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一章 信頼できるパートナー
信頼できるパートナー 2
前世のぼくは生まれた時から心臓が弱くて、入退院を繰り返していた。学校なんて、数えるほどしか通えなかった。
ぼく自身、そんな生活に疲れていたんだ。
だから、いつもと違う胸の痛みに意識が遠のいた時、これで解放されると思ったのに。
魔王に転生するなんて!
神さまがぼくの短い人生を憐れんで、前世の記憶を残したまま生まれ変わらせてくれたのかもしれない。
だけど。
なぜ魔王なのか。
「あっ、そうか」
ぼくはポンと手を打った。
魔王といえばヒール役だ。嫌われてなんぼなのだ。
今までのぼくは、常に周囲に気を配っていた。生きているだけで迷惑をかけるのだから、少しでも負担にならないようになりたかった。せめて空気でいたかった。
でも、魔王に気遣いなんて不要だろう。魔族は力がすべてなのだ。魔王は魔族の中で、いやこの世界で一番強い。
「きっと、人の目を気にせずに、好き勝手していいってことだよね! 神さまありがとう!」
ぼくは盛大にガッツポーズをした。
思いきりジャンプしても、足踏みしても、苦しくならない。
「健康な身体、サイコー!」
わあいとスキップしていたら、ガチャリと扉が開いた。
「おにいたまぁ」
トテトテと、小さい人物が走ってきた。そして、ぼくの太ももにモキュッと抱きつき、黒く大きなつぶらな瞳で見上げてくる。
「おにいたま、おかげん、だいじょうぶ?」
「ピッピ」
ぼくは弟のピッピを抱き上げた。
超絶、かわいい!
二歳くらいに見るピッピの頭部には、黒髪に隠れそうなほど短い角が一本あり、やはり爬虫類のような尻尾が生えている。頬はマシュマロのように柔らかだ。
ゲームでは回想シーンでチラッと登場しただけなので、ピッピがこんなに可愛いだなんて知らなかった。
そりゃあ、闇落ちするよなあ。
ぼくはピッピの背中をなでながら思った。
魔王が本格的に人を襲い始めたのは、ピッピが目の前で人間に殺されたからだ。
怒りのため暴走して、禍々しい龍の姿に変容し、地面が割れ、マグマが噴き出し、一瞬にして周囲を荒地にした。
その後、世界の地形や天候まで変わってしまう。魔王城を中心として闇が広がっていき、だんだんと人の住めない地が増えていく。
そこで魔王討伐を命じられるのが、主人公である勇者だ。
物語は魔王暴走後、闇に侵食されつつある世界でスタートする。
「ということは、まだゲームは始まっていないんだな」
「おにいたま?」
ピッピがコテリと小首をかしげる。
「問題ない。心配させて悪かった」
小さな頭をなでると、ピッピは気持ちよさそうに目を細めた。
「じゃあ、おにいたま、あそんで」
「わたしにはすることがある。チビ、ピッピを頼む」
「任せろ」
ピッピの後ろから部屋に入ってきて、傍に控えていたフェンリルの背中にピッピをおろした。
狼のような姿をした白いフェンリルは、まだ子供なので愛嬌のある顔をしているが、既にライオンくらいの大きさがある。命を助けられたピッピに忠誠を誓っている。
チビという名は、ピッピが命名した。なんともミスマッチな名前だが、ピッピがフェンリルを拾ってきたときには、確かにピッピよりも小さかった。しかし、あっという間に大きくなった。
ゲームでは人に襲われた時、チビはピッピを守りながらも、一緒に殺されてしまった。
「きみたちのためにも、ぼくは頑張るからね」
チビに乗って部屋を去ったピッピを見送りながら、ぼくは決意を新たにした。
ぼく自身、そんな生活に疲れていたんだ。
だから、いつもと違う胸の痛みに意識が遠のいた時、これで解放されると思ったのに。
魔王に転生するなんて!
神さまがぼくの短い人生を憐れんで、前世の記憶を残したまま生まれ変わらせてくれたのかもしれない。
だけど。
なぜ魔王なのか。
「あっ、そうか」
ぼくはポンと手を打った。
魔王といえばヒール役だ。嫌われてなんぼなのだ。
今までのぼくは、常に周囲に気を配っていた。生きているだけで迷惑をかけるのだから、少しでも負担にならないようになりたかった。せめて空気でいたかった。
でも、魔王に気遣いなんて不要だろう。魔族は力がすべてなのだ。魔王は魔族の中で、いやこの世界で一番強い。
「きっと、人の目を気にせずに、好き勝手していいってことだよね! 神さまありがとう!」
ぼくは盛大にガッツポーズをした。
思いきりジャンプしても、足踏みしても、苦しくならない。
「健康な身体、サイコー!」
わあいとスキップしていたら、ガチャリと扉が開いた。
「おにいたまぁ」
トテトテと、小さい人物が走ってきた。そして、ぼくの太ももにモキュッと抱きつき、黒く大きなつぶらな瞳で見上げてくる。
「おにいたま、おかげん、だいじょうぶ?」
「ピッピ」
ぼくは弟のピッピを抱き上げた。
超絶、かわいい!
二歳くらいに見るピッピの頭部には、黒髪に隠れそうなほど短い角が一本あり、やはり爬虫類のような尻尾が生えている。頬はマシュマロのように柔らかだ。
ゲームでは回想シーンでチラッと登場しただけなので、ピッピがこんなに可愛いだなんて知らなかった。
そりゃあ、闇落ちするよなあ。
ぼくはピッピの背中をなでながら思った。
魔王が本格的に人を襲い始めたのは、ピッピが目の前で人間に殺されたからだ。
怒りのため暴走して、禍々しい龍の姿に変容し、地面が割れ、マグマが噴き出し、一瞬にして周囲を荒地にした。
その後、世界の地形や天候まで変わってしまう。魔王城を中心として闇が広がっていき、だんだんと人の住めない地が増えていく。
そこで魔王討伐を命じられるのが、主人公である勇者だ。
物語は魔王暴走後、闇に侵食されつつある世界でスタートする。
「ということは、まだゲームは始まっていないんだな」
「おにいたま?」
ピッピがコテリと小首をかしげる。
「問題ない。心配させて悪かった」
小さな頭をなでると、ピッピは気持ちよさそうに目を細めた。
「じゃあ、おにいたま、あそんで」
「わたしにはすることがある。チビ、ピッピを頼む」
「任せろ」
ピッピの後ろから部屋に入ってきて、傍に控えていたフェンリルの背中にピッピをおろした。
狼のような姿をした白いフェンリルは、まだ子供なので愛嬌のある顔をしているが、既にライオンくらいの大きさがある。命を助けられたピッピに忠誠を誓っている。
チビという名は、ピッピが命名した。なんともミスマッチな名前だが、ピッピがフェンリルを拾ってきたときには、確かにピッピよりも小さかった。しかし、あっという間に大きくなった。
ゲームでは人に襲われた時、チビはピッピを守りながらも、一緒に殺されてしまった。
「きみたちのためにも、ぼくは頑張るからね」
チビに乗って部屋を去ったピッピを見送りながら、ぼくは決意を新たにした。
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