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5 ニセモノの写真を見抜け!

ニセモノの写真を見抜け! 6

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「俺たち、いつも学年のトップ争いをしてる、いわゆる優等生なんだよ」
 金髪センパイがリーゼントセンパイを見ながら言った。
「スポーツもすぐできちまうし、要は人生イージーモード過ぎて、毎日がつまらなくてさ」
「きみたちは、少しもイージーモードではないぞ。スポーツ万能だというなら、大地に勝ってから言うといい」
 生徒会長が大地センパイに水を向けた。
「オレは別に、運動が得意なわけじゃないよ。腕力はあるけど」
「じゃあ、腕相撲で勝負するか。俺は力にも自信がある」
 リーゼントセンパイが名乗り出た。
 そして二人は机に肘をついて手を組んで……。
 バタン! と秒殺だった。
 大地センパイの勝ち。
「ちょ、マジかよ。別ので勝負しろよ!」
 リーゼントセンパイがムキになってきた。
「俺にもやらせろ!」
 金髪センパイも手をあげる。
「イヤだなあ、めんどうくさい」
 大地センパイは顔をしかめている。
 部室の机を端に寄せて、柔道と相撲とボクシングをしたけど、全部、大地センパイの圧勝だった。
「マジか、勝てない……」
「こんなの初めてだ」
 リーゼントセンパイと金髪センパイは、ガクゼンとしてしゃがみこんでしまった。
「大地センパイ、そんなに強いのに、どうして運動部に入らなかったんですか?」
 わたしは大地センパイを見上げながら尋ねた。
「運動部って、部活の時間が長いだろ? オレは家の手伝いをしたいから、早めに帰りたいんだよ」
「大地の家は小料理屋なんだ。大地は家を継ぐ予定だ」
 生徒会長が補足するのに、大地センパイは苦笑する。
「兄がいるんだけど、ぜんぜん料理や接客に興味がないからね」
 そう言った大地センパイの前に、リーゼントセンパイと金髪センパイが並んだ。二人はキッと大地センパイをにらみ上げる。
「なに? もうめんどうだから、勝負なんてやらないよ」
 大地センパイは肩をすくめた。
「いや、そうじゃねえっす」
 あれ、ちょっと言葉づかいがていねいになった?
「大地センパイ。……いや、大地アニキ」
「俺たちを弟子にしてください!」
 二人はガバリを頭を下げた。
「こんなツエー人、初めてです!」
「不良をやめて、大地アニキの弟子になる!」
「ええっ、ヤダよ」
 大地センパイはイヤそうに眉を寄せた。
「いいじゃないか、不良をやめるって言ってるんだから。学校の風紀のためだ。弟子にしてやりたまえ」
 生徒会長は、面白がっているような表情でニヤニヤとしている。
「他人事だと思って……」
 大地センパイは、にがにがしい顔で生徒会長を軽くにらんだ。
「弟子とかの前にさ、盗ったもの返しなよ。人形はどこ?」
「家にあるっす」
 リーゼントセンパイは、ちょっと照れたように顎をかいた。
「あの人形、よくできてますね。俺、実は美香ちゃんのファンなんす」
「なんだと?」
 生徒会長が、片眉を上げてリーゼントセンパイを見た。
「あわわ」
 生徒会長は、極度の妹好き。「美香に近づくな!」とか「今すぐ人形を返せ!」とか言って、怒り出すに違いない。
 わたしはドキドキしながら成り行きを見守った。
「きみは美香が好きなのか?」
「好きというより、ファンです。あの塩対応がたまらないっす!」
「付き合いたいという願望は?」
「高嶺の花過ぎて、それはないっす」
「よし、合格!」
 生徒会長は、リーゼントセンパイの肩をたたいた。
「あの人形は、きみにあげよう」
「えっ、いいんですか?」
「美香好きに、悪い者はいない」
「あざっす! 大切にするっす!」
 あれ、仲良くなっちゃった。
「紫苑は美香を独占したいタイプのシスコンじゃなくて、みんなでめでたいタイプのシスコンだ。だから人形なんか配るんだ。まあ、どちらにしても変だから、生徒会のメンバーは、紫苑の妹好きを必死で隠してる。生徒会のイメージがあるからな。でも、本人におかしい自覚がないんだよ」
 大地センパイが説明してくれた。
 生徒会長はいわゆる、残念なイケメン、というやつなのだろうか。
 よくわからないけど……、生徒会の人たちは、きっと大変なんだろうなあ。
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