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第2章 チート街道驀進(不本意)
あのサブタイトルはあながち間違ってない (1)
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勇者を拾ってから1日が経過しました。勇者はまだ目覚めません。
「この人ちゃんと生きてるよね?」
のんきな寝顔を覗き込みながら、私はついつい思ってしまう。いや、生きてるのは当たり前なんだけどね。
この勇者…クリストファーさんというらしいけど、拾ってきたはいいけど世話することがないんですよ。状態のところに空腹とあるが、目が覚めなきゃご飯も食べれない。熱があるわけでもないし、苦しんでる様子もない。
これ、まさか腹減って行き倒れてたってことないよね?とか最近思う私です。ちょっとそれは……勇者としてどうなんだろう?
ノルは昨日から部屋に引きこもろうとしています。奴に引きこもられると私が困るのでそのたびに引きずり出すんだが、ノルが暗黒龍だってことは誰にもわからないよ。保証してあげるって。
「うーん……」
眠れる森の美女、ではなく勇者。実は普通に寝てるんじゃね?疑惑あり。どうやって起きてもらおうか。
とかそんなことを思っていると……。
「うわわぁぁぁ!!!」
勇者が突然ベッドから跳ね起きた。つられて私も飛び上がる。なんですかぁ!?
「あああ……死ぬかと思った……て、ん?」
ゼエゼエと息する勇者は、自分が見知らぬところにいるのに気づいてあたりをキョロキョロと見渡す。
「おや?あなたは?」
「どうも、おはようございます。私はこの家の主で」
「なんと!あなたが助けてくださったのですか!僕はクリストファー!ありがとうございました!」
「ど、ども……」
私が簡単にここにいる経緯を話すと、勇者は目をキラキラさせながらお礼を言ってきた。ちょ……眩しい…!
「目が覚めたようですし、何か食べ物を作ってきます」
「いえ、そこまでお世話になるわけ行きませんよ。そもそも僕はーーー」
グーキュルルルル。
「………」
「………」
「なんか作ってきます」
「はい……」
まったく、お腹が空いてるなら素直にそういえばいいじゃないの。何を遠慮してたんだか。
◇ ◇ ◇
1時間後。
「はい、どうぞ。オムレツです」
何を作ろうか迷った結果、一番簡単に作れるオムレツにした。地球でも良くオムレツとかオムライスとか卵かけご飯とかよく食べてたな。
つーか全部卵じゃん。あかんな、食生活のバランスがよろしくないな。
「おおおお!!!」
皿を受け取った勇者は、そこに乗っている黄色いオムレツを見てさらに目を輝かせた。おかしいな……こいつ、いい年の大人だよね?これじゃあまるで小学生の男子だぞ?
「なんと美しい……!太陽の光浴びた光り輝くボディ、優雅なアーチ状を描く淡い黄色のオブジェはまさに芸術!眺めていると、まるで大海原にいるようだよ!!」
「……は、はぁ??」
大海原??芸術??待て待て待て、どういうこと?オムレツだよ?オムレツごときでその反応?大げさを通り越して意味がわからない。どうしてオムレツから海が連想できるのか……。
「うおおお!!!なんとまろやかな口当たりだ!!口にいれた瞬間ほどけるようなこの感触、まるで黄金の清水の流れ!!これぞ女神からの授かり物!!」
「……」
もうツッコめるレベルではない。この勇者、ものすごくオーバーリアクションな人だ。何、黄金の川って。確かに半熟にはしたけど、川ってレベルか??
「美味しかった。とても美味しかった。ありがとうございます。僕の人生の中でもっと尊い食事をありがとうございます」
「………はぁ」
一瞬でオムレツを胃袋に詰め、勇者はまさかのポロポロ泣きながらお皿を返却してきた。私、もうどうしらいいかわからない。誰か助けて!!
「では皿を撤去してきますね」
「あの!待ってください!」
「はい?」
「僕も、ついて行っていいですか?」
「……?どうぞ」
皿をキッチンに持って行って洗うだけなんだが、ついてきたいというクリストファー。まあ、邪魔をしなければいいから許可した。
皿を持って階段を降りていると、下からノルが上がってきた。さっき狩りに出かけていたから戻ってきたのだろう。
「おかえり、ノル」
「おー!ただいーーーっ!」
「こら逃げるんじゃない」
私の後ろにいるクリストファーを見るなり、回れ右で逃げようとするノル。そして私はすかさずノルの首根っこをひっつかんで止める。
「はーなーせーーー!!」
「じっとしてなさいって!ジタバタ動くのが一番怪しいよ!」
「いーやーだーー!」
……最強ドラゴンのノルがここまで精神的に受け付けないとか、勇者パーティはどんだけしつこくノルを追い回してたんだろう?悪霊の怨念のごとく逃げる先々まで寸分違わず追いかけ回してたとか??
……そうだとしたら確かに精神的に受け付けられなくなってもわかるな。ステータスでは圧倒的に勝っていても、執念というのは精神にものすごい恐怖を植え付けてきますね……。
「あの…そちらの暴れている方は?」
「彼は私の同居人で、ノルって言うんです!」
「セン!?」
「おお!なるほどノルさんですか。僕はクリストファーと言います。よろしく!!」
ノルの引きつった顔に気づいてるのか気づいてないのか、クリストファーはジタバタ暴れるノルの手を無理矢理掴み、ブンブンと勢い良く振った。
そして上機嫌に立ち上がると、再び私に向き合う。
……なぜだ?なぜ猛烈に嫌な予感しかないんだ?
「センというのですね。センさんはとても賑やかなお家にいらっしゃるんですね」
「……それはどうも」
「そしてその賑やかさが、センさんの魅力をより引き立ています」
「…ん??そうなんの?」
「そうです。センさんは僕が見てきた中で一番綺麗な人です」
あれ?どうしてそうなった?そして何この怪しい雲行き……。もはや嫌な予感しか……。
「だから!僕は決めました!」
「………え"」
◇ ◇ ◇
数日後。
「おはよう!!愛しい僕のオーレリア!!」
「だーかーらぁーー!来るなってーーー!!!つーかオーレリアって誰だよ!!!」
某有名漫画のあの言葉、あながち嘘じゃなかった。
本当にしつこさと粘り強さって紙一重だな!!!
「この人ちゃんと生きてるよね?」
のんきな寝顔を覗き込みながら、私はついつい思ってしまう。いや、生きてるのは当たり前なんだけどね。
この勇者…クリストファーさんというらしいけど、拾ってきたはいいけど世話することがないんですよ。状態のところに空腹とあるが、目が覚めなきゃご飯も食べれない。熱があるわけでもないし、苦しんでる様子もない。
これ、まさか腹減って行き倒れてたってことないよね?とか最近思う私です。ちょっとそれは……勇者としてどうなんだろう?
ノルは昨日から部屋に引きこもろうとしています。奴に引きこもられると私が困るのでそのたびに引きずり出すんだが、ノルが暗黒龍だってことは誰にもわからないよ。保証してあげるって。
「うーん……」
眠れる森の美女、ではなく勇者。実は普通に寝てるんじゃね?疑惑あり。どうやって起きてもらおうか。
とかそんなことを思っていると……。
「うわわぁぁぁ!!!」
勇者が突然ベッドから跳ね起きた。つられて私も飛び上がる。なんですかぁ!?
「あああ……死ぬかと思った……て、ん?」
ゼエゼエと息する勇者は、自分が見知らぬところにいるのに気づいてあたりをキョロキョロと見渡す。
「おや?あなたは?」
「どうも、おはようございます。私はこの家の主で」
「なんと!あなたが助けてくださったのですか!僕はクリストファー!ありがとうございました!」
「ど、ども……」
私が簡単にここにいる経緯を話すと、勇者は目をキラキラさせながらお礼を言ってきた。ちょ……眩しい…!
「目が覚めたようですし、何か食べ物を作ってきます」
「いえ、そこまでお世話になるわけ行きませんよ。そもそも僕はーーー」
グーキュルルルル。
「………」
「………」
「なんか作ってきます」
「はい……」
まったく、お腹が空いてるなら素直にそういえばいいじゃないの。何を遠慮してたんだか。
◇ ◇ ◇
1時間後。
「はい、どうぞ。オムレツです」
何を作ろうか迷った結果、一番簡単に作れるオムレツにした。地球でも良くオムレツとかオムライスとか卵かけご飯とかよく食べてたな。
つーか全部卵じゃん。あかんな、食生活のバランスがよろしくないな。
「おおおお!!!」
皿を受け取った勇者は、そこに乗っている黄色いオムレツを見てさらに目を輝かせた。おかしいな……こいつ、いい年の大人だよね?これじゃあまるで小学生の男子だぞ?
「なんと美しい……!太陽の光浴びた光り輝くボディ、優雅なアーチ状を描く淡い黄色のオブジェはまさに芸術!眺めていると、まるで大海原にいるようだよ!!」
「……は、はぁ??」
大海原??芸術??待て待て待て、どういうこと?オムレツだよ?オムレツごときでその反応?大げさを通り越して意味がわからない。どうしてオムレツから海が連想できるのか……。
「うおおお!!!なんとまろやかな口当たりだ!!口にいれた瞬間ほどけるようなこの感触、まるで黄金の清水の流れ!!これぞ女神からの授かり物!!」
「……」
もうツッコめるレベルではない。この勇者、ものすごくオーバーリアクションな人だ。何、黄金の川って。確かに半熟にはしたけど、川ってレベルか??
「美味しかった。とても美味しかった。ありがとうございます。僕の人生の中でもっと尊い食事をありがとうございます」
「………はぁ」
一瞬でオムレツを胃袋に詰め、勇者はまさかのポロポロ泣きながらお皿を返却してきた。私、もうどうしらいいかわからない。誰か助けて!!
「では皿を撤去してきますね」
「あの!待ってください!」
「はい?」
「僕も、ついて行っていいですか?」
「……?どうぞ」
皿をキッチンに持って行って洗うだけなんだが、ついてきたいというクリストファー。まあ、邪魔をしなければいいから許可した。
皿を持って階段を降りていると、下からノルが上がってきた。さっき狩りに出かけていたから戻ってきたのだろう。
「おかえり、ノル」
「おー!ただいーーーっ!」
「こら逃げるんじゃない」
私の後ろにいるクリストファーを見るなり、回れ右で逃げようとするノル。そして私はすかさずノルの首根っこをひっつかんで止める。
「はーなーせーーー!!」
「じっとしてなさいって!ジタバタ動くのが一番怪しいよ!」
「いーやーだーー!」
……最強ドラゴンのノルがここまで精神的に受け付けないとか、勇者パーティはどんだけしつこくノルを追い回してたんだろう?悪霊の怨念のごとく逃げる先々まで寸分違わず追いかけ回してたとか??
……そうだとしたら確かに精神的に受け付けられなくなってもわかるな。ステータスでは圧倒的に勝っていても、執念というのは精神にものすごい恐怖を植え付けてきますね……。
「あの…そちらの暴れている方は?」
「彼は私の同居人で、ノルって言うんです!」
「セン!?」
「おお!なるほどノルさんですか。僕はクリストファーと言います。よろしく!!」
ノルの引きつった顔に気づいてるのか気づいてないのか、クリストファーはジタバタ暴れるノルの手を無理矢理掴み、ブンブンと勢い良く振った。
そして上機嫌に立ち上がると、再び私に向き合う。
……なぜだ?なぜ猛烈に嫌な予感しかないんだ?
「センというのですね。センさんはとても賑やかなお家にいらっしゃるんですね」
「……それはどうも」
「そしてその賑やかさが、センさんの魅力をより引き立ています」
「…ん??そうなんの?」
「そうです。センさんは僕が見てきた中で一番綺麗な人です」
あれ?どうしてそうなった?そして何この怪しい雲行き……。もはや嫌な予感しか……。
「だから!僕は決めました!」
「………え"」
◇ ◇ ◇
数日後。
「おはよう!!愛しい僕のオーレリア!!」
「だーかーらぁーー!来るなってーーー!!!つーかオーレリアって誰だよ!!!」
某有名漫画のあの言葉、あながち嘘じゃなかった。
本当にしつこさと粘り強さって紙一重だな!!!
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