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終章 新たな企画
終章 新たな企画 後編【完結】
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央都也がいる事故物件の場所をどのように突き止めたのかも、雄誠は説明した。
「央都也が人形に襲われているシーンが動画で流れるや否や、央都也の居場所を特定して救出するために、みんなで該当する殺人事件を探すことから始まった」
雄誠含め、霊感の強い視聴者は霊が四体いることを画面越しに確認できたため、被害者が四名いる事件を探した。事件とは関係がない霊が混じっていることも考慮して、未成年同士の殺人事件で、被害者が一名~四名という幅を作った。
「事件の特定はそこまで時間がかからなかった。おまえの配信で事件は五年前の五月だ仮定できたから、かなり範囲を絞れたんだ」
ちょうど該当する事件が一件あった。状況からみて、十八歳の少年が同い年の友人と五歳の女子を殺害。女子の姉である十七歳の少女が十八歳の少年を撲殺してから自死したという事件だった。
「これを本命として、もう一件別の場所で中学生が同級生を殺害した事件もあったから、そちらの場所も探すことにした」
ニュースになっていれば、事件のあった場所は市まで報道される。しかし、市といっても広い。
「そこで、おまえが話していた内容を思い出して、ヒントになりそうなものをみんなで拾い集めたんだ」
静かな住宅街。
駅から離れている。
踏切の音がかすかに聞こえるくらいの位置に線路が走っている。
その路線は、需要の多いはずの二十一時台でも三本ほどしか電車が走っていない。
「それに加えて、央都也がカーテンを落として見せてくれた、満月もヒントになった」
「あんなのがヒントになったの?」
雄誠は頷く。
月は見える形により、方角が変わる。
季節にもよるが、満月の場合、二十一時すぎには南東にある。
つまり、央都也のいる部屋の南東に、建物や山などの遮蔽物がないということだ。
その条件でエリアを絞り込み、あとはその近所に聞き込みをすれば、事件のあった場所はわかるだろうという話になった。五年ほどならば、まだ記憶は風化していないはずだ。
あとは、該当エリアに近い視聴者で人海戦術をした。みんなスマートフォンを片手に、得た情報を書き込んでいった。
そして、雄誠たちは央都也を発見したのだ。
「途中からは画像が真っ暗になって、おまえのうめき声が聞こえ始めた。……俺は心臓が壊れるかと思った」
「勝手なことしてごめんね」
心から反省している。
雄誠や視聴者がいなければ、央都也は命を落としていたに違いないのだ。
そうしたら、あのマサルたちのように悪霊になっていたのだろうか。
そう思うと背筋が寒くなる。
「あの幽霊たちは、兄さんが消したの?」
「一時的に追い払っただけだ。またすぐに元の場所に戻るだろう。あれはかなり悪質だったから、専門家にきちんと供養してもらったほうがいいだろうな」
「そうだよね」
思い起こせば以前、命を奪うような危険な霊もいると雄誠は忠告していた。しかし、不用意に近づかなければ問題ないとも言っていた。見えさえしなければ大丈夫だと安易に考えた央都也の自業自得の結果なのだ。
事故物件に住む企画は終わりにしようと思う。
とりあえず、しばらくは。
(みんなに助けられちゃったな)
一人で生きていけると思っていたが、それは間違えだったと認めざるを得ない。
それに、みんながみんな敵ではないと、今回のことでよくわかった。
少なくても視聴者の多くは、央都也を仲間だと思ってくれているに違いない。だから央都也のピンチに駆けつけてくれたのだ。
いままでの視聴者への態度を考えると、央都也は無性に恥ずかしくなる。穴があったら入りたいとはこのことだ。
これからは視聴者と向き合って動画を作っていきたいと考えている。
人と話すのは相変わらず苦手だし、積極的に人の集まりに参加したいとは思えないが、少しずつ知人を作っていきたいと思っていた。
(そうじゃないと、兄さんの過保護がとまりそうもないしね)
まずは通販をやめてみよう。
買い物のために外に出る。
些細なことだが、見知らぬ人が近くにいるだけでも身心が拒否反応を起こす央都也としては、大きな前進だ。
そこから央都也の行動範囲が広がっていくかもしれない。
そして徐々に、人への苦手意識がなくなるといい。
(兄さんの家で暮らすなら、ぼくが料理を作ってみようかな。上手く作れたら、兄さん泣いて喜ぶかも)
今までは自分以外に関心はなかった。一番近しい雄誠のことでさえ、思いやる余裕がほとんどなかった。それくらい央都也は世界もキャパシティも狭かったのだ。
「ねえ兄さん、次の動画の企画、いい案ないかな?」
事故物件は封印。今は意図せず「入院企画」になっていて評判も良かったが、これもあと十日ほどで終了だ。
「視聴者から企画を募集すればいいんじゃないか?」
「……なるほど」
視聴者に喜んでもらえるコンテンツを作ろうとしていたのだ。本人たちに訊くのが確実だ。
「動画配信を始めてよかったな」
収入を得るために、そしてこの顔に生まれて損をした元を取ろうと、ネガティブな感情から端を発した仕事だった。
しかし、それが央都也を成長させてくれた。
「なんだか最近、動画を撮るのが楽しいんだ」
「ああ、それは伝わってきている。次の動画も楽しみにしてるよ。俺も“ペケ”のファンだからな」
雄誠は朗らかに笑った。央都也は少し照れくさくなって頬を染めると、いたずらっ子のように笑った。
「ありがとう兄さん。美しすぎるユーチューバー、ミスターX、これからもよろしく」
央都也はお決まりのちょっと痛い決めポーズをして、雄誠にウインクした。
了
「央都也が人形に襲われているシーンが動画で流れるや否や、央都也の居場所を特定して救出するために、みんなで該当する殺人事件を探すことから始まった」
雄誠含め、霊感の強い視聴者は霊が四体いることを画面越しに確認できたため、被害者が四名いる事件を探した。事件とは関係がない霊が混じっていることも考慮して、未成年同士の殺人事件で、被害者が一名~四名という幅を作った。
「事件の特定はそこまで時間がかからなかった。おまえの配信で事件は五年前の五月だ仮定できたから、かなり範囲を絞れたんだ」
ちょうど該当する事件が一件あった。状況からみて、十八歳の少年が同い年の友人と五歳の女子を殺害。女子の姉である十七歳の少女が十八歳の少年を撲殺してから自死したという事件だった。
「これを本命として、もう一件別の場所で中学生が同級生を殺害した事件もあったから、そちらの場所も探すことにした」
ニュースになっていれば、事件のあった場所は市まで報道される。しかし、市といっても広い。
「そこで、おまえが話していた内容を思い出して、ヒントになりそうなものをみんなで拾い集めたんだ」
静かな住宅街。
駅から離れている。
踏切の音がかすかに聞こえるくらいの位置に線路が走っている。
その路線は、需要の多いはずの二十一時台でも三本ほどしか電車が走っていない。
「それに加えて、央都也がカーテンを落として見せてくれた、満月もヒントになった」
「あんなのがヒントになったの?」
雄誠は頷く。
月は見える形により、方角が変わる。
季節にもよるが、満月の場合、二十一時すぎには南東にある。
つまり、央都也のいる部屋の南東に、建物や山などの遮蔽物がないということだ。
その条件でエリアを絞り込み、あとはその近所に聞き込みをすれば、事件のあった場所はわかるだろうという話になった。五年ほどならば、まだ記憶は風化していないはずだ。
あとは、該当エリアに近い視聴者で人海戦術をした。みんなスマートフォンを片手に、得た情報を書き込んでいった。
そして、雄誠たちは央都也を発見したのだ。
「途中からは画像が真っ暗になって、おまえのうめき声が聞こえ始めた。……俺は心臓が壊れるかと思った」
「勝手なことしてごめんね」
心から反省している。
雄誠や視聴者がいなければ、央都也は命を落としていたに違いないのだ。
そうしたら、あのマサルたちのように悪霊になっていたのだろうか。
そう思うと背筋が寒くなる。
「あの幽霊たちは、兄さんが消したの?」
「一時的に追い払っただけだ。またすぐに元の場所に戻るだろう。あれはかなり悪質だったから、専門家にきちんと供養してもらったほうがいいだろうな」
「そうだよね」
思い起こせば以前、命を奪うような危険な霊もいると雄誠は忠告していた。しかし、不用意に近づかなければ問題ないとも言っていた。見えさえしなければ大丈夫だと安易に考えた央都也の自業自得の結果なのだ。
事故物件に住む企画は終わりにしようと思う。
とりあえず、しばらくは。
(みんなに助けられちゃったな)
一人で生きていけると思っていたが、それは間違えだったと認めざるを得ない。
それに、みんながみんな敵ではないと、今回のことでよくわかった。
少なくても視聴者の多くは、央都也を仲間だと思ってくれているに違いない。だから央都也のピンチに駆けつけてくれたのだ。
いままでの視聴者への態度を考えると、央都也は無性に恥ずかしくなる。穴があったら入りたいとはこのことだ。
これからは視聴者と向き合って動画を作っていきたいと考えている。
人と話すのは相変わらず苦手だし、積極的に人の集まりに参加したいとは思えないが、少しずつ知人を作っていきたいと思っていた。
(そうじゃないと、兄さんの過保護がとまりそうもないしね)
まずは通販をやめてみよう。
買い物のために外に出る。
些細なことだが、見知らぬ人が近くにいるだけでも身心が拒否反応を起こす央都也としては、大きな前進だ。
そこから央都也の行動範囲が広がっていくかもしれない。
そして徐々に、人への苦手意識がなくなるといい。
(兄さんの家で暮らすなら、ぼくが料理を作ってみようかな。上手く作れたら、兄さん泣いて喜ぶかも)
今までは自分以外に関心はなかった。一番近しい雄誠のことでさえ、思いやる余裕がほとんどなかった。それくらい央都也は世界もキャパシティも狭かったのだ。
「ねえ兄さん、次の動画の企画、いい案ないかな?」
事故物件は封印。今は意図せず「入院企画」になっていて評判も良かったが、これもあと十日ほどで終了だ。
「視聴者から企画を募集すればいいんじゃないか?」
「……なるほど」
視聴者に喜んでもらえるコンテンツを作ろうとしていたのだ。本人たちに訊くのが確実だ。
「動画配信を始めてよかったな」
収入を得るために、そしてこの顔に生まれて損をした元を取ろうと、ネガティブな感情から端を発した仕事だった。
しかし、それが央都也を成長させてくれた。
「なんだか最近、動画を撮るのが楽しいんだ」
「ああ、それは伝わってきている。次の動画も楽しみにしてるよ。俺も“ペケ”のファンだからな」
雄誠は朗らかに笑った。央都也は少し照れくさくなって頬を染めると、いたずらっ子のように笑った。
「ありがとう兄さん。美しすぎるユーチューバー、ミスターX、これからもよろしく」
央都也はお決まりのちょっと痛い決めポーズをして、雄誠にウインクした。
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