幕末☆妖狐戦争 ~九尾の能力がはた迷惑な件について~

カホ

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元治元年

告白(参)

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 ほむろの推測通り、私と叔父の仲は最悪である。

 もともと両親と叔父(父方の弟)がまず険悪で、両親が事故で他界したあと、子である私が生き残っていたせいで叔父は遺産を受け取れず、それを根に持っていたのだ。

 だから私も高校に上がったあと、さっさと一人暮らしを始めた。両親の遺産があったから死ぬほどつらい一人暮らしだったわけでもなかった。まあ、楽でもなかったけど。

『どこの世にも金の亡者っているのだな』
(そうね)
『戻りたいと思うか?』
(どうだろう?向こうの世界の心残りって、置いてきた友人ぐらいだからね。どっちでもいいかな?私が死亡扱いになったら、両親の遺産が叔父の手に渡るのは癪だけど、その程度かな?私は遺産に執着してるわけじゃないし)
『そうか………』
(なんにしろ、まずは真人間に戻らないと)

 向こうの世界に戻るにしろ戻らないにしろ、まずは普通の人間に戻らないと生活にも困る。

『お主は、この時代の結末を知っておるのか?』
(知ってるよ)

 知ってるから、複雑なんだ。

 私はマニアってほどじゃないが新選組に詳しいし、新選組も好きだ。だから幕末に来て、実際彼らに会えたのは嬉しい。だけど、彼らが散りゆく運命だって知ってるから、会えてひどく悲しくもある。

(嬉しいのに悲しいとか、思いっきり矛盾してるよね)
『………だからお主、複雑な顔をしていたのだな。さっき広間ではやたら騒がしかったが』
(………あはは。わざとだって、気づいてたのね)

 さっき大広間にいたとき、私はテンションマックスでほむろを巻き込み。新選組幹部にあだ名をつけまくっていた。これからの彼らの人生を思うと、なんだか気持ちが沈んでしまっていたのだ。

『当たり前じゃ。だてにお主と半年も過ごしていたわけではないのじゃぞ』

 ほむろの言い分に、私は小さく笑う。私とほむろも、もう短い付き合いじゃない。

(これからバラバラになって、一人また一人と死んでいく人だって、もうわかってるから、あんな風に一同に集っているのを見ると悲しいんだよね)
『…………妾に予知の能力はない。だからお主の気持ちに完全に同調することはできぬが、結末がわかっておるのにどうしようもできぬもどかしさは、少なからずわかるつもりじゃ』
(………ほむろは私以上に多くの人を見送ってるもんね)

 ほむろの言い分もよくわかる。千年もの時を生きてきた九尾の狐である彼女は、いくつもの乱世を見守って、幾人もの人間の死を見てきたのだから。

(歴史は変えちゃいけないって、誰が言ったんだろうね?)
『さあな。お主は歴史を変えようとしておるのか?』
(わからない。でも、私の知っている歴史があって、今の私がいるのは確か。もしそれを変えてしまったら、今の私はひょっとしたら消えちゃうかもね)
『なっ!』
(ま、本当かどうかなんてわからないけどね)

 私はふすまの方に目をやる。半透明の和紙を通って、外の月光が部屋の中へ潜り込んで、畳の上に曇った青色を落としている。

 ほむろは私をしばらく見ていたが、やがて一つの問いを投げてきた。




『お主は、雫は………彼らを、救いたい?』
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