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四章 雨降り小僧と狐の嫁入り
四章 4
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「おうおう、男に二言はねえぜ。なんでも言いつけな」
翔太は昨日と同じ、自慢のレインコートの胸を叩いた。
「じゃあね、ぼくのお願いはね」
白銀はもじもじとした。
「ぼくの友達になってほしい」
「はあ?」
ドン引きだというように、翔太は一歩下がった。
それを見た白銀はショックを受けた。竹を割ったような性格の翔太なら、「おやすいごようだぜ」と即答してくれると期待していたのだ。
「イヤ、だよね」
白銀はうつむいた。
「バカかおまえは。オレたちは友達じゃん。お願いになってねえよ。ちゃんと難しいクエストをくれよ!」
強く背中を叩かれて白銀はびっくりした。
「ぼくたち、友達なの?」
「それ以外のなんなんだよ。昨日ずっと遊んでたじゃん」
翔太は心底「意味がわからない」という表情だ。
「そっか。ぼくたちは友達なんだ」
雨降り小僧と人との関係は、どちらかといえば神のように崇められるものだった。人と気軽に遊ぶことなど今までになかった。
「白銀、今日はなにして遊ぼうか」
ニカッと翔太が笑った。白銀もつられて笑う。
こうして二人の関係は始まった。
それから二人は毎日のように、晴れの日も雨の日も遊んだ。翔太はいままでの友達と学校以外で会うことがなくなった。学校が終わると、翔太はすぐに白銀に会いに行った。それほど二人は意気投合したのだ。
三か月ほどが経ったころ、白銀は翔太に自分が雨降り小僧というあやかしであることを告げた。多くの人間には雨降り小僧が見えないので、周囲には翔太が一人で遊んでいるように見えるはずだ。そのことで翔太がよからぬことにならないかと白銀は心配していた。
あやかしだと告げたことで、翔太に嫌われても仕方がないと決意するのに時間がかかった。
しかし、白銀の心配は杞憂だった。
「だと思ったぜ」
それが翔太の答えだったのだ。
「なんかさ、俺が独り言を言ってるって噂になってたんだ。母ちゃんに言ったら、白銀は妖怪なんだろうって。怖いものではないから、周りになにを言われても影響されずに、自分の判断で行動しなさいって言ってた。母ちゃんにも子供の頃、妖怪の友達がいたんだって」
隠し事がなくなったことで、二人は更に仲良くなった。
そしてある日、白銀は翔太にレインコートと長靴をプレゼントされた。
「これ、オレとお揃いなんだぜ。やぶれた傘をかぶってるより、こっちのほうがカッコイイだろ」
それに、と翔太は照れくさそうにそっぽを向いて付け加える。
「これは友達の証だ」
白銀は嬉しくて泣きそうになった。晴天だった空に、少し小雨がぱらついたほどだ。
その日から白銀は、翔太とお揃いのレインコートを身に着けるようになった。
二人の関係は良好だった。
――ところが。
変化があったのは、それからさらに半年が過ぎたころだった。
「おまえなんか大嫌いだ! 二度とおまえの顔なんて見たくない。オレの前に現れるな!」
突然、翔太にそう言われた。
白銀の頭が真っ白になる。
昨日はいつも通り笑顔で別れた。特別なことなどなかった。
「どうして? ぼくがなにかした?」
「うるせえ、そういうウジウジしたところが前から大嫌いだったんだ!」
翔太は走り去った。
翔太は昨日と同じ、自慢のレインコートの胸を叩いた。
「じゃあね、ぼくのお願いはね」
白銀はもじもじとした。
「ぼくの友達になってほしい」
「はあ?」
ドン引きだというように、翔太は一歩下がった。
それを見た白銀はショックを受けた。竹を割ったような性格の翔太なら、「おやすいごようだぜ」と即答してくれると期待していたのだ。
「イヤ、だよね」
白銀はうつむいた。
「バカかおまえは。オレたちは友達じゃん。お願いになってねえよ。ちゃんと難しいクエストをくれよ!」
強く背中を叩かれて白銀はびっくりした。
「ぼくたち、友達なの?」
「それ以外のなんなんだよ。昨日ずっと遊んでたじゃん」
翔太は心底「意味がわからない」という表情だ。
「そっか。ぼくたちは友達なんだ」
雨降り小僧と人との関係は、どちらかといえば神のように崇められるものだった。人と気軽に遊ぶことなど今までになかった。
「白銀、今日はなにして遊ぼうか」
ニカッと翔太が笑った。白銀もつられて笑う。
こうして二人の関係は始まった。
それから二人は毎日のように、晴れの日も雨の日も遊んだ。翔太はいままでの友達と学校以外で会うことがなくなった。学校が終わると、翔太はすぐに白銀に会いに行った。それほど二人は意気投合したのだ。
三か月ほどが経ったころ、白銀は翔太に自分が雨降り小僧というあやかしであることを告げた。多くの人間には雨降り小僧が見えないので、周囲には翔太が一人で遊んでいるように見えるはずだ。そのことで翔太がよからぬことにならないかと白銀は心配していた。
あやかしだと告げたことで、翔太に嫌われても仕方がないと決意するのに時間がかかった。
しかし、白銀の心配は杞憂だった。
「だと思ったぜ」
それが翔太の答えだったのだ。
「なんかさ、俺が独り言を言ってるって噂になってたんだ。母ちゃんに言ったら、白銀は妖怪なんだろうって。怖いものではないから、周りになにを言われても影響されずに、自分の判断で行動しなさいって言ってた。母ちゃんにも子供の頃、妖怪の友達がいたんだって」
隠し事がなくなったことで、二人は更に仲良くなった。
そしてある日、白銀は翔太にレインコートと長靴をプレゼントされた。
「これ、オレとお揃いなんだぜ。やぶれた傘をかぶってるより、こっちのほうがカッコイイだろ」
それに、と翔太は照れくさそうにそっぽを向いて付け加える。
「これは友達の証だ」
白銀は嬉しくて泣きそうになった。晴天だった空に、少し小雨がぱらついたほどだ。
その日から白銀は、翔太とお揃いのレインコートを身に着けるようになった。
二人の関係は良好だった。
――ところが。
変化があったのは、それからさらに半年が過ぎたころだった。
「おまえなんか大嫌いだ! 二度とおまえの顔なんて見たくない。オレの前に現れるな!」
突然、翔太にそう言われた。
白銀の頭が真っ白になる。
昨日はいつも通り笑顔で別れた。特別なことなどなかった。
「どうして? ぼくがなにかした?」
「うるせえ、そういうウジウジしたところが前から大嫌いだったんだ!」
翔太は走り去った。
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