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2 試練その1、それから、その2

試練その1、それから、その2 2

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 なんか、またよくわからなくなってきた。
「もっとヒントがほしい?」
「いえ、これ以上は……」
「ほしいです」
 また隼人はほしいと言った。
「なんで隼人は、そんなにラクしようとするの⁉」
「おれたちはクイズをしに来たんじゃなくて、部を作りに来たんだろ。むしろ、なんでマユカは普通に楽しもうとしてるんだよ」
 そうだった!
 でも、自力で解かないと、くやしいよう。
「あなた、マユカちゃんっていうの?」
 美香センパイに聞かれた。
「はい! わたしは井上マユカで、彼が宅間隼人です。わたしたち、幼なじみなんです」
「よけいなことまで言わなくていいんだよ」
 隼人は眉をしかめた。
「奇遇ね、私たちも幼なじみなの。私は二年で副部長の涼風美香。こっちは部長の緑川大地」
「よろしく」
 大地センパイが軽く手をあげた。
「隼人くんにだけヒントをあげる。マユカちゃんは耳をふさいでいて」
 えっ、そういうのアリ?
 でも、わたしは聞きたくない!
 わたしは耳をふさいで、ワーワーと小さく声をあげた。耳を押さえているだけだと、聞こえちゃうことがあるよね。
「ワーワーワーワー」
「隼人くん、漢字の読み方は関係ないわよ」
「じゃあおれたち、いままで考える方向自体、間違ってたんですね」
「そうね。でも、“良”ではなく、あえて“艮”を使ってるって考え方はバッチリよ」
「なるほど。ありがとうございます」
「ワーワーワーワー」
「マユカ、もういいよ」
 わたしは隼人に肩を軽くたたかれた。
「ワーワー……終わった?」
「終わった。もう一度、問題を見直そう」
 わたしたちは問題が書かれた紙に視線を落とした。
 ・艮空弓必
 ・一~三の間に、メッセージが隠されている。
 ・答えは四文字。
 答えが四文字ってことは、それぞれの漢字につき、一文字の答えが出てくるんじゃないのかな。ということは……。
「それぞれの漢字で、一から三があるもの」
 わたしと同じ事を考えていたのか、隼人がそう言った。
「それぞれの漢字で、一から三があるもの」
 隼人の言葉をそのままくりかえしたとき、わたしの頭に、ビリビリって感覚が走った。
「あっ! ひらめいた!」
 わたしは立ち上がった。
「画数だ!」
 艮は六画。空は八画。弓は三画。必は五画。どれもちゃんと、一から三ある。
 わたしはそれぞれの漢字を、とりあえず三画まで書いてみた。
「ん……? なんか、カタカナになりそうな、ならなそうな……」
「艮はヨに見えるな。空は三画までのうかんむりが、ウに似てる」
「弓は、そのままになっちゃうね」
「一から三に隠されているんだから、一画でも二画でもいいだろ」
「そっか! 二画でとめれば、カタカナのコになる!」
 じゃあ次の“必”も、二画でとめればいいのかな。
「必を二画で止めると、メに似てるね。ということは、ヨ、ウ、コ、メ? あれ、言葉にならないな」
「必の書き順が違うからだ」
 隼人はペンを取り出して、紙に書いた。
「一画目は、真ん中の点。二画目は、右上から左に下げる」
「あ、ソになった!」
 文字をつなげてみると……。
「ヨウコソになる!」
「正解」
 美香センパイが手をたたいた。
「ようこそ、文芸部へ」
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