幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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文久3年

勤務先、ゲットだぜ!(肆)

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 康順先生に言われたとおり、私は二階の自室に戻って行った。

 だって一階にいても、目が見えない上に露骨な妖術を使えない私は大したことも手伝えないだろうし。

 今、康順先生と勝手場で詳しく話を聞きに行っていたほむろが帰ってきた。

『戻ったぞ!』
(あ、おかえり。何か聞けた?)
『もちろんじゃ。康順は、働く以上、雫には給料を渡すと言っておる。額まではわからぬが、少なくはなさそうじゃ』
(そりゃあいいことを聞けたわ。ますます頑張ろう!というわけでまずはほむろの背中の風呂敷。その中身を整理しないと)

 昨日風呂敷はおろしたが、中身の整理がまだなのだ。

『そうじゃな。それは確かここに……お、あったのじゃ。目の前に置いておくぞ』
(ありがとう。じゃあまず食用と薬用に分けよう。人が来そうになったら教えて)
『わかった』

 ほむろの返事を聞いて、私は分類の術を発動する。この術は、文字通り複数の種類のものが混ざっている時、それを種類ごとに分ける術だ。

 目の前にあるのだろう草やきのこを対象とし、"食用"と"薬用"の二つの種類で分類するように念じる。

『分けられたようだぞ』

 ほむろの指摘が入ったところで、私も術を解除する。

『おや?ちょうど良いな。康順が来たぞ』

 今度は風読みの術を発動し、康順先生を探す。

 五感がないだけでもいろいろ困るのに、その五感を補うためにいろんな術をとっかえとっかえ発動しないといけないのもまた忙しい。

『薬草と薬包紙は十分な量を持ってきた。薬研も使いやすいのを用意した。作って欲しい薬の製法書を置いていく。それから作って欲しい数量も別紙に書いておいた。君はそこの黒猫さんと、何やら意思の疎通ができているみたいだから目が見えていなくても大丈夫だと思うが、ダメだったらすぐに言って欲しい……と言っておる』

 ほむろの通訳を聞き、私は康順先生に頷く。私が薬の製法書を読むことはできないけど、そこんとこはほむろに読み上げてもらおう。

 しかし康順先生も聡いですね。さすがお医者さん。私とほむろの間でコミュニケーションが成立していることを察しているのね。

 あ、それともほむろが教えた?

 まあ、どっちでもいいか。

『別紙に書いてある数の薬を調合したら、今日の分はひとまずおしまい。残った薬草は引き続き薬作りに使ってもいいし、君がもらっても構わない。薬は夕方に受け取りにくる。だ、そうじゃ』
(了解です!)
『妾に言ってどうするのじゃ。康順に言え、康順に……て無理じゃったのう』
(大丈夫!先生にもちゃんと頷き返したよ!)

 康順先生も出て行き、部屋には私とほむろしかいなくなった。

 さぁて!妖術使い放題、働き放題ですよ!

(ほむろ!まずは作って欲しい薬の種類と数量を教えて!)
『わかっておる。まったく人使いが荒いのう』
(何言ってるの?人使いじゃないよ、狐使いだよ。あれ?でも今は猫だから猫使いか)
『やかましい!』
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