上 下
29 / 32
5 ニセモノの写真を見抜け!

ニセモノの写真を見抜け! 5

しおりを挟む
「わたしたちも加工の可能性を考えたんだよ。でも二枚とも、時計の加工が難しそうだったから」
「部分的に切り取ろうとしたら、たしかに難しそうだけど」
「部分的じゃないの?」
「うん」
 部分じゃないってことは、全体ってこと?
 全体的な加工ってなにがあるだろう?
 例えば色を変えるとか、拡大や縮小をするとか、角度を変えるとか、回転させるとか?
「本当はもっと大きな写真で、切り取った部分が重要だったとか?」
「違う」
 わたしは二枚の写真をもう一度見た。
 全体の加工ってあと、なにができるんだっけ? ……反転とか?
 ジーーーーーーーーッと見ていたら……。
 ビリビリッとしたものが頭に走った。
 ひらめいた!
「加工されているのは、リーゼントセンパイの写真だ!」
「リーゼントセンパイ?」
 はっ、本人の目の前で言ってしまった。
 リーゼントセンパイは三白眼のするどい目でわたしを見た。
 ひえっ、怒られる。
 わたしは身構えた。
 次の瞬間……。
「あっはっはっは!」
 お腹を抱えて笑い出した。
「なんだそれ、髪型にセンパイをつけるのかよ!」
「す、すみません。あの、お名前を……」
「いいよ、リーゼントセンパイで。気に入ったから」
 気に入られてしまった。
「で、俺の写真の、どこが加工されてるんだよ」
「全体です。この写真は、左右が逆になっているんです」
 リーゼントセンパイは、黙ってわたしをうながした。
「時計の針は、三時に見えます。でも本当は、九時なんです」
「そのショーコは?」
「センパイの服です」
 わたしはセンパイの服のボタンを指さした。
 リーゼントセンパイの派手なシャツは、右上が前になっている。
「わたしのYシャツも、右が上にあります」
「同じでいいじゃねえか」
「女の子は右前だけど、男の子は左前です。ほら」
 部室にいるのは、わたし以外みんな男子。そして、男子のYシャツは左前なんだ。
「この服、レディースなんだよ。女物。それなら、右前でもおかしくねえだろ?」
「えっ……?」
 そう言われてしまうと、困ってしまう。
「それなら、センパイの家に今すぐ行きますか? その服が右前なのか、確かめに」
 隼人が言うと、チッと舌打ちした。
「撮影日はどうするんだよ。この写真の撮影日は、先週日曜日の三時になってるんだぞ」
「パソコンで加工をしたなら、加工した日時が記録されます。センパイは日曜日の九時に、時計台の前で撮影をした。そして写真を反転して、三時に保存した」
 隼人の説明に、リーゼントセンパイはため息をついた。
「……バレねえ自信はあったんだけどな」
「なぜ、こんなことをしたんだ」
 生徒会長が尋ねた。
「もちろん、あんたへの嫌がらせだよ。生徒会長って、前からいけ好かなかったんだよな、同族嫌悪って感じで」
「同族?」
 って、似た者同士みたいな意味だよね? 
 生徒会長と不良さんたちじゃ、ぜんぜん違うよ。
「俺たち、いつも学年のトップ争いをしてる、いわゆる優等生なんだよ」
 金髪センパイがリーゼントセンパイを見ながら言った。
 リーゼントセンパイと金髪センパイが優等生⁉
 ちっとも、そんなふうには見えない。
「スポーツもすぐできちまうし、要は人生イージーモード過ぎて、毎日がつまらなくてさ」
「だったら、まったく正反対の不良になってみようって、二人で話したんだ」
「どうせ授業は、塾でやったことの繰り返しだしな」
 どうしてそこで、不良になろうって考えるのかな。少しも共感できないよ!
「で、真面目くさった生徒会長が未来の自分みたいで、ケッて感じで見てたわけ」
「そうしたら、手作り人形なんて大事にしてるっていうから、盗ってやろうと思ってさ」
しおりを挟む

処理中です...