幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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文久3年

奈良の大仏無事ですかーーーーー!(参)

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(…………)
『…………』

 私とほむろの間に気まずい沈黙が流れる。さっき、ほむろの発言に、私がカッとなって怒鳴り返しちゃったせいだ。

 ほむろ相手に怒っても仕方ないのにね。ほむろだって、好き好んで私に力をとられたわけじゃないのだから。

(ごめんね、いきなり大声で叫んじゃって)
『いや………妾もすまぬ。雫の事情などちっとも考えておらんかった』
(元凶がいるのだとしたら、それは入山の里の人々だよね)
『そうじゃな』

 心でそんな会話をしながら、私はほむろの指示に従って街道に向かって坂を下りる。急な坂ではないから、転ぶことは多分ないだろう。

『街道に降り立ったぞ』

 ほむろが声をかけてくれて、私は足を止める。

(行き倒れの人はどこにいる?)
『今の雫から見て、少し左の5歩先じゃ』
(1…2…3…4…5。この辺?)
『うむ。細かい場所は、風読みの術で探しておくれ』
(りょーかい)

 この風読みの術というのは、自分の周辺の空気の流れを読み取る術だ。自分の周りの空気がどう動いているのか、どこに固まってるのか、そういうことを知ることができる。

 例えば自分のすぐ横で空気の流れが一瞬早くなったら、それは誰かとすれ違ったことを意味する。

 人とすれ違った時、一瞬だけ風が起こるでしょう?

 また、空気が一箇所だけを避けて流れているのなら、その場所に人がいるのだってこともわかる。

 だって、空気は人の体を通り越せないでしょ?

 そうやって術を発動した結果、ちょうど自分の正面に、空気が避けて通っている場所を発見した。

(いた!見つけた。ほむろ、起こしてくれる?倒れたままじゃ水も飲めないだろうし)

 道中でちゃっかり湧き水を汲んでいたりもするのです。ちゃんと水筒に入ってますよ。

 ちなみに私が起こさない理由は、私に視覚と触覚がないからです。揺すぶって起こすのに、その起こす対象に触れているのかどうかもわからないのでは、そもそも起こすことなどできない。

『わかったのじゃ』

 この人が目を覚ましたら妖術の使用は控えるべきなので、今のうちに移転の術を使って、水と生でも食べられる山菜を指定して手元に揃えておく。

 なお、移転してきた山菜がどんなものかは私にもわかりません。私、薬草には詳しいけど、山菜にはあまり通じてないんですよ。

 初秋の山菜って、何があるんだ?

『お!目を覚ましたのじゃ!』

 ほむろの声が聞こえて、私は慌てて意識をこっちに引き戻す。

 人への思いやりや優しさは失っているが、喜怒哀楽といった普通の感情は忘れていないので、心配そうな顔を作ることはできる。

 人を心配する時にいちいち演技をしないといけないとか、本当に九尾の狐の能力はとんでもない置き土産を残して行ったもんだ。




 やっぱりどう頑張っても九尾の力は6割が迷惑だ。(残り4割は妖術による恩恵)
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