唇を貪られる。思わず顔を背けると、目の端に見覚えのあるカバンが映った。
ここは廉と春人が泊まる予定のバンガローなのだろう。二人がすぐに戻ってくることはないだろうが、気が気じゃない。
俺は暁生の体を力一杯押し返して体を離した。
「何すんだよ! びっくりするだろ!!」
暁生は悪びれた様子もなく、ごめん、とあっさり謝った。
「瑞希がいないから淋しくてさ。泳がないの?」
「……俺はいいんだよ」
「もしかして、まじで泳げないとか?」
「そうだよ」
嘘だ。
カナヅチどころか、俺は中学までスイミングクラブの選手コースに所属していた。
泳ぎもしないのに湖に行けば揶揄われるとわかってはいたが、俺はどうしても『かつて惨殺事件が起こった呪われたキャンプ場の復活』に立ち会いたかったのだ──まあ、立ち会ったところで、何も起こらないことはわかっているのだが……
「ふうん、まあ、俺はその方がいいけど」
暁生は俺のTシャツの中に手を差し入れると、ゆっくりと肌を撫でた。
「瑞希のここ、他のやつに見せたくないから」
暁生は体を屈めて、俺の胸に顔を寄せた。
暁生の舌が乳暈の縁をなぞる。
焦らすようにゆっくりと、丁寧に輪郭をなぞっていた舌先は、その中央に向かった。
「や……めろ…………」
胸に埋まる頭を押し退けようとするが、暁生は構わず乳暈に吸い付いた。じゅるじゅると音を立てて吸いながら、切れ目のように見える穴に舌先をこじ入れる。
「あっ……♡やだ、そこ……見るな……♡」
俺は真っ赤になった顔を隠すように、両腕で覆った。隠したいのに、ねだるように胸を突き出してしまう。
俺のそこは、いわゆる陥没乳首だ。それがコンプレックスで水泳もやめたし、着替えや裸を見られることに抵抗がある。
暁生は俺の抵抗を無視して、ずっと胸に吸い付いてくる。乳暈ごと吸いながら舌先で穴をほじられると、無意識に腰が揺れた。
「出てきた」
強く吸われて、埋もれていた乳首が顔を出す。外気に触れて敏感に勃ち上がったそれを、暁生は甘く噛んだ。
「暁生……っ、や……めろって……♡」
好き勝手されるのが悔しくて恥ずかしくて、やめて欲しいはずなのに、まともに抵抗できない自分が情けなかった。
暁生は俺の腰を抱いて密着しながら、乳首を噛む力を徐々に強くしていく。
「やだ、やだ……♡い、イク…………♡♡」
陰茎を触れられてもいないのに、精液が尿道をせり上がってくる。
こんな場所で、こんなふうにイカされたくないと思うのに、頭の中はもう、射精することしか考えられない。
思わず暁生の頭を抱えて胸に押し付けた瞬間、窓の外でカタンという小さな音がした。
気のせいかもしれないし、鳥や虫が窓に当たっただけかもしれない。でも、爆発しそうだった性欲は急速に萎んでしまった。
暁生は肩をすくめると、
「ちょっと見てくる」
と、外に出て行った。
暁生の姿が見えなくなった途端、力が抜けて床にしゃがみ込んだ。暁生と一緒に泊まる意味をわかっていると言ったものの、こんなことでは先が思いやられる。
一人で悶々としていたが、暁生がなかなか戻ってこないことに急に不安が込み上げてくる。
俺も外に行こうかと立ち上がったところで、暁生が戻ってきた。
「どこまで行ってたんだよ。心配するだろ」
「いや、ちょっと……」
言い淀む暁生を問い詰めようとした瞬間、ギャーッという空気を切り裂くような叫び声が響いた。
女子のバイトは三人いるが、二人は日程が合わず不参加で、もう一人も女子一人だけではちょっと……ということで、男だけでオーナーのミニバンに乗り込んだ。
過去に殺人事件と水難事故があった、水晶のように美しい湖。長きにわたって閉鎖されていた場所に集まる若者集団。正しく、俺が等身大フィギュアを飾るくらい大好きな映画と同じ展開だった。
映画のようなことが起こるわけはないとわかってはいても、スラッシャーの代名詞ともいえる映画と同じような場所に、若者たちのキャンプという同じようなシチュエーションで行けるチャンスに、気持ちが昂って落ち着かない。
高速を下りると、徐々に景色が単調になっていく。湖に近づくほど緑が濃くなり、キャンプ場の入り口を抜ける頃には、鬱蒼と茂る樹々で暗く感じるほどだった。
駐車場はあるが、プレオープンで他の客はいないからと、湖のすぐそばまで乗り入れて車を停める。
外に出た瞬間、日の光を含んだ青葉の匂いと、静かに寄せては返す波の音に包まれた。
運転係だった暁生は、車を降りると大きく伸びをした。
「お疲れ」
「こんなでかい車運転することないから、まじで疲れた」
美しい自然を背景にして屈託なく笑う表情は、作り物みたいなかっこよさだった。
宿泊予定のバンガローに荷物を運び込んだり、周囲を見物したりしていると、オーナーが『おーい』と声を上げた。
「夕飯までスマホ没収な!」
全員がエーッと抗議の声を上げるが、オーナーは構わずに全員のスマホを回収していく。
「お前らはすぐにスマホばっか見るから。ちゃんと旅行を楽しめよ。この後はどうせ湖で泳ぐんだから、スマホ触るタイミングなんてないだろ」
皆は文句を言いつつも、記念撮影だけすると素直にスマホを差し出した。水晶のように煌めく湖を前に、気分が高揚しているせいかもしれない。
男しかいないので、その場で着替えが始まった。水着に着替えた者から湖に飛び込んでいく。
「あれ、瑞希は? 着替えないの?」
「うん、その辺散歩してくる」
廉に訊かれて答えると、一つ年下の宏哉が肩を抱いて顔を覗き込んでくる。
「お前、さてはカナヅチだな?」
「風邪気味なんだよ」
俺は宏哉を押し退けて、一人で森の方へ歩いていった。元々、皆と一緒に水遊びをするつもりはない。
湖畔を囲うように建てられたバンガローの裏手に、遊歩道が作られている。
密生した葉が日の光を遮る薄暗い森に入ると、湖ではしゃぐ声が途端に遠ざかった。風が木を揺らす音と、鳥の鳴き声がうるさいくらいに響く。
しばらく進むとバンガローや湖の反射も、木々に隠れて見えなくなった。整備された遊歩道を歩いているとはいえ周りには誰もおらず、人の気配すらない。
暗い陰鬱な森の中にたった一人でいるのだということを実感した途端、蒸し暑かったはずの空気がベッタリと肌に張り付くような冷気に変わった。
綺麗で新しい設備のせいで忘れそうになるが、ここではかつて人が殺されているのだ。しかも、その犯人はまだ捕まっていない……
やっぱり引き返そうとした瞬間、大きな手で口を塞がれた。
指先が頬に食い込み、息が苦しい。
パニックになった俺はジタバタともがくが、背後から羽交締めに抱きかかえる腕はびくともしない。
「あ、暁生──……!」
無意識のうちに、助けを求める声が漏れた。
「なに?」
聞き覚えのある声に、ハッと後ろを振り返った。
「は?! お、お前……! ふざけん──」
俺の抗議は、暁生の唇で塞がれた。
暁生は俺を引きずるようにして雑木林を抜けると、一番近くにあったバンガローの裏口を開けた。
中に入った途端、ドアに押し付けられて好き勝手に唇を貪られる。思わず顔を背けると、目の端に見覚えのあるカバンが映った。
ここは廉と春人が泊まる予定のバンガローなのだろう。二人がすぐに戻ってくることはないだろうが、気が気じゃない。
俺は暁生の体を力一杯押し返して体を離した。
「何すんだよ! びっくりするだろ!!」
暁生は悪びれた様子もなく、ごめん、とあっさり謝った。
「瑞希がいないから淋しくてさ。泳がないの?」
「……俺はいいんだよ」
「もしかして、まじで泳げないとか?」
「そうだよ」
嘘だ。
カナヅチどころか、俺は中学までスイミングクラブの選手コースに所属していた。
泳ぎもしないのに湖に行けば揶揄われるとわかってはいたが、俺はどうしても『かつて惨殺事件が起こった呪われたキャンプ場の復活』に立ち会いたかったのだ──まあ、立ち会ったところで、何も起こらないことはわかっているのだが……
「ふうん、まあ、俺はその方がいいけど」
暁生は俺のTシャツの中に手を差し入れると、ゆっくりと肌を撫でた。
「瑞希のここ、他のやつに見せたくないから」
暁生は体を屈めて、俺の胸に顔を寄せた。
暁生の舌が乳暈の縁をなぞる。
焦らすようにゆっくりと、丁寧に輪郭をなぞっていた舌先は、その中央に向かった。
「や……めろ…………」
胸に埋まる頭を押し退けようとするが、暁生は構わず乳暈に吸い付いた。じゅるじゅると音を立てて吸いながら、切れ目のように見える穴に舌先をこじ入れる。
「あっ……♡やだ、そこ……見るな……♡」
俺は真っ赤になった顔を隠すように、両腕で覆った。隠したいのに、ねだるように胸を突き出してしまう。
俺のそこは、いわゆる陥没乳首だ。それがコンプレックスで水泳もやめたし、着替えや裸を見られることに抵抗がある。
暁生は俺の抵抗を無視して、ずっと胸に吸い付いてくる。乳暈ごと吸いながら舌先で穴をほじられると、無意識に腰が揺れた。
「出てきた」
強く吸われて、埋もれていた乳首が顔を出す。外気に触れて敏感に勃ち上がったそれを、暁生は甘く噛んだ。
「暁生……っ、や……めろって……♡」
好き勝手されるのが悔しくて恥ずかしくて、やめて欲しいはずなのに、まともに抵抗できない自分が情けなかった。
暁生は俺の腰を抱いて密着しながら、乳首を噛む力を徐々に強くしていく。
「やだ、やだ……♡い、イク…………♡♡」
陰茎を触れられてもいないのに、精液が尿道をせり上がってくる。
こんな場所で、こんなふうにイカされたくないと思うのに、頭の中はもう、射精することしか考えられない。
思わず暁生の頭を抱えて胸に押し付けた瞬間、窓の外でカタンという小さな音がした。
気のせいかもしれないし、鳥や虫が窓に当たっただけかもしれない。でも、爆発しそうだった性欲は急速に萎んでしまった。
暁生は肩をすくめると、
「ちょっと見てくる」
と、外に出て行った。
暁生の姿が見えなくなった途端、力が抜けて床にしゃがみ込んだ。暁生と一緒に泊まる意味をわかっていると言ったものの、こんなことでは先が思いやられる。
一人で悶々としていたが、暁生がなかなか戻ってこないことに急に不安が込み上げてくる。
俺も外に行こうかと立ち上がったところで、暁生が戻ってきた。
「どこまで行ってたんだよ。心配するだろ」
「いや、ちょっと……」
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