中学生ユーチューバーの心霊スポットMAP

じゅん

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5 神の怒り【恐怖指数 ★★★★★】

神の怒り【恐怖指数 ★★★★★】 4

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(あれ、痛くない)
 目を開くと翔陽にかばわれていて、キツネは翔陽の腕をかんでいた。
「翔ちゃん!」
「冴子」
 翔陽は歯を食いしばりながらも、冴子の名を呼んだ。
 冴子は翔陽の意図を理解してキツネにかけよると、黒く大きな体に札を貼った。
 さっきのキツネと同じように悲鳴をあげると、二匹目のキツネも消滅した。
「翔ちゃん、血がっ」
 鋭い牙が食い込んだ跡がいくつもあり、血が流れだしている。足のケガより深そうだ。
「ごめんなさい、わたしのせいで」
「女の子に傷が残ったら大変だからな」
「男の子だって大変だよ」
 アカリはどうすればいいかわからずに泣いてしまう。
「止血しましょ」
 冴子はポケットからハンカチを出して、翔陽の腕に巻き付けた。
「翔陽は抜けたほうがいいわよ。病院に行って」
「痛ぇけど、腕も指も動くし、だいじょうぶだろ。だいたい、本番はこれからだ」
(そうだ、まだ終わりじゃないんだ)
 拝殿の方を見ると、邪神が近づいてきていた。
 ――光の中だとはいえ、ここまでやるとは思わなかった。驚いたよ。
 邪神から、ほほ笑みが消えた。
 ――我を怒らせるとはな。命までは取らないつもりだったが、やめた。
 邪神の目が光った。
「……なっ、体が、動かねえっ」
 翔陽の動きがとまった。
「……冴子ちゃんも?」
 アカリは動きをとめて、視線だけ動かして冴子を見た。
「アカリに書いてもらったのに、どうして」
 冴子も戸惑いの声をあげる。
 ――力の差は歴然だと言っただろう。おまえたちはおかしな道具を使うからな。動きをとめさせてもらおう。
「京四郎……っ!」
 振り絞るように翔陽が叫ぶと、ヘリコプターの動きが変わった。
《了解だ》
 ヘリコプターから、なにかが放射される。
 それは、聖水だった。
 聖水を浴びると、金縛りが解けて、また動けるようになった。三人はずぶぬれになった。
「ヘリ無双だな。これなら邪神も聖水を浴び……てねえか」
 邪神はなにか呪を唱えて、聖水を弾いていた。
 ――あれも邪魔だな。そろそろ退場させるとするか。
 邪神が再び大量の管ギツネを作ると、管ギツネたちはヘリコプターに向かった。主にプロペラ付近に集まる。
《計器がおかしくなった。すまない、いったん引き上げる》
 京四郎を乗せたヘリコプターは、ふらつきながら離れてしまった。
 おかげで、神社全体を照らしていたライトがなくなり、暗くなってしまう。月明かりがあるので真っ暗ではないが、光といっしょにパワーまで奪われた気になった。濡れた体が風で冷えていく。
 ――さて、今度こそ動きをとめさせてもらおう。
「みんな、こいつの目を見るなよ。さっき、目が光った時に動けなくなったんだ」
 翔陽がするどく言う。
 ――ほう、よく覚えているじゃないか。では、これはどう防ぐ?
 邪神が呪を唱えだした。
「なんだ、これは」
 お経のように途切れることのない声が聞こえてくると、耳の奥を引っ掻かれるような不快感が襲った。耳を塞いでも聞こえてくる。
 アカリたちはたまらず、耳を塞ぎながらしゃがみ込んだ。
「くそ、またか……」
 翔陽はしゃがんだまま動けなくなった。
 ――さて、我は一人だけ殺そうと思う。誰がいいと思う? 意見を聞こう。
 邪神は腕を組み、笑みを浮かべながら三人を見回した。三人とも、口を開かない。
 ――どうやって殺そうか。一思いには殺さない。その死にざまを見届けるのが、二人が生き残る条件だ。一生、記憶に残る死に方にしてやろう。
「あんた、それでも元土地神か。最低だな」
 翔陽が邪神をにらむ。
 ――我を変えたのは人間よ。宮司家族は、心の美しい者たちだった。最低限の暮らしをし、人のために尽くす生き方をしていた。まだ小学生だった娘も親をよく手伝っていた。あの家系はずっとそうだった。我は人に失望した。
「だからって、関係ない奴に仕返ししたって、仕方がないだろ」
 ――強盗には手を下した。それでも乾きは収まらない。神体が血に染まった時、我は荒振神に変化した。人の幸福を願うものから、不幸を願うものになった。それだけだ。
 邪神は翔陽の前でしゃがみ、翔陽の顎を指ですくった。
 ――さて、おまえ。死にたいようだな。
 歯を食いしばった翔陽は勝気に、邪神から視線をそらさない。
「二人には手を出すなよ」
 ――約束しよう。
「やめて! わたしにして!」
 アカリが叫んだ。
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