13 / 119
文久3年
奈良の大仏無事ですかーーーーー!(壱)
しおりを挟む
『おい、何種類か薬草を見つけたぞ。風呂敷にしまうのを手伝っておくれ』
(はいはーい。えっと、"ほむろが持ってる薬草"を"ほむろの背中の風呂敷"に!)
『お!収納できだぞ!お主も妖術を使うのがうまくなってきたのう』
(そりゃあ何回も使ってるからね)
私とほむろは、いまだ森の中をさまよっている……らしい。ほむろが、まだ森を抜けていないって言うから。
だって私は耳と目が両方とも使い物にならないから全く分からないんだもん。ほむろに全てを任せるしかない。
道中、ほむろは薬草や山菜を見つけては摘んできてくれる。それをほむろが自分でしまうのは難しいから、妖術の練習もかねて私が収納を手伝っている。
移動させたいものと移動させたい場所を指定して移転の術を使えば、さっきみたいに薬草をほむろの背中の風呂敷に自動でしまってくれる。
ぶっちゃけ目が見えなくても困らないというこの素晴らしさね。
だって対象物と行き先を念じれば自動で運んでくれるんだから。あんまり遠すぎると運べないみたいだけど。
どうも妖術とは、心の中で念じればそれに合った術が自動で発動するようで、大変便利です。
もちろん妖術なんて人前では使えないから、大都市とかに行ったら苦労するだろうけど。
(ああ、視界情報が何もないってつらいよ)
『我慢するのじゃ。そもそもお主が妾の力を吸収したのが悪い』
(それは不可抗力!私のせいではない!)
『それより、先ほどから大分たくさんの山菜やら薬草やらきのこやら採取しておるからそろそろ風呂敷の中が手狭になってきたのう。雫、ちょいと空間拡張の術を使ってはくれんか?』
(空間拡張?そんな芸当もできるのか。えーっと………"ほむろの背中の風呂敷内の体積を二倍"。これでいいのか?)
『うむ!成功じゃ!お主もなかなか手練れてきたのう』
(誰かさんの力を吸収したときに、"妖術を操る才能"ってのをもらってるからね。ところで、ここって日本のどのあたり?京の都って近いの?)
『ここか?妾は人間界の地理には疎いのじゃが………大仏が近くにあったはずじゃ。ほれ、あの戦国の世に松永 久秀の放火によって焼失した大仏と大仏殿』
ああ、あの鹿が凶暴なところね。
(ここは奈良の近くか。大仏生きてますか―――――――!!)
『な、なんじゃ!お主!大仏はとっくの昔に再興されておるぞ!』
(うん、知ってる。だって大仏と大仏殿は、宝永6年に全部復興し終わってるもん。復興が終わって、もう160年ぐらい経ってるでしょ?)
高校時代の修学旅行の時に、ガイドさんが散々言ってたからね。
『なんだ、知っておったのか』
(イエス。ただ叫んでみたかっただけ)
『お主が今叫んでも、その声は誰にも聞こえんぞ』
(だからこそよ。今なら全力で叫んでも周りの人には何の迷惑にもならないし、迷惑がかかるのは私の心の声が聞こえるほむろだけ。素晴らしいね)
『妾には迷惑をかけてもよいというのか!』
そんな馬鹿な会話をしつつ、一人と一匹は引き続き森の中を進んでいくのだった。
(はいはーい。えっと、"ほむろが持ってる薬草"を"ほむろの背中の風呂敷"に!)
『お!収納できだぞ!お主も妖術を使うのがうまくなってきたのう』
(そりゃあ何回も使ってるからね)
私とほむろは、いまだ森の中をさまよっている……らしい。ほむろが、まだ森を抜けていないって言うから。
だって私は耳と目が両方とも使い物にならないから全く分からないんだもん。ほむろに全てを任せるしかない。
道中、ほむろは薬草や山菜を見つけては摘んできてくれる。それをほむろが自分でしまうのは難しいから、妖術の練習もかねて私が収納を手伝っている。
移動させたいものと移動させたい場所を指定して移転の術を使えば、さっきみたいに薬草をほむろの背中の風呂敷に自動でしまってくれる。
ぶっちゃけ目が見えなくても困らないというこの素晴らしさね。
だって対象物と行き先を念じれば自動で運んでくれるんだから。あんまり遠すぎると運べないみたいだけど。
どうも妖術とは、心の中で念じればそれに合った術が自動で発動するようで、大変便利です。
もちろん妖術なんて人前では使えないから、大都市とかに行ったら苦労するだろうけど。
(ああ、視界情報が何もないってつらいよ)
『我慢するのじゃ。そもそもお主が妾の力を吸収したのが悪い』
(それは不可抗力!私のせいではない!)
『それより、先ほどから大分たくさんの山菜やら薬草やらきのこやら採取しておるからそろそろ風呂敷の中が手狭になってきたのう。雫、ちょいと空間拡張の術を使ってはくれんか?』
(空間拡張?そんな芸当もできるのか。えーっと………"ほむろの背中の風呂敷内の体積を二倍"。これでいいのか?)
『うむ!成功じゃ!お主もなかなか手練れてきたのう』
(誰かさんの力を吸収したときに、"妖術を操る才能"ってのをもらってるからね。ところで、ここって日本のどのあたり?京の都って近いの?)
『ここか?妾は人間界の地理には疎いのじゃが………大仏が近くにあったはずじゃ。ほれ、あの戦国の世に松永 久秀の放火によって焼失した大仏と大仏殿』
ああ、あの鹿が凶暴なところね。
(ここは奈良の近くか。大仏生きてますか―――――――!!)
『な、なんじゃ!お主!大仏はとっくの昔に再興されておるぞ!』
(うん、知ってる。だって大仏と大仏殿は、宝永6年に全部復興し終わってるもん。復興が終わって、もう160年ぐらい経ってるでしょ?)
高校時代の修学旅行の時に、ガイドさんが散々言ってたからね。
『なんだ、知っておったのか』
(イエス。ただ叫んでみたかっただけ)
『お主が今叫んでも、その声は誰にも聞こえんぞ』
(だからこそよ。今なら全力で叫んでも周りの人には何の迷惑にもならないし、迷惑がかかるのは私の心の声が聞こえるほむろだけ。素晴らしいね)
『妾には迷惑をかけてもよいというのか!』
そんな馬鹿な会話をしつつ、一人と一匹は引き続き森の中を進んでいくのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います
ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?
大和型戦艦、異世界に転移する。
焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。
※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。
true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。
それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。
これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。
日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。
彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。
※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。
※内部進行完結済みです。毎日連載です。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる