幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

文字の大きさ
43 / 119
元治元年

なんか不穏分子がうろつき始めた(参)

しおりを挟む
 朝食の時に、入山の里の追っ手と思われる人間たちがこの付近をうろついているとの知らせを受け、私たちはその不審者の正体を確かめることになった。

 部屋に戻ったあと、私たちは早速行動を開始する。ほむろが窓辺に張り付き、道ゆく人々をチェックするのだ。

私は五感が皆無だからまるっきり戦力外ですが。

 昼間は何も起こらなかった。おそらく多くの患者が診療所を訪れていたから、気づかれることを警戒したのか、あるいは街の人には疑われたくないのだろう。

 今日はお涼さんも来ていない。多分先生の方から来るのを控えさせたんだろう。

 もしお涼さんがここに来れば、この家を監視しているのだろう何者かに変な勘ぐりをされるかもしれないからだ。

(不審人物もバカじゃないのね。ちゃんと状況をよく見てるわ)
『そうじゃのう。入山の里の者は皆、地頭が良いのじゃ。こちらとしてはもう少しバカでいてくれた方がよかったのじゃが』
(まだ里人だって決まったわけじゃないけど)
『お主、入山の里の者以外に犯人がいると思っておるのか?』
(思ってない)

 私も今日は薬の調合を行わず、何個かの妖術を使って荷物を風呂敷にまとめていた。

 人間には妖力を感じることができないから、妖術を使ってもバレる心配がないのが救いだ。

 移転の術を使って必要なものを風呂敷の上に置き、操りの術を使って風呂敷を結ぶ。

 幸い調薬用の材料や道具以外はたいした荷物もないから準備も早いし、場所もかさばらない。

 持って行くものは、薬草、手製の薬、給金、着替え。大きめの風呂敷に入れれば全て収まったらしい。ほむろが確認してくれたから問題ないだろう。

 食料の類は、私は九尾の狐の能力で"飲まず食わずでも倒れないし、喉も乾かない、腹も空かない"という体質を持っているから必要もない。




 午後も結局何も起こらず、診療所は営業終了時間を迎えた。

『っ!!』
(ほむろ、来たの?)
『うむ。あからさまに怪しい布をかぶった人間が4人、診療所の周りをうろついておる』
(私は窓辺に行かない方がいいよね?)
『そうじゃな。バレてしまったは仕方ないからな』
(そうね。じゃあ部屋の隅でおとなしくしてるわ)

 ほむろが窓辺に向かう気配を感じた。私は窓から一番距離があると思われる場所でおとなしく座っている。

(彼ら、里の人?)
『間違いないじゃろうな。奴らがかぶっている布に刺繍されている紋章、あれは入山の里でしか存在せぬものだ。奴らは正真正銘、妾たちを追いかけてきた、入山の里の追っ手じゃ』
(……………)
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

嵌められたオッサン冒険者、Sランクモンスター(幼体)に懐かれたので、その力で復讐しようと思います

ゆさま
ファンタジー
ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。 懐いたモンスターが成長し、美女に擬態できるようになって迫ってきます。どうするオッサン!?

大和型戦艦、異世界に転移する。

焼飯学生
ファンタジー
第二次世界大戦が起きなかった世界。大日本帝国は仮想敵国を定め、軍事力を中心に強化を行っていた。ある日、大日本帝国海軍は、大和型戦艦四隻による大規模な演習と言う名目で、太平洋沖合にて、演習を行うことに決定。大和、武蔵、信濃、紀伊の四隻は、横須賀海軍基地で補給したのち出港。しかし、移動の途中で濃霧が発生し、レーダーやソナーが使えなくなり、更に信濃と紀伊とは通信が途絶してしまう。孤立した大和と武蔵は濃霧を突き進み、太平洋にはないはずの、未知の島に辿り着いた。 ※ この作品は私が書きたいと思い、書き進めている作品です。文章がおかしかったり、不明瞭な点、あるいは不快な思いをさせてしまう可能性がございます。できる限りそのような事態が起こらないよう気をつけていますが、何卒ご了承賜りますよう、お願い申し上げます。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

処理中です...