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決意を叶える(アビスside)
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※人によってはSAN値を減らすかもしれない内容です。暗めですので、ご注意ください。
俺には幼い頃から決められた婚約者がいた
別にその事に対して嫌な感情を抱いたことはない
むしろ感謝している
俺が産まれてから5才になるまでは国王である父上と妃である母上と仲良く暮らしていた
父上は仕事で忙しく、あまり遊んでもらった覚えはないが、母上はいつも俺を優しく迎えてくれていた
母上のお腹には俺の兄弟になるであろう子がいるとのことであまり長い時間は一緒にいられなかったがそれでも俺は幸せだった
兄弟がお腹の中にいるまでは…、
「…、ち、ちちうえ?」
母上のお腹の中の兄弟がいなくなったと聞いたとき俺は悲しかったが
その時の父上の顔がとても嬉しそうに笑っていて、恐ろしかった
今まで見たことのない父上の表情に俺は戸惑った
母上は俺にそっと笑いかけて
「ごめんね…」
そう言った
俺は泣きそうな母上を元気付けようと近づこうとすると
急に重装備をした騎士達が入ってきた
そして、母上を連れていく
俺は驚いて騎士を止めようとするが、まだ5才だった俺にはなにもすることはできず
ただただ、見送ることしかできなかった
「アビス、いつまで座っているつもりだ」
騎士たちと部屋から出ていった父上が
いつの間にか戻ってきていた
父上は俺についてくるようにと腕を引く
強引に引かれる腕は痛く、父上からは知らない匂いがしていた
「父上、この扉は?」
城にこんな大きな扉があったのかと俺は驚く
この城に似合わない作りで、いつの間にか出来た扉のように見えた
「アビス、お前はこの国の王となる」
「?」
「つまりは、この国の秘密を知ることとなるのだ」
「秘密…?」
秘密と聞くと何か楽しそうなことが起きそうな気がするが
実際は違った
「この国は呪われている」
「へ…?」
「今の国がある前にあった国が罪をおかしたのだ」
王族が、貴族が、聖女を亡き者にした
それに激怒した精霊たちはこの国を呪い、一度は潰れた国だった
何故、今の国があるのかは精霊たちのままごとらしい
この国の者たちは精霊たちの遊びに参加させられているとのことだ
「…我々は罪を償わなければならない。
国の母という生け贄を渡さなければならないのだ」
動きそうにない扉が開いていく
中は暗くて目がなれるまでは何があるのかわからなかった
近づいてみようとするが、腕を捕まれたままなので動くことも出来ない
「ーーー…え?」
部屋の真ん中には天幕がついた大きなベットがあり
そのベットの上には
「母上…?」
楽しそうに何かと話している母上がいた
「母上!!」
呼んでもこちらを向いてくれない
まるで、俺の声が聞こえていないかのように
「あれは、国の母となったのだ。
次の国の母が用意できるまでは近づくことさえ許されない」
「な、なにいって…?」
「今近づくと、精霊たちの怒りを買い 二度とお前の母には戻らないだろう」
俺は父上が何故そんな事をしたのか
その時は全くわからなかった
母上の事を嫌いになったのだろうか
俺の事を息子とは思っていないのだろうか
何処か嬉しそうな父上が恐ろしくて、でも何処か羨ましくて
「お前があいつを取り返したいのならば新たな国の母を用意することだ」
母上は見えない何かを大切そうに抱き締めている
俺だってしてもらった記憶がないと言うのに
羨ましい
ずるい
俺の母上なのに
俺の母上を取らないでよ
それは、俺の……
私は、決意した。
それから、月日が流れ私は婚約者と顔をあわせて、国の秘密を伝え
家族ごと巻き込み逃げられなくした
この国の妃となる者は貴族の中から選ばれる
その第一前提が魔力の量や強さだ
そして、家名がなくなっても大丈夫な令嬢を妃にする
初めてその事を伝えたときは、泣いて叫んでも嫌がっていたが
年を取るごとに国の為にはやるしかないと逃げずに妃になるための訓練や勉強、マナーをするようになった
学園に入る頃には家名を捨てて、国の為にこの身を捧げようと覚悟を決めたと私に報告してきた
私からしたら、今頃かと思いつつも
逃げ出さなかったことに驚いた
まあ、あの頃から私は表情を表に出すことが出来なくなっていたため
いつも通りの無表情だっただろうが…
後、1年で婚姻が出来る年齢になったときに
急に私の周りに知らない令嬢が良く来るようになった
皇子の私と仲良くしたいからかと思い適当にあしらっていたが
その令嬢は私の事が好きだと言う
そのうえ、魔力の量も問題なく
この国で現れることのない光の魔法を使うことが出来ると言うではないか
令嬢の事を調べていくにつれ
家名もなく、あちらの国にも戻る予定はない、妃として頑張りたいとも言っている
国の母となっても問題ないことがわかった
別に他の国の令嬢でも問題はないのだ
今のままだと、婚姻は出来てもすぐに実行することはできないが
その令嬢であればなにも問題ない
私はその令嬢をうまく操り、婚約者と婚約を破棄して
その令嬢を妃として迎えた
この国の母ということをわかってもらうために
私の子ではない子を産んでもらい、1年待った
それくらい幼い子であれば母親がいないと言われようとも、例え違ったと言われようとも気づかないだろう
私は妃を連れてあの扉の前へ行く
どう頑張っても開くことのなかった扉が待っていたというかのように簡単に開いた
「母上、迎えに来ましたよ。 さあ、帰りましょう?」
俺が母上を持ち上げると妃は勝手に歩いてくる
目は虚ろになっており、どこを見ているかわからない
でも、俺には関係ない
母上さえ側にいてくれれば国の母になるやつなどどうでもいいのだ
「…じゃあ、またね。 国の母」
俺は久々に笑えたと思う
大切な母上を取り返せてのだ
嬉しくて嬉しくてしょうがない
今とても幸せなのだ
「母上、ずっと俺の側にいてくださいね」
あの頃から見た目が変わっていない母上を抱き締めて扉から出ていった…
俺には幼い頃から決められた婚約者がいた
別にその事に対して嫌な感情を抱いたことはない
むしろ感謝している
俺が産まれてから5才になるまでは国王である父上と妃である母上と仲良く暮らしていた
父上は仕事で忙しく、あまり遊んでもらった覚えはないが、母上はいつも俺を優しく迎えてくれていた
母上のお腹には俺の兄弟になるであろう子がいるとのことであまり長い時間は一緒にいられなかったがそれでも俺は幸せだった
兄弟がお腹の中にいるまでは…、
「…、ち、ちちうえ?」
母上のお腹の中の兄弟がいなくなったと聞いたとき俺は悲しかったが
その時の父上の顔がとても嬉しそうに笑っていて、恐ろしかった
今まで見たことのない父上の表情に俺は戸惑った
母上は俺にそっと笑いかけて
「ごめんね…」
そう言った
俺は泣きそうな母上を元気付けようと近づこうとすると
急に重装備をした騎士達が入ってきた
そして、母上を連れていく
俺は驚いて騎士を止めようとするが、まだ5才だった俺にはなにもすることはできず
ただただ、見送ることしかできなかった
「アビス、いつまで座っているつもりだ」
騎士たちと部屋から出ていった父上が
いつの間にか戻ってきていた
父上は俺についてくるようにと腕を引く
強引に引かれる腕は痛く、父上からは知らない匂いがしていた
「父上、この扉は?」
城にこんな大きな扉があったのかと俺は驚く
この城に似合わない作りで、いつの間にか出来た扉のように見えた
「アビス、お前はこの国の王となる」
「?」
「つまりは、この国の秘密を知ることとなるのだ」
「秘密…?」
秘密と聞くと何か楽しそうなことが起きそうな気がするが
実際は違った
「この国は呪われている」
「へ…?」
「今の国がある前にあった国が罪をおかしたのだ」
王族が、貴族が、聖女を亡き者にした
それに激怒した精霊たちはこの国を呪い、一度は潰れた国だった
何故、今の国があるのかは精霊たちのままごとらしい
この国の者たちは精霊たちの遊びに参加させられているとのことだ
「…我々は罪を償わなければならない。
国の母という生け贄を渡さなければならないのだ」
動きそうにない扉が開いていく
中は暗くて目がなれるまでは何があるのかわからなかった
近づいてみようとするが、腕を捕まれたままなので動くことも出来ない
「ーーー…え?」
部屋の真ん中には天幕がついた大きなベットがあり
そのベットの上には
「母上…?」
楽しそうに何かと話している母上がいた
「母上!!」
呼んでもこちらを向いてくれない
まるで、俺の声が聞こえていないかのように
「あれは、国の母となったのだ。
次の国の母が用意できるまでは近づくことさえ許されない」
「な、なにいって…?」
「今近づくと、精霊たちの怒りを買い 二度とお前の母には戻らないだろう」
俺は父上が何故そんな事をしたのか
その時は全くわからなかった
母上の事を嫌いになったのだろうか
俺の事を息子とは思っていないのだろうか
何処か嬉しそうな父上が恐ろしくて、でも何処か羨ましくて
「お前があいつを取り返したいのならば新たな国の母を用意することだ」
母上は見えない何かを大切そうに抱き締めている
俺だってしてもらった記憶がないと言うのに
羨ましい
ずるい
俺の母上なのに
俺の母上を取らないでよ
それは、俺の……
私は、決意した。
それから、月日が流れ私は婚約者と顔をあわせて、国の秘密を伝え
家族ごと巻き込み逃げられなくした
この国の妃となる者は貴族の中から選ばれる
その第一前提が魔力の量や強さだ
そして、家名がなくなっても大丈夫な令嬢を妃にする
初めてその事を伝えたときは、泣いて叫んでも嫌がっていたが
年を取るごとに国の為にはやるしかないと逃げずに妃になるための訓練や勉強、マナーをするようになった
学園に入る頃には家名を捨てて、国の為にこの身を捧げようと覚悟を決めたと私に報告してきた
私からしたら、今頃かと思いつつも
逃げ出さなかったことに驚いた
まあ、あの頃から私は表情を表に出すことが出来なくなっていたため
いつも通りの無表情だっただろうが…
後、1年で婚姻が出来る年齢になったときに
急に私の周りに知らない令嬢が良く来るようになった
皇子の私と仲良くしたいからかと思い適当にあしらっていたが
その令嬢は私の事が好きだと言う
そのうえ、魔力の量も問題なく
この国で現れることのない光の魔法を使うことが出来ると言うではないか
令嬢の事を調べていくにつれ
家名もなく、あちらの国にも戻る予定はない、妃として頑張りたいとも言っている
国の母となっても問題ないことがわかった
別に他の国の令嬢でも問題はないのだ
今のままだと、婚姻は出来てもすぐに実行することはできないが
その令嬢であればなにも問題ない
私はその令嬢をうまく操り、婚約者と婚約を破棄して
その令嬢を妃として迎えた
この国の母ということをわかってもらうために
私の子ではない子を産んでもらい、1年待った
それくらい幼い子であれば母親がいないと言われようとも、例え違ったと言われようとも気づかないだろう
私は妃を連れてあの扉の前へ行く
どう頑張っても開くことのなかった扉が待っていたというかのように簡単に開いた
「母上、迎えに来ましたよ。 さあ、帰りましょう?」
俺が母上を持ち上げると妃は勝手に歩いてくる
目は虚ろになっており、どこを見ているかわからない
でも、俺には関係ない
母上さえ側にいてくれれば国の母になるやつなどどうでもいいのだ
「…じゃあ、またね。 国の母」
俺は久々に笑えたと思う
大切な母上を取り返せてのだ
嬉しくて嬉しくてしょうがない
今とても幸せなのだ
「母上、ずっと俺の側にいてくださいね」
あの頃から見た目が変わっていない母上を抱き締めて扉から出ていった…
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