【完結】討伐される魔王に転生したので世界平和を目指したら、勇者に溺愛されました

じゅん

文字の大きさ
4 / 57
一章 信頼できるパートナー

信頼できるパートナー 3

「きみたちのためにも、ぼくは頑張るからね」
 チビに乗って部屋を去ったピッピを見送りながら、ぼくは決意を新たにした。
 とはいえ、なにをすればいいのだろうか。
「世界平和、ねえ」
 ぼくは部屋の中央付近にある、黒い本革のソファに腰を下ろした。
 無用な争いを避けるため、魔族には人に危害を加えないように伝えている。だから、魔族が人の村や町を襲うようなことはないけれど、国境付近で人と魔族が出くわすと、小競り合いが起きるのだ。
 国境といっても、魔族と人は同じ大陸に住んでいて、わかりやすく線が引いてあるわけでもない。幹部たちの話によると、こちらが大人しくしているせいか、人はだんだんと魔族の住処に踏み込んできているらしい。
 ぼくたちが手を出さなくても、相手から来られてはどうしようもない。このままでは魔族たちの不満が高まり、好戦的な魔族を止められないだろう。
「人間側にも協力者が必要か」
 ぼくはゲームの登場人物たちを思い浮かべた。
 真っ先に候補となったのは、王さまだ。
 勇者のいるブルーシア国の国王は、“明鏡王”と呼ばれるほど不正や不義に厳しく、公正な判断をする王なのだ。
「でもぼく、魔王だしなあ」
 厳格な王だからこそ、魔王という肩書だけで、ぼくの話を聞いてもらえない気もする。もう少し柔軟な人物のほうが適していそうだ。
 ぼくは腕を組んで、ああでもない、こうでもないと小一時間うなっていた。よさそうな人材がいても、この段階では居場所がわからなかったりもするのだ。
「……あっ、そうか。勇者だ」
 ぼくはパチリと目を開ける。
 プレイヤーキャラクターだったから、盲点だった。
 勇者であるヴィンセントは、パーティのリーダーだけあって、さまざまなことに寛容だ。少なくても、話を聞く前に門前払いをするような人物ではない。
 それに彼は孤児院育ちで、争いによる孤児をなくしたいと強く望んでいる。
 しかも、その孤児院にはヴィンセントと仲のいい人間と魔族のハーフの子供がいたので、魔族に偏見がないところもいい。
 ボス戦の前には、魔王が暴走した理由が判明するのだけど、それを知ったヴィンセントは魔王に同情すらしていた。
「うん、ヴィンセントしかいないな」
 そう思いながらも、ぼくの額にはうっすらと冷や汗がにじんでいた。
 ぼくは、死にたくないから世界を平和にしたいんだ。そのために勇者に会いに行く。
 だけど勇者はとある理由で、魔王を倒せる唯一の人物だった。
 つまり、ぼくの天敵なのだ。
 少し、怖い。
感想 3

あなたにおすすめの小説

転生先は猫でした。

秋山龍央
BL
吾輩は猫である。 名前はまだないので、かっこよくてキュートで、痺れるような名前を絶賛募集中である。 ……いや、本当になんでこんなことになったんだか! 転生した異世界で猫になった男が、冒険者に拾われて飼い猫になるほのぼのファンタジーコメディ。 人間化あり、主人公攻め。

オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる

クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。

「隠れ有能主人公が勇者パーティから追放される話」(作者:オレ)の無能勇者に転生しました

湖町はの
BL
バスの事故で亡くなった高校生、赤谷蓮。 蓮は自らの理想を詰め込んだ“追放もの“の自作小説『勇者パーティーから追放された俺はチートスキル【皇帝】で全てを手に入れる〜後悔してももう遅い〜』の世界に転生していた。 だが、蓮が転生したのは自分の名前を付けた“隠れチート主人公“グレンではなく、グレンを追放する“無能勇者“ベルンハルト。 しかもなぜかグレンがベルンハルトに執着していて……。 「好きです。命に変えても貴方を守ります。だから、これから先の未来も、ずっと貴方の傍にいさせて」 ――オレが書いてたのはBLじゃないんですけど⁈ __________ 追放ものチート主人公×当て馬勇者のラブコメ 一部暗いシーンがありますが基本的には頭ゆるゆる (主人公たちの倫理観もけっこうゆるゆるです) ※R成分薄めです __________ 小説家になろう(ムーンライトノベルズ)にも掲載中です o,+:。☆.*・+。 お気に入り、ハート、エール、コメントとても嬉しいです\( ´ω` )/ ありがとうございます!! BL大賞ありがとうございましたm(_ _)m

【完結】異世界に召喚された賢者は、勇者に捕まった!

華抹茶
BL
日本の一般的なサラリーマンである竹内颯太は、会社へ出勤する途中で異世界に召喚されてしまう。 「勇者様! どうかこの世界をお救いください!」 なんと颯太は『勇者』として、この世界に誕生してしまった魔王を倒してほしいと言われたのだ。 始めは勝手に召喚されたことに腹を立て、お前たちで解決しろと突っぱねるも、王太子であるフェリクスに平伏までされ助力を請われる。渋々ではあったが、結局魔王討伐を了承することに。 魔王討伐も無事に成功し、颯太は元の世界へと戻ることになった。 「ソウタ、私の気持ちを受け取ってくれないか? 私はあなたがいてくれるなら、どんなことだってやれる。あなたを幸せにすると誓う。だからどうか、どうか私の気持ちを受け取ってください」 「ごめん。俺はお前の気持ちを受け取れない」 元の世界へ帰る前日、フェリクスに告白される颯太。だが颯太はそれを断り、ひとり元の世界へと戻った。のだが―― 「なんでまた召喚されてんだよぉぉぉぉぉ!!」 『勇者』となった王太子×『勇者』として異世界召喚されたが『賢者』となったサラリーマン ●最終話まで執筆済み。全30話。 ●10話まで1日2話更新(12時と19時)。その後は1日1話更新(19時) ●Rシーンには※印が付いています。

学園一のスパダリが義兄兼恋人になりました

すいかちゃん
BL
母親の再婚により、名門リーディア家の一員となったユウト。憧れの先輩・セージュが義兄となり喜ぶ。だが、セージュの態度は冷たくて「兄弟になりたくなかった」とまで言われてしまう。おまけに、そんなセージュの部屋で暮らす事になり…。 第二話「兄と呼べない理由」 セージュがなぜユウトに冷たい態度をとるのかがここで明かされます。 第三話「恋人として」は、9月1日(月)の更新となります。 躊躇いながらもセージュの恋人になったユウト。触れられたりキスされるとドキドキしてしまい…。 そして、セージュはユウトに恋をした日を回想します。 第四話「誘惑」 セージュと親しいセシリアという少女の存在がユウトの心をざわつかせます。 愛される自信が持てないユウトを、セージュは洗面所で…。 第五話「月夜の口づけ」 セレストア祭の夜。ユウトはある人物からセージュとの恋を反対され…という話です。

巨人の国に勇者として召喚されたけどメチャクチャ弱いのでキノコ狩りからはじめました。

篠崎笙
BL
ごく普通の高校生だった優輝は勇者として招かれたが、レベル1だった。弱いキノコ狩りをしながらレベルアップをしているうち、黒衣の騎士風の謎のイケメンと出会うが……。 

大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)

子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ 喰われるなんて聞いてないんだが(?) 俺はただ、 いちご狩りに誘われただけだが。 なのに── 誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に なぜか俺が捕まって食われる展開に? ちょっと待てい。 意味がわからないんだが! いちご狩りから始まる ケンカップルいちゃらぶBL ※大人描写のある話はタイトルに『※』あり