幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治元年

それぞれの困惑(伍)

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「山崎、とりあえず何があったのかを話せ」

 土方は山崎にそう言った。

 その会話を片耳で聞きつつ、原田はずっと山崎の斜め後ろで正座している彼女を見ていた。

 男の格好をしているが、よくよく見れば女の子の体つきだ。うまく化けているから最初はわからなかった。

 美しい少女だった。色が白く、顔も整っていて、高く結われた黒い髪は部屋の明かりを吸って柔らかい光を放っている。

 深い黒の瞳は凛とした色を帯びていて、男装していても全く違和感がない。きっと女の姿に戻ったら絶世の美女になるだろう。

 彼女との面識はないが、先ほど辻斬りの被害に遭って、息絶えたはずの少女だと、すぐに理解した。

 山崎が連れてきた、血まみれの浅葱色の服の人物は、あの子しか思い浮かばないから。

 この夜、総司の一番組と夜の巡察に出かけた際、路地から飛び出た4人組の浪士が、浅葱色の着物を着た少年を斬り伏せるところを目撃した。

 辻斬り犯として捕らえるため、斬り合いになった。結果3人を捕縛したが、1人は総司が誤って斬り捨ててしまった。

 それが新選組の仕業だと悟られないために、後始末を山崎に託して原田たちは浪士たちを連れて屯所に帰ってきたのだ。

 ちなみにそいつらは今、別室に放り込んで、十番組の連中に見張らせている。

 去り際、原田は確かに総司から彼女の死亡確定を聞いた。新選組で最も生死に敏感な総司が言ったのだ。間違っている可能性は限りなく無い。

 俺たちが帰ったあとに、この少女にいったい何があったんだ?

「はっ。副長は、俺がさっきまで何をしていたのかはご存知ですか?」
「ああ。原田たちから聞いた。総司の失敗の後始末をしてたんだろ?」
「はい。そのあと、自分は現場にとどまって作業を続けていました。細工の方は問題ありません。あの……この者についての報告は聞きました?」
「いや?そいつが、どうかしたのか?」
「それが…………」

 山崎が言いよどむ。原田だけでなく、広間にいる全ての人間が、その先の答えを待っているのだろう。

「あれ?どうしたんです?みんな揃ってそんな変な顔をして」

 しかし山崎が口を開こうとしたちょうどその時、厠に行っていたらしい総司が帰ってきた。

 広間に流れている微妙な空気に、総司は一瞬不思議そうな顔をした。

 しかし山崎の後ろに座る、血まみれの服を着た彼女を見た瞬間、ガラリと表情が変えた。

 その目がスッと細められ、突き刺さるような氷の視線が彼女に容赦なく注がれる。

「なんで、君がここにいるの?」
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